西松屋に追随して連続「ゼロ回答」の日銀と真逆の第4・第5の「超満額回答」銘柄にアプローチ余地=浅妻昭治

<マーケットセンサー>

 まさに相場逆境下で待望される「地獄で仏」、兜町流に言い回す「救世主銘柄」であり、「お助けマン銘柄」であり、「救済銘柄」である。西松屋チェーン<7545>(東1)のことである。株式相場は、6月15~16日に開催された日銀の金融政策決定会合で、今年4月に続いて現状維持決定とまたも「ゼロ回答」を繰り返し、為替相場が、1ドル=103円台まで急激に円高となり、6月23日に控える英国のEU(欧州連合)残留・離脱を問う国民投票の結果も懸念して世界同時株安の再燃に怯えていた。その逆風の吹き募る相場環境下、西松屋は、前週6月16日に今2月期業績を上方修正し、株価は、17日には東証第1部値上がり率ランキングのトップと急伸し年初来高値を更新し、逆行高銘柄の方向性を示唆して等しく市場参加者全員の希望の星として光を増したからである。

 もちろん西松屋とは別の「救世主銘柄」へのアプローチもあり得る。例えば、金融政策決定会合後の記者会見で、黒田東彦総裁が、再三、ゼロ金利政策の効果がすでに表れていると強調し、お墨付きを与えた貸家建設の関連株も候補株となる余地もあるかもしれない。サブリース事業を展開している東建コーポレーション<1766>(東1)大東建託<1878>(東1)レオパレス21<8848>(東1)などへのトライである。

 また、そもそも「救世主銘柄」そのものを必要としない相場展開も考えられる。麻生太郎財務相が示唆した為替介入や、英国の国民投票で、6月16日に発生した英国下院議員の銃撃事件が影響して英国のEU残留が決まれば、為替相場は、円高から円安に巻き戻し、大きく下げた主力株が、EU関連株を中心に大きく戻す「リターン・リバーサル」の展開も想定されるからだ。

 しかし、全般相場は、7月10日投開票の参議院選挙や7月26日~29日開催予定の日米中央銀行の金融政策決定会合を控えてなお紆余曲折も想定され、「救世主銘柄」へのニーズが高まりさえするものの、低下する展開が想定される。とくに今回の西松屋の「救世主銘柄」としてのプレゼンスは、かなり確度が高いはずである。というのも、西松屋の脇をガッチリと固める同様の上方修正銘柄が相次いだからだ。スター・マイカ<3230>(東2)は、西松屋と同日の6月16日に今11月期第2四半期(2Q)累計業績の上方修正を発表し、17日の前引け後にはエスクロー・エージェント・ジャパン<エスクローAJ、6093>(東2)が、今2月期業績の上方修正を発表し、それぞれ株価が急伸した。

 この3銘柄には、共通項がある。西松屋は、今期の第1四半期(1Q)決算の開示とともに、2月通期業績の早期上方修正を発表したが、スター・マイカは、6月30日に予定していた今期2Q累計決算の発表に先立ってその2Q累計業績を上方修正し、エスクローAJは、7月8日に予定していた今2月期1Q決算の発表に先行してその2月通期業績の上方修正をしたのが一番目の共通項である。なかでも西松屋は、今年3月に前期業績を下方修正しており、それからわずか3カ月後に今期業績を早期に上方修正しており、その落差の大きさは、「ゼロ回答」を繰り返す日銀とは真逆の「満額回答」、「超満額回答」とも評価されることになり、サプライズとなって株価の急伸につながったのである。

 この6月中旬から7月中旬にかけては、小売・消費関連の内需株の2月期決算会社の1Q業績や、5月決算会社の5月通期業績、11月決算会社の2Q累計業績がそれぞれ発表される時期に当たる。この決算発表時に西松屋と同様に早期に業績を上方修正するケースが出てくれば、それこそ「第4」、「第5」の救世主銘柄の誕生となることになる。そこで注目したいのが、西松屋とスター・マイカのもう一つの共通項である。2銘柄と共通の特徴を持つ銘柄は、あるいはこの6月中旬から7月上旬にかけての四半期決算の開示に合わせて業績を上方修正する可能性を含み、業績を下方修正する「マイナス回答」、予想据え置きの「ゼロ回答」にならない限り西松屋を追撃して株価も急伸するかもしれないからだ。

 もう一つの共通項とは、今年1月初旬から4月上旬にかけての前期決算の発表時に今期予想業績が市場コンセンサスを上回ったことである。同様のケースとなった銘柄は、西松屋などと同様に早期の上方修正に踏み切る資格条件を内包しているとすれば、四半期決算開示を先取りして「救世主銘柄」展開を期待することもあながち的外れとならないはずである。なおエクスローAJは、新興市場株としてカバーする証券アナリストがなく、市場コンセンサスはないが、前週末大引け後には東証第1部への市場変更承認を発表しており、「救世主銘柄」の資格要件を補うものとして余りある。

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