ベステラは繰越工事高が高水準で17年1月期増収増益基調

 ベステラ<1433>(東マ)はプラント解体に特化したオンリーワン企業で、次世代プラント解体工法「3D解体」の実現に向けたロボット開発を推進している。17年1月期第1四半期は完成工事が少なく減収減益だったが、受注高および繰越工事高が高水準で通期は増収増益基調だろう。株価は地合い悪化も影響して戻り高値圏から反落したが、調整一巡して反発が期待される。

■プラント解体のオンリーワン企業

 製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造のプラント設備解体工事に特化したオンリーワン企業である。1974年設立で、2015年9月東証マザーズに新規上場した。2004年に球形ガスホルダー解体「リンゴ皮むき工法」の特許を取得、2007年に火力発電所等の「ボイラ解体方法」の特許を取得、2010年に遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」を開発している。

 製鉄・電力・ガス・石油・石油化学業界(製鉄所・発電所・石油精製・石油化学設備など)向けを主力とするプラント解体工事、および特定化学物質・アスベスト・ダイオキシン・土壌汚染などの環境関連対策工事を展開している。16年1月期末の従業員数は42名である。実際の解体工事は外注先が行い、当社は施工管理を行う。主要顧客はJFEグループ、新日鐵住金グループ、戸田建設、東京エネシス、IHIグループなどである。

 また関連事業として、建設技能労働者の不足に対応した人材派遣・紹介・育成サービス、プラント解体事業における事前調査等の強化を目的とした3D計測・データサービスも展開している。16年1月期の事業別売上高構成比は、プラント解体事業が98.3%、その他(人材サービス含む)が1.7%だった。

 大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的な解体マネジメント、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有(特許取得14件、特許申請中5件)を強みとしている。

■解体需要は中期的に増加予想

 17年1月期~19年1月期の「中期経営計画2018」では、環境ソリューション、3D計測、HRソリューション(人材サービス)などを含めたプラント解体周辺分野へのサービスも拡大して、プラント解体トータルマネジメントを強化する方針を打ち出している。そして経営目標数値には売上高70億円以上、営業利益6.5億円以上、ROE17%以上の早期達成を掲げた。

 企業の事業再編や設備集約、さらに産業競争力強化法やエネルギー供給構造高度化法など余剰設備の再編に向けた国の政策も背景として、1960年代の高度成長期に建造されたプラントの老朽化に伴う解体工事が増加すると予想されている。また国土交通省が43年ぶりに許可業種区分を見直し、専門業種として「解体工事」を新設(16年6月から3ヶ年で順次移行)した。1件5百万円以上の解体工事を実施する場合は許可取得が必要になる。

 こうした設備解体需要や制度見直しに対応した重点戦略として、専門性の高い技術を提供していくとともに、工法(プラント解体戦略)の充実、事業領域3本柱(工事・3D・人材)の確立、パーフェクト3Dおよび3D解体、プラント3Dマスターを中核とした新しい社会価値の創出、内部管理体制の拡充と機能向上、人材の確保と育成などを推進する。

■次世代解体工法「3D解体」実現に向けてロボット開発を推進

 ロボット工法については、遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」を開発して工事実績を積み上げ、新アタッチメント開発による用途拡大を進めている。また東京工業大学との産学連携による群移動体型ロボット「群龍」や、京都大学および山口大学との共同研究による監視ロボットを開発している。さらに次世代プラント解体工法「3D解体」の実現に向けたロボット開発を推進する。

 6月9日には京都大学、山口大学、および特定非営利活動法人国際レスキューシステム研究機構と、それぞれ「点群3D Map利用ロボット開発」を研究題目とした共同研究契約を締結したと発表している。IOTを活用し、自律作業ロボットによる自動運転(プラント監視・管理)および自動施工の実現を目指す。なお今回契約期間は17年3月31日までだが、開発全体は3ヶ年を予定している。

■第1・第4四半期の構成比が高く、完成工事によって四半期業績が変動

 完成工事高の四半期別推移を見ると、15年1月期第1四半期(2~4月)6億64百万円、第2四半期(5~7月)2億49百万円、第3四半期(8~10月)6億32百万円、第4四半期(11~1月)14億56百万円、16年1月期第1四半期12億69百万円、第2四半期5億64百万円、第3四半期5億47百万円、第4四半期13億99百万円だった。

 顧客の設備投資計画に応じた季節性があり、第1四半期と第4四半期の構成比が高い収益構造である。また工事完成時期によって四半期業績が大きく変動する可能性がある。収益認識は工事進行基準と工事完成基準があり、工事進行基準の適用要件は請負金額30百万円以上、工事期間3ヶ月超、スクラップ等の有価物売却予想額1百万円以下としている。当社がスクラップ等の有価物(売却予想額1百万円超)を引き取る契約の解体工事については、工事の収益が最終のスクラップ売却時まで確定しないため、請負金額や工事期間にかかわらず工事完成基準を採用している。

 16年1月期の受注工事高は15年1月期比82.3%増の55億00百万円、完成工事高は同25.9%増の37億80百万円、そして繰越工事高は同2.0倍の33億62百万円だった。売上総利益率は22.6%で同0.8ポイント低下(完成工事総利益率が22.3%で同1.1ポイント低下、兼業事業総利益率が35.5%で同12.1ポイント上昇)した。販管費比率は10.9%で同0.1ポイント上昇した。営業外収益では補助金収入20百万円、営業外費用では株式公開費用10百万円を計上した。

 配当は年間90円(期末一括、普通配当70円+上場記念配当20円)で配当性向は35.0%だった。利益還元については配当性向40%を目安としている。ROEは18.4%で同3.5ポイント低下、自己資本比率は63.6%で同18.3ポイント上昇した。

■17年1月期第1四半期は減収減益

 6月9日に発表した今期(17年1月期)第1四半期(2~4月)の非連結業績は、売上高が前年同期比30.2%減の8億95百万円、営業利益が同63.8%減の90百万円、経常利益が同63.4%減の91百万円、純利益が同61.9%減の59百万円だった。

 完成工事高は完成基準を採用している工事が少なく同30.9%減の8億77百万円だったが、受注高は同90.3%増の5億31百万円、繰越工事高は同4.6倍の30億16百万円と大幅に増加した。売上総利益は同1億25百万円減少し、売上総利益率は22.4%で同3.0ポイント低下(完成工事総利益率が21.9%で同3.4ポイント低下、兼業事業総利益率が46.5%で同14.2ポイント上昇)した。販管費は同33百万円増加し、販管費比率は12.4%で同6.3ポイント上昇した。

■17年1月期通期は増収増益基調、繰越工事高が高水準

 今期(17年1月期)通期の非連結業績予想は前回予想(3月16日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年1月期)比22.2%増の47億円、営業利益が同8.4%増の4億85百万円、経常利益が同5.1%増の4億88百万円、純利益が同7.0%増の3億13百万円としている。

 事業拡大に伴う人員増や、3D計測事業への研究開発費などで販管費が増加するが、高水準の受注高および繰越工事高を背景に増収増益予想である。四半期業績は工事完成基準を採用している工事の完成時期によって大きく変動するため、第1四半期の減収減益はネガティブ要因とはならない。通期ベースで増収増益基調に変化はないだろう。

 なお配当予想は年間40円(第2四半期末10円、期末30円)で予想配当性向は34.9%である。16年1月31日付の株式2分割を考慮して、前期の年間90円(普通配当70円+上場記念配当20円)を45円に換算すると、実質的に5円減配となる。

■株価は戻り高値圏から反落したが、調整一巡して反発期待

 株価の動きを見ると、戻り高値圏の4000円台から地合い悪化も影響して急反落した。6月17日の終値3490円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想EPS114円67銭で算出)は30倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は1.2%近辺、前期実績PBR(前期実績BPS751円40銭で算出)は4.6倍近辺である。時価総額は約95億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。また週足チャートで見ると26週移動平均線近辺で下げ渋りサポートラインを確認した形だ。の形となった。調整一巡して反発が期待される。(アナリスト水田雅展)

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