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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】山田コンサルティンググループは年初来高値更新、17年3月期も増収増益・連続増配予想
- 2016/6/7 08:16
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
山田コンサルティンググループ<4792>(JQS)は経営・財務・M&A・不動産関連のコンサルティング事業を主力としている。そして経営コンサルティング事業では「事業再生」「事業成長」「事業承継」「M&A」コンサルを4本柱とするビジネスモデルを推進している。17年3月期も増収増益予想、そして連続増配予想である。株価は年初来高値を更新して15年7月高値に接近してきた。3%台の予想配当利回りも評価材料であり、上値を試す展開だろう。
■各種コンサルティング事業を展開する純粋持株会社
各種コンサルティング事業を展開するグループの純粋持株会社である。
傘下の事業会社は、山田ビジネスコンサルティングが経営・財務・事業承継・M&A支援などの経営コンサルティング事業、山田FASがM&A・企業再編の財務アドバイザイリー業務や中堅・中小企業対応M&A関連業務などの資本・株式・株主に関するコンサルティング事業、山田不動産コンサルティングが不動産有効活用などの不動産コンサルティング事業、東京ファイナンシャルプランナーズがFP資格取得講座などのFP関連事業、キャピタルソリューションおよび投資事業有限責任組合が投資・ファンド事業(事業承継・再生関連のファンド)を展開している。
■中期的にROE20%以上を目指す
中期経営目標としてROE20%以上を掲げ、重点戦略としては大手金融機関・証券会社・地方金融機関・提携会計事務所との連携強化、中堅・中小企業対応M&A関連分野の拡大、中国現地法人およびシンガポール支店を拠点とした中国・アジア展開の強化などを推進している。投資・ファンド事業では、事業承継問題を抱えている優良な中堅・中小企業をターゲットとして、投資リスクを最小限に抑えながら投資案件を発掘している。
またコンサルティングニーズが「事業再生」だけでなく「事業成長」も顕在化しているため、こうしたニーズに対応すべく、経営コンサルティング事業では「事業再生コンサル」「事業成長コンサル」「事業承継コンサル」「M&Aコンサル」の4本柱とするビジネスモデルを推進している。そして事業再生や事業承継を切り口としてM&Aコンサルを拡大している。
■日本企業の海外展開支援を強化
16年4月には連結子会社の山田ビジネスコンサルティングが、シンガポールのリサーチファームであるSPIRE Research and Consulting(SPIRE)の株式80%を取得して子会社化した。
SPIRE社は2000年にシンガポールで創業し、現在はシンガポール・インドネシア・マレーシア・インド・中国・ベトナム・韓国に事務所を構え、主に日本・アメリカ・欧州・アジアの多国籍企業を顧客として、新興国地域への事業展開のための市場調査を主要サービスとしている。SPIRE社を子会社化することで、多様化する日本企業の海外進出・既存海外事業に関するコンサルティングニーズに一層充実した体制で対応する。
■案件によって変動しやすい収益構造
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)20億86百万円、第2四半期(7月~9月)20億59百万円、第3四半期(10月~12月)18億25百万円、第4四半期(1月~3月)25億11百万円、営業利益は第1四半期5億33百万円、第2四半期4億28百万円、第3四半期2億48百万円、第4四半期8億円だった。
好採算案件や大型案件の有無で四半期利益が変動しやすい収益構造である。15年3月期のM&A関連売上は、経営コンサルタント事業で28件・10億22百万円(14年3月期は17件・5億円)、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業で15件・5億53百万円(同8件・1億67百万円)だった。件数は増加基調で大型案件も寄与した。また15年3月期のROEは17.8%で14年3月期比6.4ポイント低下、自己資本比率は81.9%で同5.2ポイント低下した。
配当性向は34.8%だった。利益配分については、グループ全体の利益水準、財政状態および配当性向等を総合的に勘案しながら「適正かつ安定的な配当」を続けていくことを基本方針とし、具体的指標としては配当性向を50%に近づけるべく努めるとしている。
■16年3月期は増収・営業増益で増配
前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比7.6%増の91億30百万円、営業利益が同6.2%増の21億34百万円、経常利益が同6.7%減の20億59百万円、純利益が同5.8%減の13億02百万円だった。営業外での為替差損益悪化が影響して経常利益と純利益は減益だったが、各事業が順調に推移して増収、業容拡大に向けた人件費の増加などを吸収して営業利益は増益だった。
売上総利益は同7.5%増加したが、売上総利益率は89.3%で同0.1ポイント低下した。販管費は同7.9%増加し、販管費比率は65.9%で同0.2ポイント上昇した。営業外では投資有価証券売却益12百万円を計上したが、為替差損益が悪化(前々期は差益1億58百万円計上、前期は差損1億34百万円計上)した。また投資事業組合運用損が増加(前々期9百万円計上、前期13百万円計上)した。特別損失では前々期計上の減損損失31百万円が一巡したが、事務所移転費用13百万円および和解金13百万円を計上した。
またROEは15.4%で同2.4ポイント低下、自己資本比率は84.2%で同2.3ポイント上昇した。配当は同15円増配の年間115円(第2四半期末55円、期末60円)とした。配当性向は42.2%だった。
セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、経営コンサルタント事業は売上高が同7.7%増の63億81百万円で営業利益が同9.5%増の13億68百万円、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業は売上高が同14.9%増の13億36百万円で営業利益が同16.7%増の3億92百万円、不動産コンサルティング事業は売上高が同11.4%増の7億82百万円で営業利益が同11.5%増の2億38百万円、FP関連事業は売上高が同13.5%増の7億28百万円で営業利益が同30.7%増の96百万円、投資・ファンド事業は売上高が同76.6%減の45百万円で営業利益が同68.4%減の42百万円だった。
経営コンサルタント事業は、大型事業再生案件が減少したが、事業成長、事業承継、M&Aが順調に増加した。資本・株式・株主に関するコンサルティング事業は、バリュエーション業務、ファイナンシャルアドバイザー業務などが順調だった。M&A関連は前々期のような大型案件がなかったが、件数・金額とも順調に増加した。不動産コンサルティング事業は、不動産売買仲介等の案件が順調だった。FP関連事業は、金融機関と提携して行っている確定拠出年金(DC)導入企業に対するDC関連研修の実施回数が増加した。相続手続に関するサポート業務「相続安心サポート」に関しては、サービス認知活動に注力している。投資ファンド事業は投資株式の売却がなかったが、投資株式からの配当金収入を計上した。
M&A関連売上は、経営コンサルタント事業で32件・13億08百万円(前々期は28件・10億22百万円)、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業で17件・6億48百万円(前々期は15件・5億53百万円)だった。不動産コンサルティング事業の期末提携数は330会計事務所(前々期末は275会計事務所)となった。投資・ファンド事業では新規投資1件・73百万円を実行し、期末投資残高は82百万円となった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)18億44百万円、第2四半期(7月~9月)22億25百万円、第3四半期(10月~12月)19億80百万円、第4四半期(1月~3月)30億81百万円、営業利益は第1四半期1億80百万円、第2四半期5億57百万円、第3四半期3億03百万円、第4四半期10億94百万円だった。
■17年3月期も増収増益・連続増配予想
今期(17年3月期)連結業績予想(4月27日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比15.0%増の105億円、営業利益が同7.7%増の23億円、経常利益が同12.6%増の23億20百万円、純利益が同15.1%増の15億円としている。配当予想は同20円増配の年間135円(第2四半期末65円、期末70円)で予想配当性向は42.8%となる。
経営コンサルタント事業は事業再生が減少傾向だが、事業成長、事業承継、M&Aが拡大基調で増収増益見込みである。なお16年4月子会社化したSPIRE(スパイア)社については、営業利益がのれん償却額とほぼ同額になる見込みのため、営業利益に対する影響はないとしている。資本・株式・株主に関するコンサルティング事業は、M&A関連を中心に事業規模を拡大して増収増益見込みである。不動産コンサルティング事業は、人材確保に係るコストが増加するが、提携会計事務所からの案件受注が好調に推移して安定的な利益確保を目指す。FP関連事業は、法人マーケットでの拡販で増収増益を目指す。投資・ファンド事業は投資株式(優先株式)の償還益計上で若干の営業利益を見込んでいる。
■自己株式取得を実施
16年4月27日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限3万3000株、取得価額総額の上限9200万円、取得期間16年5月2日~16年9月23日)については、16年5月31日時点の累計で、取得株式総数1万1400株、取得価額総額4354万2000円となった。
■株価は年初来高値更新して15年7月高値に接近
株価の動きを見ると、5月30日に4000円台に乗せ、1月の3960円を突破して年初来高値を更新した。さらに6月6日には4160円まで上伸して15年7月高値4540円に接近してきた。好業績を評価する動きだろう。
6月6日の終値4145円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS315円17銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間135円で算出)は3.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1844円73銭で算出)は2.2倍近辺である。時価総額は約206億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスが接近している。強基調への転換を確認して先高感を強める形だ。3%台の予想配当利回りも評価材料であり、15年7月高値4540円を試す展開だろう。