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マルマエは調整一巡して切り返し、受注高水準で16年8月期3回目増額修正の可能性
- 2016/6/21 07:19
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マルマエ<6264>(東マ)は半導体・FPD製造装置に使用される真空部品などの精密切削加工事業を展開している。受注が高水準で16年8月期業績予想は3回目の増額の可能性があるだろう。株価は年初来高値圏から反落したが、調整一巡して切り返しの動きを強めている。上値を試す展開だろう。なお7月13日に第3四半期累計の業績発表を予定している。
■真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開
半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開し、新規分野として光学装置・通信関連分野なども強化している。
15年1月に事業再生計画(11年7月事業再生ADR成立)を終結した。16年10月の最終弁済をもって終了する計画だったが、強固な収益体質の確立と財務体質の改善に目途がついたため前倒しした。債務の株式化を行ったA種優先株式については15年5月に取得(246株、1株につき100万円)して消却した。
■15年8月期は財務改善も進展して初配当を実施
15年8月期は半導体分野およびFPD分野の好調な受注が牽引し、売上総利益率は30.9%で同2.6ポイント上昇、販管費比率は9.7%で同1.7ポイント低下した。特別利益には「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業に係る補助金」15百万円、および繰延税金資産1億13百万円を計上した。
ROEは100.7%で同22.9ポイント低下、自己資本比率は32.7%で同10.3ポイント上昇、BPSは135円80銭で14年8月期の28円68銭から大幅に改善した。96年マザーズ上場以来初となる年間36円(期末一括)の配当を実施した。配当性向は11.3%だった。
15年8月期の四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(9月~11月)3億84百万円、第2四半期(12月~2月)6億39百万円、第3四半期(3月~5月)5億59百万円、第4四半期(6月~8月)5億42百万円、営業利益は第1四半期41百万円、第2四半期1億30百万円、第3四半期1億40百万円、第4四半期1億39百万円だった。収益改善基調だ。
■16年8月期第2四半期累計は大幅営業増益
今期(16年8月期)第2四半期累計(15年9月~16年2月)の非連結業績は、売上高が前年同期比12.5%増の11億51百万円、営業利益が同55.8%増の2億67百万円、経常利益が同48.7%増の2億50百万円だった。純利益は税金費用の増加で同4.1%減の1億73百万円だった。受注高は同10.2%減の9億94百万円、受注残高は同12.9%増の3億04百万円だった。
分野別受注高は、半導体分野が同12.9%減の5億18百万円、FPD分野が同2.2倍の4億67百万円、その他分野が同96.9%減の9百万円、分野別売上高は、半導体分野が同11.5%増の5億86百万円、FPD分野が同2.4倍の5億05百万円、その他分野が同84.2%減の42百万円だった。半導体分野は顧客内シェア拡大と生産体制強化などで堅調に推移した。FPD分野は旺盛な設備投資意欲を背景に受注が増加した。その他分野は光学関連が一巡した。
売上原価では労務費、販管費では研究開発費と人件費が増加したが、FPD分野増収によるプロダクトミックス改善で材料費と外注加工費が減少し、生産性向上効果も寄与して大幅営業増益だった。売上総利益は同42.2%増加し、売上総利益率は34.5%で同7.2ポイント上昇した。販管費は同20.5%増加し、販管費比率は11.3%で同0.7ポイント上昇した。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(9月~11月)6億19百万円、第2四半期(12月~2月)5億32百万円で、営業利益は第1四半期1億55百万円、第2四半期1億12百万円だった。
■16年8月期通期業績予想は3回目増額修正の可能性
今期(16年8月期)通期の非連結業績予想(4月1日に2回目の増額修正)については、売上高が前期(15年8月期)比1.2%増の21億50百万円、営業利益が同6.7%減の4億20百万円、経常利益が同10.5%減の3億90百万円、純利益が同42.8%減の3億20百万円としている。
分野別売上高の計画は、半導体分野が同1.0%増の11億84百万円、FPD分野が同55.0%増の8億91百万円、その他分野が同83.3%減の56百万円としている。FPD分野の受注が好調に推移する。
配当予想は年間14円(第2四半期末7円、期末7円)としている。15年9月1日付の株式3分割を考慮して、前期の年間36円を株式3分割後に換算すると年間12円となり、今期は実質的に前期比2円増配となる。予想配当性向は23.1%となる。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が53.5%、営業利益が63.6%、経常利益が64.1%、純利益が54.1%と高水準である。下期については依然として保守的な印象が強く、通期会社予想は3回目の増額修正の可能性があるだろう。
■月次受注動向は高水準維持
16年5月度の月次受注残高(速報値)は、半導体分野1億81百万円(前月比31.7%増、前年同月比14.7%増)、FPD分野1億73百万円(前月比6.3%減、前年同月比9.6%減)、その他分野12百万円(前月比8.4%増、前年同月比32.1%減)、合計3億67百万円(前月比9.9%増、前年同月比0.3%減)だった。
合計ベースで見ると前月比増加、前年同月比微減だった。半導体分野は受注好調だった。エンドユーザーの大規模な微細化投資に伴って今後一段と拡大傾向が強まる見通しだ。FPD分野は受注減少だが出荷検収が好調に推移した。携帯端末向け設備投資が一旦落ち着いたが、年末にかけて有機EL向け受注が拡大する見通しで、テレビ向け第10.5世代大型パネル製造装置の設備投資も具体化している。
■新中期事業計画でロボット分野への参入も推進
15年10月に新中期事業計画「Evolution2018」(16年8月期~18年8月期)を策定した。
半導体分野は微細化投資の本格化に対応して、洗浄分野への参入やエッチング分野の試作強化を推進する。FPD分野は8Kなどで需要拡大が見込まれるため、自社における設備投資ではなく、協力企業の拡大によって需要変動に対応する。その他分野では自動車関連やロボット関連へ市場へ参入し、生産余力の効率的活用と協力企業の拡大を図る。
半導体分野を成長ドライバーとする既存事業のブラッシュアップに加えて、現業とのシナジー効果や半導体・FPD分野の需要変動に対するリスクヘッジとして、売上高20億円規模までの中小企業を対象としてM&Aも積極活用する方針だ。M&Aは半導体洗浄・樹脂パーツや自動車・ロボット部品などを想定している。
15年12月には鹿児島大学大学院理工学研究科との共同研究契約を締結した。リハビリ装置の研究開発と作業筋力補助ロボットの研究開発の2件について、早期の実用化を目指して共同研究する。市場ニーズの高さを考慮し、脳卒中の後遺症として腕や足に残る運動麻痺の改善を狙うリハビリ装置の製品化を先行し、腕の麻痺改善装置の開発に着手している。なお今期中に試作機を完成させる予定だったが、モーター等の購入品に長期納品が必要となったため、当初見通しより3ヶ月程度遅れて11月の試作機完成予定となった。
経営数値目標としては、18年8月期の連結売上高40億円、営業利益10億円(単体ベースで売上高30億円、営業利益7億円、M&Aで売上高10億円、営業利益3億円)を掲げている。株主還元としては配当性向35%以上(順次向上)を目指している。また計画期間中に東証1部への市場変更を目指す方針だ。
■株価は調整一巡して上値試す
株価の動きを見ると、5月20日の年初来高値904円から利益確定売りや地合い悪化で反落したが、600円近辺から切り返しの動きを強めている。
6月20日の終値673円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS60円74銭で算出)は11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間14円で算出)は2.1%近辺、前期実績PBR(前期実績BPS135円80銭で算出)は5.0倍近辺である。時価総額は約38億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。調整一巡して上値を試す展開だろう。(アナリスト水田雅展)