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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ヨコレイは16年9月期第2四半期累計が計画超の大幅増益で通期増額余地
- 2016/6/9 08:18
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ヨコレイ(横浜冷凍)<2874>(東1)は冷蔵倉庫の大手で、食品販売事業も展開している。16年9月期第2四半期累計は計画超の大幅増益だった。通期会社予想を据え置いたが増額余地があるだろう。冷蔵倉庫事業では低温物流サービスの戦略的ネットワーク構築に向けて積極投資を継続し、食品販売事業ではノルウェーのHofseth社との資本業務提携などで業容を拡大している。中期的にも収益拡大基調が期待される。株価は3月高値圏から反落したが、調整が一巡して上値を試す展開だろう。
■冷蔵倉庫事業と食品販売事業を展開
冷蔵倉庫事業、および水産品・畜産品・農産品などの食品販売事業を展開している。15年9月期のセグメント別売上高構成比は冷蔵倉庫事業15.6%、食品販売事業84.4%、その他0.0%だった。営業利益(連結調整前)構成比は冷蔵倉庫事業79.5%、食品販売事業19.9%、その他0.6%だった。
■低温物流サービスの戦略的ネットワークを構築
冷蔵倉庫事業では総合低温物流への取り組みを強化し、戦略的ネットワーク展開に向けて積極投資を進めている。
国内では14年4月北海道小樽市・石狩第2物流センター、14年6月大阪市・夢洲物流センター、14年10月宮崎県都城市・都城第2物流センターが竣工した。海外はASEAN地域への展開で14年2月にタイ・ワンノイ物流センター2号棟が竣工した。
15年4月には、北海道・十勝物流センターおよび十勝第2物流センター隣接地に「十勝第3物流センター(仮称)」を新設(15年5月着工、16年8月竣工予定)すると発表した。隣接する2センターを含む3センター合計の収容能力は6万1千トンを超え、道内最大級の低温物流基地となる。
15年11月には、森永乳業が所有する東京都大田区京浜島の土地と平和島の土地を取得(契約締結は15年9月)したと発表している。また取得する平和島の土地に現在稼働している冷蔵倉庫を所有、運営するパックス冷蔵(森永乳業の100%子会社)の全株式を併せて取得する。京浜島の土地には最新鋭の物流センターを建設する計画だ。一連の総投資額は90億円~100億円の予定としている。
15年12月に新設を発表した幸手物流センター(仮称、埼玉県幸手市)は16年4月に起工式を開催した。17年6月竣工予定としている。圏央道沿線で稼働中の加須物流センター、加須第2物流センター、鶴ヶ島物流センター、伊勢原物流センターと併せると収容能力は11万トンを超える。
16年3月には冷蔵倉庫建設用地として、福岡市アイランドシティ港湾関連用地4工区E区画の取得を発表した。引渡日は18年3月である。博多港に冷蔵倉庫を建設することにより、九州地区の低温物流ニーズに応える。
また6月1日には北海道河西郡芽室町の芽室東工業団地に「ヨコレイ十勝ソーティングスポット(仮称)」を新設することとし、現地にて起工式を執り行ったと発表している。16年9月竣工予定である。同地域では16年8月に十勝第3物流センター(仮称)も竣工稼働を予定しており、日本有数の農産地帯である十勝地方で生産される農産物を対象に、集荷・選別・保管・配送等の一貫したコールドチェーン体制を確立する。
海外では15年8月、タイ・バンパコン物流センター敷地内にバンパコン第2物流センターが竣工した。同センターの稼働により、タイヨコレイ全体の保管収容能力は約9万6000トンとなり、タイ国内トップシェアがさらに拡大した。
■食品販売事業ではノルウェーの大手水産加工会社と包括的業務提携
食品販売事業ではノルウェーの大手水産加工会社ホフセスインターナショナル(Hofseth International=HI)と、資本参加を含めた包括的業務提携を締結(調印式15年8月)した。
業務提携によって、HI社が生産するノルウェー産アトランティックサーモン加工品の北米・欧州の大手量販店向け輸出販売を開始する。日本国内向けビジネスでは鮭ハラス製品の独占販売権を取得した。またHI社との共同出資でHFSアライアンス社を設立し、サーモンオイルを成分としたサプリメントの中国向けネット通販を開始する。
16年3月には、100%子会社で水産品の輸出入および卸売を展開しているアライアンスシーフーズが、HI社の100%子会社でノルウェーに水産加工場3工場を保有してアトランティックサーモン等の加工製造を行っているSyyde社の全株式を取得した。
■15年9月期は償却負担
15年9月期連結業績は、冷蔵倉庫事業における設備増強効果などで14年9月期比9.3%増収だが、減価償却費増加などで同5.6%営業減益、同1.5%経常減益だった。純利益は減損損失が一巡して同37.1%増益だった。売上総利益率は7.4%で同0.7ポイント低下、販管費比率は4.9%で同0.3ポイント低下した。減価償却費は44億65百万円で同5億83百万円増加した。ROEは4.2%で同1.0ポイント上昇、自己資本比率は51.6%で同0.1ポイント上昇した。配当性向は41.1%だった。
セグメント別に見ると、冷蔵倉庫事業は売上高が同8.3%増の241億39百万円、営業利益(連結調整前)が同0.9%減の47億48百万円で、食品販売事業は売上高が同9.4%増の1305億95百万円、営業利益が同7.5%減の11億89百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)399億38百万円、第2四半期(1月~3月)350億45百万円、第3四半期(4月~6月)395億69百万円、第4四半期(7月~9月)402億15百万円、営業利益は第1四半期12億95百万円、第2四半期5億28百万円、第3四半期12億28百万円、第4四半期8億23百万円だった。
またセグメント別営業利益(連結調整前)の四半期別推移を見ると、冷蔵倉庫事業は第1四半期14億69百万円、第2四半期10億70百万円、第3四半期12億04百万円、第4四半期10億05百万円、食品販売事業は第1四半期3億30百万円、第2四半期67百万円の赤字、第3四半期5億22百万円、第4四半期4億04百万円だった。食品販売事業の営業損益は改善基調のようだ。
■16年9月期第2四半期累計は計画超の大幅増益
今期(16年9月期)第2四半期累計(10月~3月)連結業績は、売上高が前年同期比0.8%増の755億72百万円、営業利益が同56.5%増の28億53百万円、経常利益が同66.0%増の30億82百万円、純利益が同75.8%増の19億84百万円だった。期初計画に対して売上高は26億88百万円下回ったが、営業利益は3億73百万円、経常利益は5億72百万円、純利益は4億24百万円上回り、計画超の大幅増益だった。
冷蔵倉庫事業は新物流センターのフル稼働も寄与して好調に推移した。食品販売事業では円高によって輸入商材の収益環境が好転したことも寄与した。売上総利益は同15.4%増加し、売上総利益率は8.6%で同1.0ポイント上昇した。販管費は同4.2%減少し、販管費比率は4.9%で同0.2ポイント低下した。営業外収益では前期計上の受取奨励金31百万円が一巡したが、受取和解金85百万円、補助金収入87百万円を計上した。
セグメント別の動向を見ると、冷蔵倉庫事業は売上高が同6.0%増の126億63百万円、営業利益(連結調整前)が同28.5%増の32億63百万円だった。荷動きが堅調だったことに加えて、14年9月期から順次稼働した4つの物流センターのフル稼働が寄与した。入庫取扱量は同6.4%増加、出庫取扱量は同6.8%増増加、平均保管在庫量は同10.2%増加し、保管料収入が同7.5%増収、荷役料収入が同5.0%増収、運送収入が同5.0%増収となった。利益面では物流センター立ち上げに伴う消耗備品費が減少(1億53百万円減少)し、設備投資がピークアウトして減価償却費が減少(1億19百万円減少)したことも寄与した。
食品販売事業は、売上高が同0.2%減の628億79百万円と減収だが、営業利益が同2.6倍の6億78百万円だった。円高によって輸入商材の収益環境が好転したことも寄与した。水産品は増収増益、畜産品は減収減益、農産品は増収増益だった。水産品では包括的業務提携したノルウェーのHI社との間のアトランティックサーモン事業が順調に推移した。ホタテは天候不良の影響を受けたが、エビは回転率重視に徹底して利益率が改善した。畜産品はチキンの相場下落が影響した。農産品は主力商材が好調だった。
その他は売上高が同84.9%増の29百万円で、営業利益が同13.3%減の16百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)420億35百万円、第2四半期(1月~3月)335億37百万円、営業利益は第1四半期18億20百万円、第2四半期10億33百万円だった。
■16年9月期通期も大幅増益予想で増額余地
今期(16年9月期)通期の連結業績予想については前回予想(11月13日公表)を据え置いて、売上高が前期(15年9月期)比3.4%増の1600億円、営業利益が同29.1%増の50億円、経常利益が同23.8%増の50億円、純利益が同23.1%増の31億円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で、予想配当性向は33.4%となる。
セグメント別の計画は、冷蔵倉庫事業の売上高が同2.3%増の247億07百万円、営業利益(連結調整前)が同7.4%増の51億円、食品販売事業の売上高が同3.5%増の1352億26百万円、営業利益が同63.0%増の19億38百万円、その他の売上高が同2.1倍の67百万円、営業利益が同26.8%増の46百万円としている。
冷蔵倉庫事業では入庫・出庫取扱量および平均保管在庫量が順調に増加し、新規稼働物流センターの収益寄与も本格化する。食品販売事業では引き続き、不採算在庫圧縮徹底や戦略的商材拡販などの効果が期待される。また減価償却費の減少(通期ベースで1億44百万円減少の見込み)も寄与して大幅増益予想である。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.2%、営業利益が57.1%、経常利益が61.6%、純利益が64.0%で、利益進捗率が高水準である。大幅増益基調で通期業績予想に増額余地がるだろう。
■中期経営計画で17年9月期純利益32億円目標
14年10月にスタートした第5次中期経営計画「Flap The Wings 2017」に基づいて、冷蔵倉庫事業では「クールネットワークのリーディングカンパニー」を目指し、食品販売事業では「安定的な利益追求を基本としながらも、強みのある商材を全社的に展開する」ことを命題としている。
目標数値は、17年9月期売上高1650億円、営業利益57億円(連結調整前の冷蔵倉庫事業56億65百万円、食品販売事業20億67百万円)、経常利益57億円、純利益32億円、ROE5.1%、配当性向40%、EBITDA100億円、自己資本比率52.0%としている。安定・着実な成長で持続的な企業価値向上を目指す方針だ。
■株主還元は配当性向40%以上の維持目標、株主優待は9月末に実施
配当政策の基本方針は安定的な配当を継続して行うとしている。そして企業価値向上に必要な設備・IT投資等を勘案しつつ、配当性向40%以上を維持していくことを目標としている。
株主優待については毎年9月30日現在の1000株以上保有株主に対して実施している。優待内容は1000株以上~3000株未満保有株主に対して鮭切身詰め合わせ、3000株以上保有株主に対して北海道産ホタテ・いくらセットを贈呈する。
■株価は調整一巡して上値試す
株価の動きを見ると、3月の高値圏1100円台から利益確定売りで一旦反落したが、大きく下押す動きは見られず調整一巡感を強めている。
6月8日の終値1028円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS59円91銭で算出)は17~18倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1185円23銭で算出)は0.9倍近辺である。なお時価総額は約539億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線がサポートラインとなって下げ渋る動きだ。調整が一巡して上値を試す展開だろう。