【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本アジアグループは17年3月期営業減益予想だが、成長戦略加速して中期的に収益拡大期待

 日本アジアグループ<3751>(東1)は社会インフラ・環境・エネルギー関連事業に経営資源を集中して成長戦略を強化している。17年3月期は先行投資負担で営業・経常減益予想だが、純利益は特別損失が一巡して増益予想である。成長戦略の加速で中期的には収益拡大が期待される。株価は安値圏でモミ合う展開だが、自己株式取得も評価材料であり、調整一巡して反発のタイミングだろう。

■社会インフラ・環境・エネルギー関連に経営資源を集中

 社会インフラ・環境・エネルギー関連にグループ経営資源を集中して、空間情報コンサルティング事業(国際航業の社会インフラ関連事業)、グリーンエネルギー事業(太陽光発電の受託および売電事業、土壌・地下水保全コンサルティング事業、戸建住宅・不動産事業)、ファイナンシャルサービス事業(日本アジア証券などの証券業)を展開している。防災・減災・社会インフラ更新関連、環境関連、メガソーラー関連、再生可能エネルギー関連などテーマ性は多彩である。

 16年3月期の報告セグメント別売上構成比は空間情報コンサルティング事業が56.5%、グリーンエネルギー事業が33.1%、ファイナンシャルサービス事業が10.3%で、営業利益(連結調整前)構成比は空間情報コンサルティング事業が42.2%%、グリーンエネルギー事業が44.9%、ファイナンシャルサービス事業が13.3%だった。

■グループ再編で中間持株会社体制を解消

 15年5月に「資本準備金の額の減少および剰余金処分に関するお知らせ」を発表し、6月開催の定時株主総会で承認された。今後の機動的かつ効率的な経営および株主還元施策を可能とすることを目的として、単体の資本準備金の額を減少して欠損の填補を行った。発行済株式総数は変更せずに資本準備金の額のみを減少するものであり、総資産の額に変動はなく1株あたりの純資産額に変更は生じない。

 この処理によって株主還元施策を行うことが可能な状態になったため、グループ組織の再編を実施し、当社が15年7月1日付で中間持株会社2社(日本アジアホールディングスおよび国際航業ホールディングス)を吸収合併し、中間持株会社体制を解消した。

 また太陽光発電事業にかかる子会社事業を統合し、グリーンエネルギー事業のJAG国際エナジーとグリーンプロパティ事業の国際ランド&ディベロップメントが合併(15年7月)して新JAG国際エナジーが発足した。またファイナンシャルサービス事業の強化を図るため、日本アジア証券にファイナンシャルサービス部門の子会社を集約した。

 さらに16年4月には連結子会社KHCを株式交換によって完全子会社化した。KHCはグループのグリーンエネルギー事業の主要会社の1つとして、兵庫県において環境配慮型住宅を含む戸建住宅事業を展開している。

■社会インフラ関連は改正PFI法も活用

 なお15年12月には国際航業が、メタウォーター<9551>を代表企業とする特別目的会社「あらおウォーターサービス」に参画し、荒尾市企業局と特別目的会社が「荒尾市水道事業等包括委託」業務委託契約を締結した。改正PFI法の「民間事業者による提案制度」に基づいて事業化されたもので、水道事業に関する業務を包括的に民間委託する全国に先駆けた先進的事業である。そして16年4月に業務を開始した。

■再生可能エネルギー関連では流水式水力発電にも参入
 
 再生可能エネルギー関連事業に関しては、14年10月に子会社JAG国際エナジーが、東京都が創設する官民連携再生可能エネルギーファンドの運営事業者に選定された。そして15年4月には第1号案件として、当社グループが開発したメガソーラー発電所「足柄大井ソーラーウェイ」と「行田ソーラーウェイ」を運営する合同会社に投融資を実行した。

 14年12月にはシーベルインターナショナル(東京都)の経営権を取得した。アジア・アフリカ各国に事業展開している同社の流水式超低落差型マイクロ水力発電システム(商品名:ストリーム)を活用して、マイクロ水力発電事業を再生可能エネルギー関連事業の第2の柱に育成する方針だ。

 15年3月には独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」の公募に対して、インドにおける「火力発電所放流渠を活用したマイクロ水力並列配置発電システム技術実証事業」が採択された。また小水力発電プロジェクトに関しては、国際連合工業開発機構(UNIDO)と「アフリカエチオピアプロジェクト」および「アフリカケニアプロジェクト」に関して正式契約を締結した。

 15年7月には、流水式小水力発電装置「スモールハイドロストリーム」が湖北土地改良区(滋賀県長浜市)の中央幹線用水路に採用された。FIT(固定価格買取制度)を活用した民間企業による小水力発電事業(100kw以下)において「スモールハイドロストリーム」の採用は初となる。

 16年2月にはJAG国際エナジーが、国内で展開するメガソーラーのプロジェクト資産を裏付けとしたプロジェクトファイナンススキームにより、総額約67億円の資金調達を行うことになったと発表した。格付投資情報センター(R&I)から「A(シングルAフラット)」の格付を取得したことに伴い、新生信託銀行が格付の付与された有価証券の発行および信託借入(双方とも通称グリーンプロジェクトボンド)をすることで、非遡及型融資(ノンリコース・ローン)が行われる。

 国内の太陽光発電事業に関する進捗状況は、16年3月末時点で売電事業の稼働・竣工が74.8MW(49ヶ所=国際航業15ヶ所+JAG国際エナジー34ヶ所)、案件確保が89.4MW、受託事業の稼働・竣工が129.8MW、案件確保が5.9MW、総合計が299.9MWである。

 なお16年4月には滋賀県長浜市「湖北ソーラーウェイ」太陽光発電所、北海道滝川市「滝川ソーラーウェイ」太陽光発電所、16年5月には北海道札幌市「札幌ソーラーウェイ」が完成した。

■空間情報コンサルティング事業は第4四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)124億60百万円、第2四半期(7月~9月)176億00百万円、第3四半期(10月~12月)181億62百万円、第4四半期(1月~3月)276億81百万円、営業利益は第1四半期1億45百万円、第2四半期11億47百万円、第3四半期10億07百万円、第4四半期30億53百万円だった。

 空間情報コンサルティング事業は公共事業関連が主力のため第4四半期の構成比が高い収益構造である。そして営業損益は改善基調だ。15年3月期のROEは14年3月期比3.3ポイント上昇して15.6%、自己資本比率は同1.9ポイント上昇して21.7%となった。

■16年3月期はファイナンシャルサービスの落ち込みや特別損失計上で減益

 前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比0.5%減の755億24百万円、営業利益が同27.4%減の38億87百万円、経常利益が同31.4%減の25億63百万円、純利益が同89.0%減の4億11百万円だった。空間情報コンサルティング事業とグリーンエネルギー事業は好調だったが、ファイナンシャルサービス事業が想定以上に落ち込んだ。また特別損失の計上も影響して大幅減益だった。

 売上総利益は同7.8%減少し、売上総利益率は31.1%で同2.5ポイント低下した。販管費は同2.6%減少し、販管費比率は26.0%で同0.5ポイント低下した。営業外収益では受取補償金81百万円を計上した。また持分法投資利益が増加(前々期4百万円計上、前期40百万円計上)し、為替差損益が改善(前々期は差損1億48百万円計上、前期じゃ差益4百万円計上)した。

 また特別利益では投資有価証券売却益が減少(前々期9億36百万円計上、前期8億96百万円計上)した。特別損失では減損損失が減少(前々期3億60百万円計上、前期1億52百万円計上)し、前々期計上した関係会社株式売却損7億37百万円が一巡したが、おきなわ証券での偶発損失引当金繰入額13億60百万円を計上した。また権利変換に伴う固定資産圧縮損81百万円、投資有価証券売却損38百万円などを計上した。

 配当は前々期の無配に対して、年間30円(第3四半期末20円=東証1部への市場変更記念特別配当、期末10円)とした。配当性向は200.5%である。利益配分については、業績に対応した水準であること、中長期的な視点から安定的に継続することを基本としつつ、競争力、事業環境、財務体質等を勘案して総合的に決定することを基本方針としている。当面の配当性向は10%~20%を目途とする。ROEは1.6%で同14.0ポイント低下、自己資本比率は21.9%で同0.2ポイント上昇した。

 セグメント別に見ると、空間情報コンサルティング事業は受注高が同2.0%増の421億46百万円、売上高が同1.6%増の426億81百万円、営業利益(連結調整前)が同26.4%増の17億46百万円だった。15年度の国の公共事業関係費が当初予算ベースで微増にとどまったが、まち・ひと・しごと創生関連事業、防災・減災・老朽化対策等への積極的な対応によって都道府県・市町村顧客の開拓を推進した。利益面では業務量の平準化推進などの効果も寄与した。

 グリーンエネルギー事業は受注高が同26.7%減の179億31百万円、売上高が同8.1%増の250億07百万円、営業利益が同10.9%増の18億56百万円だった。受注高は前々期の大型案件の反動で減少したが、売上面では売電事業が好調に推移し、受託事業も前々期受託した太陽光発電所開発が順調に進捗した。なお稼働済み発電所は49ヶ所以上、合計74MWを超える規模となった。

 ファイナンシャルサービス事業は売上高が同27.5%減の77億95百万円、営業利益が同78.9%減の5億51百万円だった。株式市場低迷などで特に外国株式関連の収益が減少した。

 空間情報コンサルティング事業は地方自治体からの受注が好調だったが、外注費や人件費の増加で減益だった。グリーンエネルギー事業は太陽光関連売電事業の発電施設増加および受託事業の大型開発案件進捗で大幅増収・営業増益だった。ファイナンシャルサービス事業は特に外国株式関連の収益が減少した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)155億14百万円、第2四半期(7月~9月)194億05百万円、第3四半期(10月~12月)187億75百万円、第4四半期(1月~3月)218億30百万円、営業利益は第1四半期3百万円、第2四半期10億60百万円、第3四半期2億79百万円、第4四半期25億45百万円だった。

■17年3月期は先行投資負担で営業減益予想だが、中期的に収益拡大期待

 今期(17年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比2.0%増の770億円、営業利益が同28.0%減の28億円、経常利益が同49.3%減の13億円、純利益が同2.4倍の10億円としている。先行投資負担などで営業減益・経常減益予想だが、純利益は特別損失が一巡して増益予想である。配当予想は年間10円(期末一括)としている。東証1部への市場変更記念特別配当20円を落として減配の形である。予想配当性向は27.6%となる。

 セグメント別の計画は、空間情報コンサルティング事業の売上高が同2.9%増の439億円で営業利益(連結調整前)が同42.7%減の10億円、グリーンエネルギー事業の売上高が同0.4%減の249億円で営業利益が同19.2%減の15億円、ファイナンシャルサービス事業の売上高が同5.2%増の82億円で営業利益が同27.1%増の7億円としている。

 空間情報コンサルティング事業は高水準の受注獲得や新規事業育成による民間・海外展開で増収だが、投資費用や販管費負担が先行して減益見込みとしている。グリーンエネルギー事業は大型案件の反動で売上高は横ばい、電源開発事業投資(風力・バイオマス)に伴う費用増加で減益見込みとしている。ファイナンシャルサービス事業は仲介店舗拡大などの収益基盤強化と相場環境のボトムアウトで増収増益見込みとしている。

■中期経営計画ではROE12%以上目標

 中期経営計画では、16年度~20年度を「成長DNA醸成ステージ」と位置づけ、経営目標値として20年度売上高1400億円~1600億円、営業利益110億円~130億円、ROE12%以上を掲げている。

 成長領域である「G空間×ICT」「まちづくり」「気候変動対策」分野への取り組みを強化する方針だ。財務面ではROE向上に向けて総資産利益率の向上および財務レバレッジ効果の追求を推進する。

■自己株式取得

 5月17日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限20万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間16年5月18日~16年6月30日)については、6月7日時点の累計で取得株式総数20万株、取得価額総額8753万6700円となって終了した。

 そして6月8日には新たに自己株式取得を発表した。取得株式総数の上限20万株(自己株式を除く発行済株式総数に対する割合0.7%)、取得価額総額の上限1億円、取得期間16年6月9日~16年6月30日とした。

■株価は安値圏モミ合いだが調整一巡

 株価の動きを見ると、5月17日と18日に年初来安値となる414円まで下押す場面があった。17年3月期営業減益予想を嫌気した動きのようだ。その後も安値圏400円台でモミ合う展開だが、調整一巡感も強めている。

 6月10日の終値437円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS36円18銭で算出)は12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.3%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS963円28銭で算出)は0.5倍近辺である。なお時価総額は約121億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となって水準を切り下げたが、安値圏の下ヒゲでほぼ底値圏と考えられる。自己株式取得も評価材料であり、調整一巡して反発のタイミングだろう。

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