- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 建設技術研究所は売られ過ぎで指標面に割安感、景気対策関連で注目
建設技術研究所は売られ過ぎで指標面に割安感、景気対策関連で注目
- 2016/6/16 07:23
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタントの大手である。16年12月期は減益予想だが、景気対策関連や災害復旧・復興関連で注目され、中期的にも国土強靭化関連が注目テーマとなる。株価は地合い悪化で年初来安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。1桁台の予想PERや0.5倍近辺の低PBRなど指標面の割安感は強い。売り一巡して反発のタイミングだろう。
■総合建設コンサルタントの大手
総合建設コンサルタントの大手で、河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。
13年9月には、農業・農村関連ビジネスへの参入を視野に入れて子会社CTIフロンティアを立ち上げた。14年4月には太陽光発電事業に着手した。15年6月には環境総合リサーチ(旧ユニチカ環境技術センター)を完全子会社化(非連結子会社)した。環境分野でのソリューション提供力の強化を目指す。
15年11月には、スポンサー契約を締結(15年9月)していた民事再生手続中の日総建(東京都)が新設分割による新会社(連結子会社)としてスタートした。日総建の主力分野である建築設計と当社関連部門との連携による業務拡大が期待される。
■ダイバーシティを推進
15年12月に「ダイバーシティ推進計画」を策定し、多様な正社員が力を発揮するダイバーシティの推進に取り組んでいる。そして「女性活躍推進法」に基づく一般事業主行動計画を策定して東京労働局に届け出た。本行動計画は、建設コンサルタントという企業特性を踏まえて定めた「ダイバーシティ推進計画」をもとに、ダイバーシティ推進の一環として、まずは女性社員がその力を長期にわたり思う存分発揮できる会社とすることを目的としている。行動計画本文はHP上に掲載されている。
■15年12月期は売上総利益率上昇
15年12月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(1~3月)78億09百万円、第2四半期(4~6月)137億37百万円、第3四半期(7~9月)91億59百万円、第4四半期(10~12月)95億15百万円、営業利益は第1四半期1億92百万円、第2四半期15億05百万円、第3四半期4億84百万円、第4四半期4億17百万円だった。
15年12月期の売上総利益率は27.0%で14年12月期0.7ポイント上昇、販管費比率は20.5%で同0.3ポイント上昇、ROEは7.2%で同0.3ポイント上昇、自己資本比率は53.9%で同0.8ポイント上昇した。配当性向は17.3%だった。
■16年12月期第1四半期は季節要因などで減収、営業赤字
今期(16年12月期)第1四半期(1月~3月)連結業績は、売上高が前年同期比3.7%減の75億21百万円、営業利益が43百万円の赤字(前年同期は1億92百万円の黒字)、経常利益が54百万円の赤字(同2億26百万円の黒字)、純利益が23百万円の赤字(同1億45百万円の黒字)だった。季節要因などで減収となり、各利益は赤字となった。ただし概ね計画水準としている。受注高は同7.8%減の69億82百万円だった。
■16年12月期通期は増収減益予想
今期(16年12月期)通期の連結業績予想(2月15日公表)は、売上高が前期(15年12月期)比5.7%増の425億円、営業利益が同7.6%減の24億円、経常利益が同8.6%減の25億円、純利益が同2.0%減の16億円としている。
受注高は同4.1%増の420億円の計画としている。東日本大震災の復興関連業務の重点が設計段階から施工段階に移行することに加えて、財政再建のための公共工事発注減少も予想されるとして、やや慎重な見通しだ。ただし景気対策の公共投資前倒しや災害復旧・復興関連の補正予算はプラス要因と考えられる。配当予想は前期と同額の年間20円(期末一括)で予想配当性向は17.7%となる。
■中期経営計画で18年連結受注高470億円目指す
15年5月にグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」を策定し、15年11月には中期経営計画2018を発表した。中期経営計画2018では、中長期ビジョン「CLAVIS2025」の最初の3年間の計画として、今後のインフラ多様化および競合の激化に備え、企業体力を強化するとともに事業ドメインの拡大を図り、マルチインフラ&グローバル企業へ向けての基盤を築くことを基本的な考え方とした。
そして中長期ビジョン「CLAVIS2025」目標(25年単体受注高400億円、連結受注高600億円)達成に向けて、中期経営計画2018では目標値として18年単体受注高350億円、連結受注高470億円、単体営業利益率7.0%(営業利益24億円)、連結営業利益率6.5%(営業利益30億円)を掲げている。株主還元については安定配当を維持する方針だ。
■中期的に事業環境は良好
中期的に事業環境は良好である。20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設ビッグプロジェクトが目白押しであり、国土強靭化基本計画に沿って社会資本整備に対する計画的な投資が実行される。
防災・減災関連、老朽化インフラ補修・更新関連、都市再開発関連、アベノミクス重点戦略「地方創生」関連の案件が増加し、土木コンサルタント業務の積算に用いられる技術者単価や一般管理費の比率が上昇して採算改善も期待される。そして、技術力によって契約企業を選定するプロポーザル方式において優位性を発揮している。
中期的に良好な事業環境も背景に、CTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」で掲げた新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等への事業領域拡大戦略も奏功して収益拡大が期待される。
■株価は地合い悪化で年初来安値更新だが売られ過ぎ感
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で水準を切り下げ、6月15日には年初来安値となる809円まで調整した。ただし売られ過ぎ感を強めている。
6月15日の終値811円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS113円15銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1675円40銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約115億円である。
週足チャートで見ると850円~900円近辺の下値支持線を割り込んだが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が拡大して売られ過ぎ感も強めている。1桁台の予想PERや0.5倍近辺の低PBRなど指標面の割安感は強い。売り一巡して反発のタイミングだろう。(アナリスト水田雅展)