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エスプールは水準切り上げて上値試す、16年11月期大幅増益予想
- 2016/6/21 07:08
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エスプール<2471>(JQS)は人材サービス事業を展開している。16年11月期はロジスティクスアウトソーシングの低採算案件減少や電力スマートメーター設置業務の収益化などで大幅増益予想である。株価は年初来高値を更新して15年7月以来の1000円台にタッチする場面があった。水準を切り上げて上値を試す展開だろう。なお7月5日に第2四半期累計の業績発表を予定している。
■ロジスティクス、障がい者雇用支援、コールセンターなど人材サービス事業
ビジネスソリューション事業(ロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、フィールドマーケティングサービス、マーチャンダイジングサービス、販売促進支援業務、顧問派遣サービス)、および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、携帯電話販売員派遣、ストアスタッフ派遣)を展開している。
成長分野への集中投資で事業拡大を図るとともに、低採算案件の見直しなど低収益事業の改善にも取り組んでいる。継続的な収益の確保が期待できるストック型サービスの構成比を高めることで収益構造の抜本的な改善を推進する方針だ。
■ロジスティクス分野は低採算案件見直しで収益改善推進
ロジスティクスアウトソーシングサービスは、子会社エスプールロジスティクスがECサイト出店企業などの物流センター運営・発送代行サービスを展開している。
ネット通販市場の拡大やインバウンド需要の増加を背景として物流センターの需要は高水準だが、物流センター運営代行業務では低採算案件の取引見直しを進めている。当面の売上高は減少するが、高単価の健康食品・化粧品などへの取扱品目シフトや業務効率化などで収益改善を推進する。
■障がい者雇用支援サービスを拡大
障がい者雇用支援サービスは、障がい者雇用促進法に基づいて大企業の障がい者雇用をサポートしている。子会社エスプールプラスが運営する企業向け貸し農園「わーくはぴねす農園」の栽培設備販売収入と農園運営管理収入を収益柱としている。
千葉県市原市「わーくはぴねす農園 市原ファーム」では23社の企業がサービスを利用し、14年6月新設の千葉県長南町「わーくはぴねす農園 茂原ファーム」も完売した。15年2月には第3農園となる山武農園を開設した。高付加価値サービスとして千葉県中心に事業規模を拡大する方針で、早期の全国展開も視野に入れて行政との連携強化に取り組んでいる。
■電力会社のスマートメーター関連業務を拡大
フィールドマーケティングサービスでは、子会社エスプールエンジニアリングが電力分野のスマートメーター関連業務を拡大している。
15年5月にエスプールエンジニアリングが東京電力<9501>からスマートメーター設置業務を受注した。東京電力は20年度までに約2700万台のスマートメーター設置を予定しており、このうち約540万台分の入札で約24億円分の業務(工事履行期間15年7月1日~17年3月20日)を受注した。確実に実績を積み上げて全国各地域での受注を目指す。
■グループのセールスサポート関連を集約
14年11月には販売促進支援業務に特化した子会社エスプールセールスサポートを設立した。マーチャンダイジング業務、クレジットカードなどの会員獲得業務、販売イベントブースの運営業務などの販売促進支援業務を集約(ビジネスソリューション事業)し、事業拡大と収益性向上を目指す。
■人材ソリューション事業はコールセンター業務向け人材派遣が主力
人材ソリューション事業(子会社エスプールヒューマンソリューションズ)は、コールセンター業務や携帯電話販売業務向けの人材派遣を主力としている。16年4月にはエスプールヒューマンソリューションズが、厚生労働省の委託で設置された優良派遣事業者認証委員会が指定した審査認定機関より「優良派遣事業者」として認定された。
ファミリーマート<8028>FC店舗向けに人材提供を行う「人材サポートセンター」を設立し、コンビニエンスストア向けストアスタッフサービスを強化している。15年6月にはフルキャストホールディングス<4848>と業務提携した。
また新規事業として15年12月、小売・飲食・サービス業などアルバイトを多く採用する企業を対象にアルバイト募集受付代行サービス「Omusubi」を開始した。16年11月期第1四半期時点で飲食チェーンなど約20社の契約を獲得し、16年11月期中に30社の受注を目指している。そして6月1日には「Omusubi」業務拡大に合わせて北海道北見市の事務センターを拡張すると発表した。
■15年11月期は電力スマートメーター関連の先行費用で大幅減益
前期(15年11月期)は人件費の増加や電力スマートメーター設置業務関連費用の先行で大幅減益、最終赤字だった。売上総利益率は25.3%で同0.5ポイント上昇、販管費比率は24.5%で同2.8ポイント上昇した。特別損失に本社移転費用40百万円を計上した。ROEはマイナス9.7%で同44.9ポイント低下、自己資本比率は24.7%で同10.4ポイント低下した。配当は前々期と同額の年間10円(期末一括)だった。配当の基本方針は、中長期的な企業価値の向上と継続的・安定的な配当の両立を目指し、連結ベースでの株主資本配当率(DOE)5%を目安としている。
セグメント別(連結調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同10.9%増の30億円で、営業利益が同41.7%減の1億63百万円だった。電力スマートメーター設置業務は営業利益2億63百万円の押し下げ要因となった。人材ソリューション事業は売上高が同8.1%増の43億02百万円で、営業利益が同16.3%増の3億60百万円だった。コールセンター業務向け人材派遣(前々期比45.4%増収)が好調だった。携帯電話販売業務向け(同10.3%減収)は成長が鈍化した。
四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(12~2月)16億61百万円、第2四半期(3~5月)17億77百万円、第3四半期(6~8月)18億円、第4四半期(9~11月)20億29百万円、営業利益は第1四半期22百万円の赤字、第2四半期53百万円、第3四半期90百万円の赤字、第4四半期1億18百万円だった。
■16年11月期第1四半期は営業黒字化
今期(16年11月期)第1四半期(12月~2月)の連結業績は、売上高が前年同期比22.7%増の20億38百万円、営業利益が1百万円の黒字(前年同期は22百万円の赤字)、経常利益が0百万円の赤字(同24百万円の赤字)、純利益が8百万円の赤字(同27百万円の赤字)だった。
人材ソリューション事業が計画を上回るペースで推移し、好採算案件へのシフトなども寄与して営業黒字化した。スマートメーター設置業務は稼働が本格化して営業赤字が縮小した。売上総利益は同39.4%増加し、売上総利益率は24.9%で同3.0ポイント上昇した。販管費は同30.8%増加し、販管費比率は24.8%で同1.5ポイント上昇した。
セグメント別(連結調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同15.6%増の7億66百万円、営業利益が同43.5%減の12百万円だった。ロジスティクスアウトソーシングの低採算案件見直しで物流センター運営業務を大幅に縮小し、スマートメーター設置業務先行費用の影響で大幅減益だが、障がい者雇用支援サービスが好調に推移し、スマートメーター設置業務の稼働本格化も寄与して増収だった。なおスマートメーター設置業務の赤字は縮小傾向のようだ。
人材ソリューション事業は売上高が同27.2%増の12億80百万円、営業利益が同2.0倍の1億18百万円だった。コールセンター業務ではスタッフ定着率向上に主眼を置いたグループ型派遣が拡大し、前期伸び悩んだ店頭販売支援業務も家電販売領域に業務を拡大したことで回復傾向のようだ。人材採用市場における需給逼迫の影響で好採算案件へのシフトが進んだことも寄与した。
■16年11月期大幅増益予想、成長軌道への回帰を期待
今期(16年11月期)連結業績予想(1月13日公表)については、売上高が前期(15年11月期)比13.1%増の82億20百万円、営業利益が同4.5倍の2億70百万円、経常利益が同5.2倍の2億58百万円、純利益が1億83百万円(前期は68百万円の赤字)としている。売上高・利益とも過去最高更新予想だ。配当予想は前期と同額の年間10円(期末一括)で配当性向は16.4%となる。
障がい者雇用支援サービスやコールセンター業務が好調に推移する。ロジスティクスアウトソーシングは低採算の物流センター運営代行業務を縮小するため大幅減収となるが、低採算案件減少や業務効率化で売上総利益率が改善する。スマートメーター設置業務は第1四半期に体制整備が完了し、第2四半期内に単月黒字化する見込みだ。売上総利益率は28.4%で同3.1ポイント上昇、販管費比率は25.1%で同0.6ポイント上昇の計画としている。
なおセグメント別(連結調整前)の計画は、ビジネスソリューション事業の売上高が同20.0%増の35億99百万円、営業利益が同2.7倍の4億39百万円、人材ソリューション事業の売上高が同10.2%増の47億40百万円、営業利益が同2.8%増の3億70百万円としている。ビジネスソリューション事業の売上高のうちロジスティクスアウトソーシングサービスは同41.6%減の10億円、障がい者雇用支援サービスは同53.5%増の8億72百万円、セールスサポートサービスは同44.6%増の5億15百万円、スマートメーター設置業務は10億21百万円としている。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は低水準だが、障がい者雇用支援サービスの農園販売が下期に集中し、スマートメーター設置業務の収益本格貢献が下期からとなるため、下期偏重の期初計画である。障がい者雇用支援サービスやコールセンター業務の好調推移、ロジスティクスアウトソーシングの低採算案件減少による売上総利益率改善、スマートメーター設置業務の収益化、そして改正労働者派遣法も追い風となって成長軌道への回帰が期待される。
■中期経営計画で「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」目指す
15年1月策定の新中期経営計画「Next2020-変化への挑戦」では、中期ビジョンとして「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」を掲げている。社会貢献性が高い分野、景気変化に強い分野、参入障壁が高い分野でバランスの取れたポートフォリオ経営を推進し、ストック型ビジネスの強化、低収益事業の改善、新たな収益柱の構築を目指す方針だ。
経営目標値は、営業利益率5%の早期達成と20年度までに業界最高水準10%の達成、安定的かつ継続的な配当の実施、ROE最低5%堅持としている。人材確保が課題だが、アウトソーシング需要は高水準であり、高付加価値サービスが牽引して中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は水準を切り上げて上値試す
株価の動きを見ると水準切り上げの展開だ。6月10日には1月の899円を突破して年初来高値を更新し、15年7月以来となる1000円にタッチする場面があった。
6月20日の終値860円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS61円05銭で算出)は14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS218円74銭で算出)は3.9倍近辺である。時価総額は約26億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドの形だ。水準を切り上げて上値を試す展開だろう。(アナリスト水田雅展)