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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】サンコーテクノは指標面に割安感、17年3月期増収増益・連続増配予想で収益改善
- 2016/6/9 08:28
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
サンコーテクノ<3435>(東2)は建設用あと施工アンカーの最大手である。16年3月期は太陽光発電関連の市場縮小などで減収減益だったが、17年3月期は増収増益・連続増配予想である。20年東京五輪や国土強靭化政策などで建設関連の中期的な事業環境は良好であり、収益改善基調が期待される。株価は安値圏でモミ合う展開だが、3%近辺の予想配当利回りや0.6倍近辺の実績PBRなど指標面の割安感も強く、下値固めが完了して反発のタイミングだろう。
■ファスニング事業と機能材事業を展開
16年3月期から組織変更を実施して事業セグメント区分を変更し、ファスニング事業(あと施工アンカーやドリルビットの開発・製造・販売、太陽光関連・土木建築関連の工事管理など)と、機能材事業(電動油圧工具関連、FRPシート関連、車両の表示板などの電子プリント基板関連、各種測定器関連の製造・販売など)を展開している。
16年3月期のセグメント別売上構成比はファスニング事業が75.7%、機能材事業が24.3%である。新製品比率は18.2%(15年3月期比1.2ポイント上昇)だった。
■あと施工アンカーの最大手
ファスニング事業では、あと施工アンカー(コンクリート用特殊ネジ・釘類)やドリルビットの開発・製造・販売、太陽光関連・土木建築関連の工事管理などを展開している。あと施工アンカーの最大手である。
新製品を積極投入し、6月2日には足場つなぎ専用「あしばジョイントアンカー」を新発売した。イメージキャラクターとして「あしたのジョー」を起用した。
あと施工アンカー、アンカー打込み機などは震災復興関連、都市再開発関連、耐震補強関連、老朽化インフラ補修・更新関連、20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設工事の増加が追い風となるため、中期的に事業環境は良好だ。
■センサー事業も強化
センサー事業も強化している。14年11月にドコモ・システムズと業務提携して、15年3月に自動車運送事業法の対象企業に向けたクラウド型点呼サービス「docoですcar Guardian」の提供を開始した。ドコモ・システムズが当社の呼気アルコール測定システムを利用したクラウド型サービスを提供する。
15年2月には「燃料電池式業務用呼気アルコール測定器ST-3000」の発売を発表した。燃料電池センサーの技術を持つタニタ(東京都)と共同開発した新製品で、これまでの接触燃焼式から燃料電池式にすることによりガス選択性の向上と測定時間の短縮を実現する。
■期後半の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)37億61百万円、第2四半期(7月~9月)46億72百万円、第3四半期(10月~12月)46億13百万円、第4四半期(1月~3月)47億89百万円、営業利益は第1四半期2億45百万円、第2四半期4億65百万円、第3四半期3億88百万円、第4四半期4億13百万円だった。
建設関連で期後半の構成比が高い収益構造である。また15年3月期の売上高に対する新製品比率は17.0%で14年3月期比1.0ポイント上昇した。ROEは12.6%で同0.7ポイント上昇、自己資本比率は61.4%で同6.5ポイント上昇した。配当性向は11.0%だった。利益配分については、将来の事業展開・経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続していくことを基本方針としている。
なお5月18日には監査等委員会設置会社への移行を発表した。6月28日開催予定の第52回定時株主総会に付議する。
■16年3月期は減収減益、太陽光発電関連の市場が縮小
前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比6.7%減の166億48百万円、営業利益が同11.4%減の13億38百万円、経常利益が同16.7%減の12億56百万円、純利益が同27.3%減の8億10百万円だった。
主力の金属系・接着系あと施工アンカーの販売が低調だった。公共事業の需要が減少し、さらに太陽光発電関連の市場縮小も影響した。売上総利益は同5.8%減少したが、売上総利益率は31.9%で同0.2ポイント上昇した。販管費は同3.8%減少したが、販管費比率は23.9%で同0.7ポイント上昇した。
営業外では為替差損益が悪化(前々期は差益48百万円計上、前期は差損21百万円計上)し、特別利益では投資有価証券売却益が減少(前々期は20百万円計上、前期は0百万円計上)した。ROEは8.4%で同4.4ポイント低下、自己資本比率は67.2%で同5.8ポイント上昇した。配当は同3円増配の年間18円(期末一括)とした。配当性向は18.1%である。
セグメント別(連結調整前)に見ると、ファスニング事業は売上高が同7.8%減の126億06百万円、営業利益が同10.8%減の17億31百万円だった。公共事業などの需要が減少し、太陽光発電関連の市場縮小の影響を受けて、主力の金属系・接着系あと施工アンカーの販売が低調だった。機能材事業は売上高が同2.9%減の40億41百万円、営業利益が同5.6%減の4億97百万円だった。電子基板関連やアルコール測定器関連は好調だったが、電動油圧工具関連の国内販売やFRPシート関連が減少した。なお新製品比率は18.2%で同1.2ポイント上昇した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)35億46百万円、第2四半期(7月~9月)43億80百万円、第3四半期(10月~12月)43億61百万円、第4四半期(1月~3月)43億61百万円、営業利益は第1四半期1億57百万円、第2四半期3億83百万円、第3四半期3億52百万円、第4四半期4億46百万円だった。
■17年3月期は増収増益・連続増配予想で収益改善基調期待
今期(17年3月期)の連結業績予想(5月13日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比5.1%増の175億円、営業利益が同4.6%増の14億円、経常利益が同5.8%増の13億30百万円、純利益が同8.6%増の8億80百万円としている。配当予想は同2円増配の年間20円(期末一括)で予想配当性向は18.5%となる。
セグメント別(連結調整前)の計画は、ファスニング事業の売上高が同4.7%増の131億93百万円、営業利益が同3.9%増の17億98百万円、機能材事業の売上高が同6.6%増の43億06百万円、営業利益が同7.5%増の5億34百万円としている。
ファスニング事業では、耐震工事やインフラ維持保全工事等の受注(第2四半期~)、20年東京五輪関連需要の本格化(第3四半期~)、東北地域における建築物着工の本格化などを見込んでいる。機能材事業(電動油圧工具)は、国内はファスニング事業を取り巻く業況に連動し、海外販売が好調に推移する見込みだ。
重点施策として、市場創出に向けた開発力(インフラ土木分野での高付加価値製品・新工法開発)と営業力の強化、特殊工法の開発(用途開発)推進、海外展開(東南アジア、特にベトナムでの販売強化に注力し、グループ目標10億円の早期達成目指す)、新事業の推進(テクノテスターグラフ・ポータブル、アルコール測定器ST-3000、環境配慮型FRPシートなど)に取り組む。
景気対策としての公共投資の増加、太陽光発電関連市場縮小の影響一巡などで収益改善基調が期待される。
■中期ビジョンで売上高成長率5%以上を目指す
新中期経営ビジョンでは「独自のファスニング(締結)システムで安全・安心を提供するモノづくり集団の追究」を掲げている。成長企業(優良企業)、ブランド力アップ、業務力アップ、チーム人財力アップを目指す方針だ。経営目標数値には売上高成長率5.0%以上、営業利益率8.0%以上、新製品売上高構成比30%、ROA8.0%以上を掲げている。
中期成長に向けて組織変更を実施した。ファスニング事業以外を一つの事業に集約して営業体制を強化するとともに、事務作業を集約して収益改善を推進する。また一気通貫体制・フレキシブル体制で安定供給・安定品質・市場創出を促進する。
建設現場では現場作業の省力化・機械化ニーズの高まりや非熟練作業者の増加が予想され、現場での使いやすさを高めた施工ツール、あと基礎アンカー、アンカー打込み機、紫外線硬化FRPシートといった製品の採用が一段と増加する。20年東京五輪、都市再開発、国土強靭化政策などで中期的に事業環境は良好だ。新製品や高付加価値製品の拡販も寄与して収益拡大が期待される。
■株主優待制度は3月末に実施
株主優待制度については15年3月期から実施している。毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してQUOカード500円分を贈呈する。
■株価は安値圏だが下値固め完了感、指標面の割安感を見直し
株価の動きを見ると、5月31日に665円まで調整する場面があり、5月以降は安値圏700円割れ水準でモミ合う展開だ。ただし下値固め完了感も強めている。
6月8日の終値675円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS108円13銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は3.0%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1217円68銭で算出)は0.6倍近辺である。なお時価総額は約59億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、700円割れ水準で下値固め完了感を強めている。指標面の割安感も見直して反発のタイミングだろう。