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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テクマトリックスは上場来高値更新の展開、17年3月期も2桁増益で連続増配予想
- 2016/6/8 07:37
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
テクマトリックス<3762>(東1)はシステム受託開発やセキュリティ関連製品販売などの情報サービス事業を展開し、ストック型ビジネスやクラウドサービスを強化している。サイバーセキュリティ関連などの好調で17年3月期も2桁増益予想、そして連続増配予想である。株価は上場来高値更新の展開だ。目先的な過熱感を冷ますための自律調整を交えながら上値を試す流れに変化はないだろう。
■システム受託開発やセキュリティ関連製品販売などを展開
ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業、および医療・CRM・EC・金融を重点分野としてシステム受託開発やクラウドサービスを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。
16年3月期のセグメント別売上構成比は情報基盤事業66.2%、アプリケーション・サービス事業33.8%、営業利益構成比は情報基盤事業81.9%、アプリケーション・サービス事業18.1%である。
■ストック型ビジネスやクラウドサービスを拡大
中期成長に向けた重点戦略として、ストック型ビジネスの保守・運用・監視サービス関連の戦略的拡大、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、ネットワーク・セキュリティ関連商材およびサービスの充実などを推進している。
クラウドサービスでは、コンタクトセンター向けCRMシステム「Fast Cloud」や医療情報クラウドサービス「NOBORI」など、各分野で独自クラウドサービスを開発・展開している。15年10月には、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が提供する「AWSパートナーネットワーク(APN)」に参加するため「APNスタンダードコンサルティングパートナー」の認定を取得した。
16年4月には、医療情報クラウドサービス「NOBORI」をプラットフォームとした、新たな医療クラウドサービス「NOBORI-PAL」の提供開始を発表した。サービス拡充を進めて初年度延べ80施設での利用を目指すとしている。
■M&A・アライアンスを積極活用
M&A・アライアンスを積極活用するとともに、グループ再編も推進している。14年2月には子会社の沖縄クロス・ヘッドが台湾のデータセンター事業者eASPNetと事業協力についての覚書を締結、14年3月にはクロス・ヘッドを完全子会社化した。
14年7月には日本事務器(NJC)と医療情報クラウドサービス「NOBORI」に関する販売代理店契約を締結、14年8月には沖縄クロス・ヘッドが日本HPと業務提携した。14年10月にはクロス・ヘッドが仮想化技術の米Pica8(ピカエイト)社に出資、ソフトバンクテレコムなどと3社共同でクラウド型医療情報サービス「地域健康・医療情報プラットフォームサービス(HeLIP)」の提供を開始した。14年12月にはクロス・ヘッドがエヌ・シー・エル・コミュニケーションの株式を追加取得して完全子会社化し、15年4月合併した。
15年3月にはApple関連技術の研修サービスを提供している子会社カサレアルが、JetBrains社(チェコ)とトレーニングパートナー契約を締結し、サムライズム(東京都)とJetBrains社製品を利用した研修に関する業務提携を開始した。さらにスリーゼットに対して、医療情報クラウドサービス「NOBORI」を、クリニックを対象としてOEM提供する契約を締結した。
15年5月には医療サービス事業に特化したベンチャー企業である中国の北京ヘルスバンク・テクノロジー有限公司と合弁契約を締結し、15年8月に合弁会社(北京ヘルステック医療情報技術有限公司、当社出資比率40%)を設立した。当社子会社の合同会社医知悟が開発した遠隔医療ソフトウェアのライセンスを供与して、中国において遠隔医療事業を展開する。
15年6月にはクロス・ヘッドがクライアント仮想化ソフトウェア「OVD」の開発元であるカナダのInuvika(イヌビカ)社に出資した。クロス・ヘッドは「OVD」の国内卸・日本語環境対応開発支援を行っており、今後3年間で2万ライセンスの販売を目標としている。
15年9月には、米Parasoft社が開発したソフトウェア開発・テスト管理プラットフォーム「Parasoft DTP」の販売を開始し、沖縄クロス・ヘッドがスプラッシュトップ(東京都)および日本ヒューレット・パッカードと共同でリモートデスクトップサービス「Reemo(リーモ)」の提供を開始した。さらにオーストリアのRanorex社が開発したUI(ユーザーインターフェース)テスト自動化ツール「Ranorex」の国内総販売代理店権を獲得した。
15年10月には、トランスコスモス(タイ)とコンタクトセンターCRMシステム新製品「Fastシリーズ」のタイにおける販売代理店契約を締結した。国内トップクラスの導入実績を誇る「Fastシリーズ」のASEAN地区を中心とした海外展開を強化する。
16年3月には、カナダFinancialCAD社が開発した金融商品評価・分析ツール「FINCAD Analytics Suite」の国内総販売代理店として、最新版である「ver.2016」の国内販売を開始した。
16年4月には、モール型ECサイトに出店するネットショップの受注処理・在庫管理業務を効率化するSaaS業務支援システム「楽楽バックオフィス」と、ジャックス・ペイメント・ソリューションズの後払い決済サービス「アトディーネ」の連携を開始した。また国内トップクラスの導入実績を持つコンタクトセンター向けCRM製品「Fastシリーズ」について、日本ユニシスとの販売代理店契約締結を発表した。
■第4四半期の構成比が高く、ストック型収益の積み上げも推進
なお医療分野では、オンプレミス型(ユーザーがハードウェア、ソフトウェア、データを自分自身で保有・管理)システム提供から、クラウド型(ユーザーがインターネット経由で利用)サービス提供へビジネスモデル変更を推進しているため、14年3月期から医療情報クラウドサービスの売上と利益をサービス期間に応じて按分計上する方法に変更した。このため今後複数年に亘って売上と利益にマイナス影響となるが他事業の成長でカバーする。
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)39億49百万円、第2四半期(7月~9月)46億55百万円、第3四半期(10月~12月)43億75百万円、第4四半期(1月~3月)54億38百万円、営業利益は第1四半期63百万円、第2四半期2億87百万円、第3四半期1億92百万円、第4四半期5億88百万円だった。
情報システム関連で第4四半期の構成比が高い収益構造である。15年3月期のストック型売上比率(単体ベース)は、情報基盤事業で14年3月期比3.5ポイント低下して40.2%、アプリケーション・サービス事業で同3.0ポイント上昇して41.8%となった。売上総利益率は34.3%で同0.3ポイント低下、販管費比率は28.2%で同横ばい、ROEは9.4%で同4.2ポイント低下、自己資本比率は45.3%で同1.5ポイント低下した。
配当性向は31.1%だった。利益配分については株主への利益還元と内部留保充実のバランスを総合的に勘案して決定し、期末業績における連結配当性向20%以上を基本方針としている。
■16年3月期は大幅増収増益で増配
前期(16年3月期)連結業績は売上高が前々期(15年3月期)比13.6%増の209億20百万円、営業利益が同22.2%増の13億81百万円、経常利益が同25.4%増の14億20百万円、純利益が同41.9%増の8億29百万円だった。
情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業とも好調に推移して、売上高は過去最高を更新した。増収効果、クラウドビジネスの伸長、医療分野の収益改善が寄与して各利益とも大幅増益だった。売上総利益は同8.5%増加したが、売上総利益率は32.8%で同1.5ポイント低下した。販管費は同5.6%増加したが、販管費比率は26.2%で同2.0ポイント低下した。
営業外収益では為替差益が増加(前々期1百万円計上、前期35百万円計上)した。営業外費用では前々期計上の投資事業組合運用損16百万円が一巡したが、支払利息が増加(前々期6百万円計上、前期18百万円計上)し、自己株式取得費用5百万円を計上した。特別損失では投資有価証券評価損22百万円や事務所移転費用29百万円などを計上したが、減損損失が減少(前々期1億18百万円計上、前期10百万円計上)した。
またROEは16.0%で同6.6ポイント上昇、自己資本比率は25.1%で同20.2ポイント低下した。配当は同5円増配の年間20円(期末一括)で、配当性向は24.2%だった。
セグメント別に見ると、情報基盤事業は売上高が同15.0%増の138億52百万円、営業利益が同9.9%増の11億31百万円だった。入札案件における価格競争や円安に伴う輸入価格上昇で利益率は低下したが、セキュリティ関連が牽引して売上高は過去最高となった。負荷分散装置の販売はやや頭打ちだったが、サイバー攻撃の脅威の高まりを背景に次世代ファイアウォールの販売が大幅に増加した。マイナンバー導入を契機に、運用・監視サービスも含めてセキュリティ関連の需要が旺盛である。なお子会社クロス・ヘッドは、引き合いが堅調だが、技術者確保難で営業的な機会損失が一部発生しているようだ。また沖縄クロス・ヘッドは、セキュリティ関連が好調だが、沖縄県内のクラウド関連が停滞したようだ。
アプリケーション・サービス事業は、売上高が同10.9%増の70億68百万円、営業利益が同2.5倍の2億50百万円だった。インターネットサービス分野はEC関連、スマホ関連、ウェアラブル端末関連など既存顧客を中心に受託開発案件の受注が堅調だった。子会社カサレアルも既存顧客からの受注が堅調だった。ソフトウェア品質保証分野は製造業や金融業向けテストツールの受注が好調だった。医療分野は医療情報クラウドサービス「NOBORI」が好調のようだ。会計処理方法変更に伴う経過処理で売上高が減少傾向だったが、契約施設数の増加に伴って売上高が増加傾向に転じ、採算面でも計画を上回る改善を達成した。合同会社医知悟は遠隔読影需要の高まりを背景に、契約施設数、読影依頼件数、従量課金金額が順調に増加した。CRM分野は次世代製品の販売開始や、大手システム・インテグレータとの業務提携効果でクラウド関連が好調に推移し、大型案件の受注にも成功した。
なお受注高は情報基盤事業が同16.8%増の151億57百万円、アプリケーション・サービス事業が同6.7%増の80億14百万円、合計が同13.1%増の231億71百万円、また受注残高は情報基盤事業が同28.6%増の58億63百万円、アプリケーション・サービス事業が同21.9%増の52億73百万円、合計が同25.3%増の111億36百万円だった。情報基盤事業はセキュリティ関連の受注が好調で、アプリケーション・サービス事業はクラウドへのシフトに伴って受注残高が伸長した。
16年3月期のストック比率(単体ベース)は、情報基盤事業が同2.5ポイント低下して37.7%、アプリケーション・サービス事業が同2.1ポイント上昇して43.9%となった。医療情報クラウドサービス「NOBORI」の16年3月期末導入施設数は約450施設(15年3月期末は約300施設)となった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)48億48百万円、第2四半期(7月~9月)52億90百万円、第3四半期(10月~12月)49億41百万円、第4四半期(1月~3月)58億41百万円、営業利益は第1四半期1億04百万円、第2四半期4億12百万円、第3四半期2億58百万円、第4四半期6億07百万円だった。
■17年3月期も増収・2桁増益、連続増配予想
今期(17年3月期)の連結業績予想(5月9日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比6.6%増の223億円、営業利益が同19.4%増の16億50百万円、経常利益が同16.1%増の16億50百万円、純利益が同24.2%増の10億30百万円としている。配当予想は同5円増配の年間25円(期末一括)で、予想配当性向は24.4%となる。
需要が堅調であり、人件費の増加などを吸収して2桁増益予想である。セグメント別売上高の計画は情報基盤事業が同9.0%増の151億円、アプリケーション・サービス事業が同1.9%増の72億円としている。
情報基盤事業では、サイバー攻撃を防御することができる次世代ネットワーク・セキュリティ関連商材・サービスの拡充を目指す。最先端のネットワーク・セキュリティ関連技術の動向を先取りし、各種自社サービスと組み合わせて競合他社との差別化を推進する。またアプリケーション・サービス事業では、CRM分野・医療分野・インターネットサービス分野におけるクラウドサービス(SaaS)を加速度的に推進する。
■中期的に年率売上高成長率10%目指す
15年5月策定の中期経営計画「TMX3.0」では、経営目標数値として18年3月期の売上高251億円(情報基盤事業170億円、アプリケーション・サービス事業81億円)、営業利益23億50百万円(情報基盤事業16億円、アプリケーション・サービス事業7億50百万円)を掲げている。
さらに中期的には年率売上高成長率10%、M&Aや海外展開を含めて事業規模250億円~300億円、ストック売上(クラウド、保守、運用・監視サービス等)比率50%超を目指し、売上高営業利益率10%へ挑戦する。
従来のIT産業の労働集約的な請負型ビジネスから脱却し、自らITサービスを創造し、ITサービスを提供する「次世代のITサービスクリエーター」そして「次世代のITサービスプラバイダー」への変貌を継続する。重点事業戦略は、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、セキュリティ&セイフティの追求として、コストダウンによる高収益化やパートナーとのアライアンス強化も推進する。
なお株主還元については連結配当性向20%以上を基本方針として、利益水準を踏まえた配当額の引き上げを重視し、株主優待制度の充実も推進する。
■株主優待制度は9月末に実施
株主優待制度については、毎年9月30日現在の500株以上保有株主を対象として実施している。15年9月末の優待内容は、500株以上~1000株未満保有株主に対して1000円相当の商品または寄付から1点、1000株以上保有株主に対して3000円相当の商品または寄付1点を選択する内容だった。
なお15年8月に自己株式取得を実施(取得株式総数347万8000株、買付価格881円、取得価額総額約30億64百万円)した。これによって楽天<4755>の議決権所有割合が31.57%から4.16%に低下し、大株主順位は第1位から第3位に低下した。楽天とは今後も良好な取引関係を維持するとしている。
■株価は上場来高値更新の展開
株価の動きを見ると、上場来高値更新の展開が続き、6月7日には2378円まで上伸した。
6月7日の終値2355円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS102円64銭で算出)は22~23倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS455円08銭で算出)は5.2倍近辺である。なお時価総額は約292億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの上昇トレンドだ。サイバーセキュリティ関連などのテーマ性も注目点となる。目先的な過熱感を冷ますための自律調整を交えながら上値を試す流れに変化はないだろう。