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イワキは16年11月期通期業績予想に増額余地
- 2016/6/22 07:30
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
イワキ<8095>(東1)は医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社である。ジェネリック医薬品向け原料が好調で16年11月期通期業績予想にも増額余地がありそうだ。株価は地合い悪化の影響を受けたが、年初来安値を割り込むことなく切り返しの動きを強めている。3%台の予想配当利回りや0.4倍近辺の低PBRと指標面の割安感は強く、有機EL関連としても注目される。出直り展開だろう。
■医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社
医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社である。グループ内に医薬品製造・販売の岩城製薬、表面処理薬品製造・販売のメルテックスといったメーカー機能も備えている。15年12月には当社の化成品事業における表面処理薬品原料等の販売事業をメルテックスに承継した。
16年11月期から事業区分を再構成して、医薬・FC(Fine Chemical)事業(医薬品原料の製造・販売、医薬品の製造・販売、体外診断薬・研究用試薬の卸売および医療機器の販売)、HBC(Health & Beauty Care)事業(化粧品原料・機能性食品原料の販売、一般用医薬品・関連商品の卸売、化粧品通信販売)、化学品事業(表面処理薬品・電子工業薬品・化成品の製造・販売、表面処理設備の製造・販売)、食品事業(食品原料の製造・販売)の4事業とした。
15年11月期の売上高構成比(新区分に組替後)は、医薬・FC事業が35%(原料薬品23%、医薬品9%、その他特約3%)、HBC事業が43%(HBC原料20%、ファルマネット19%、オリジナル製品4%)、化学品事業が11%(表面処理薬品7%、スペシャリティマテリアル1%、表面処理設備3%)、食品事業が7%だった。
■中期成長に向けて卸売・商社・メーカー機能の連携を強化
全国の医薬品卸・医療機関・ドラッグストアなどに医薬品や機能性食品などを供給する卸売機能、国内外のメーカーなどを開拓して輸出入する商社機能、グループ内に岩城製薬とメルテックスのメーカー機能を併せ持つことが強みで、卸売・商社・メーカー機能の連携を強化している。
中期的な事業基盤強化と収益拡大に向けて、医薬品事業での共同開発・受託品の拡大、ドラッグストア向けPB商品など自社企画商品の開発強化、医薬品原料事業における市場シェア拡大、インド・グレンマーク社など海外サプライヤーとの連携強化、岩城製薬の生産能力増強と新製品開発、メルテックスの新製品拡販、海外(タイ、韓国、中国)展開強化、日立化成<4217>とのアライアンスによる拡販などを推進している。
15年10月にはベトナム駐在員事務所を開設した。海外展開強化の一環としてベトナムおよび周辺国における市場調査や営業支援等を推進する。
■15年11月期は化学品事業が新製品への切り替えで低調
四半期別の業績推移を見ると、14年11月期は売上高が第1四半期(12~2月)125億44百万円、第2四半期(3~5月)141億92百万円、第3四半期(6~8月)131億90百万円、第4四半期(9~11月)142億19百万円、営業利益が第1四半期1億90百万円、第2四半期4億24百万円、第3四半期23百万円の赤字、第4四半期2億99百万円だった。
15年11月期は売上高が第1四半期130億01百万円、第2四半期145億15百万円、第3四半期139億58百万円、第4四半期139億48百万円、営業利益が第1四半期90百万円、第2四半期3億08百万円、第3四半期1億46百万円、第4四半期15百万円だった。
15年11月期は営業減益・経常減益で純利益は赤字だった。ジェネリック医薬品関連やインバウンド需要関連が伸長したが、新製品への切り替えを進めている化成品事業が減収となり、メルテックスにおける繰延税金資産取崩も影響して最終赤字だった。売上総利益率は19.4%で14年11月期比1.2ポイント低下、販管費比率は18.4%で同0.6ポイント低下した。配当は同1円50銭減配の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)だった。
■16年11月期第1四半期は計画超の大幅営業増益
今期(16年11月期)第1四半期(12月~2月)連結業績は、売上高が前年同期比1.9%減の127億53百万円、営業利益が同78.4%増の1億61百万円、経常利益が同11.3%減の1億55百万円、純利益が同14.8%増の41百万円だった。医薬・FC事業の好調や販管費の抑制などで計画超の大幅営業増益だった。
売上総利益率は20.3%で同0.3ポイント低下、販管費比率は19.0%で同0.9ポイント低下した。営業外収益では有価証券償還益66百万円が一巡し、営業外費用では為替差損が増加(前期0百万円、今期34百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益25百万円、特別損失では過年度決算訂正関連費用45百万円を計上した。
セグメント別に見ると、医薬・FC事業は売上高が同8.2%増の47億72百万円、営業利益(連結調整前)が同28.9%増の2億76百万円だった。後発医薬品使用促進策も追い風となって自社製品が伸長した。特に医療用医薬品は主力の抗真菌剤やアトピー性皮膚炎治療剤が好調に推移し、医療用医薬品原料はジェネリック医薬品の大型品目への新規納入が寄与した。一般用医薬品原料は血管収縮剤の原料調達難が解消して好調だった。電子・機能性材料は受託のディスプレー用原料が好調だった。
HBC事業は売上高が同0.1%増の52億44百万円、営業利益が37百万円の赤字(前年同期は12百万円の赤字)だった。化粧品原料が堅調に推移し、化粧品通信販売の主力製品も伸長したが、インバウンド需要による免税店向け商品が減速した。
化学品事業は売上高が同30.4%減の13億34百万円、営業利益が1億47百万円の赤字(同94百万円の赤字)だった。ライセンス契約終了に伴ってプリント配線板用「ルーセントカパー」シリーズなど新製品(全25品目)への切り替えを進めていることに加えて、中国を中心とするスマホ需要の減速も影響した。
食品事業は売上高が同5.6%減の8億36百万円、営業利益が12百万円の赤字(同3百万円の黒字)だった。関連会社製品は既存顧客の需要増で伸長したが、農産加工品と天然調味料品が低調だった。
■16年11月期第2四半期累計の利益予想を増額修正
5月18日に今期(16年11月期)第2四半期累計(12~5月)の利益予想を増額修正した。前回予想(1月14日公表)に対して営業利益を1億70百万円、経常利益を1億60百万円、純利益を80百万円増額した。修正後の予想は売上高が前年同期比0.0%減の275億円、営業利益が同24.6%減の3億円、経常利益が同38.5%減の3億円、純利益が同57.1%減の90百万円で減益幅が縮小する。
医薬・FC事業におけるジェネリック医薬品向け原料の新規納入や既存品の納入量増大が牽引する。通期予想については化学品事業の低迷など不安材料も勘案して前回予想(1月14日公表)を据え置いた。
■16年11月期は大幅増益予想、第2四半期累計増額で通期も増額余地
今期(16年11月期)通期の連結業績予想(1月14日公表)は、売上高が前期(15年11月期)比1.0%増の560億円、営業利益が同51.9%増の8億50百万円、経常利益が同29.6%増の9億円、純利益が4億50百万円(前期は1億43百万円の赤字)としている。配当予想は前期と同額の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)で予想配当性向は45.0%となる。
医薬・FC事業はジェネリック医薬品の伸長を見込むが、16年4月予定の薬価改定の影響で厳しい環境も予想されるとしている。HBC事業はインバウンド需要や機能性表示食品制度に対応した新商品投入などで、一般用医薬品、化粧品、機能性食品が堅調に推移する見込みだ。
化学品事業は中国市場のスマホ販売鈍化など全体として厳しい環境だが、新製品拡販効果などでメルテックスの収益改善を見込んでいる。食品事業は輸入原材料価格などコスト上昇圧力が強いが、商品開発効率化、生産コスト低減、既存原料の拡販などに取り組む。
通期会社予想に対する修正後の第2四半期累計進捗率は売上高49.1%、営業利益35.3%、経常利益33.3%、純利益20.0%となる。やや低水準の形だが期初時点で下期偏重の計画であり、化学品事業の収益改善進展も考慮すれば通期も増額余地がありそうだ。
医薬・FC事業は後発医薬品の数量ベース普及率を80%以上に引き上げる政府の骨太方針が追い風となる。また韓国の大手メーカー向けに有機EL関連案件を受注したことも注目される。化学品事業はライセンス生産が終了して利益率が高い自社製品へシフトし、新製品拡販で来期(17年11月期)上期の黒字化想定としている。収益改善基調だろう。
■グループ中長期ビジョンおよび新中期経営計画を策定
創業111年を迎える25年11月期に向けて、グループ中長期ビジョン「Vision i-111」および新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)を策定した。
グループ中長期ビジョン「Vision i-111」では、基本戦略を、策揃え企業になる=Intelligent、ナンバーワン製品・事業に注力する=Innovative、海外市場への事業展開を図る=International、資本効率を意識した事業運営を行う=Investmentとして、数値目標には創業111周年25年11月期の連結売上高1000億円、ROIC10.0%以上を掲げた。
新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)では、これまで独立的に運営されていた事業部門をプロダクツごとのバリューチェーンに従って統合・運営するため、組織体系を4事業(医薬・FC事業、HBC事業、化学品事業、食品事業)に再構成し、数値目標には18年11月期売上高600億円、営業利益10億円、ROIC4.0%以上を掲げた。
医薬・FC事業(イワキ、岩城製薬)では、原料の選定から最終製品の提供までを「策揃え」で提供するほか、国内外の医薬関連企業との協業を通して、さらなる市場拡大に努める。
HBC事業(イワキ、アプロス)では、OEMやプライベート・ブランド製品の自社企画・提案を通して、国内の健康食品原料市場における高シェアを維持・拡大する。海外市場の開拓も推進する。化粧品通信販売では「シルキーカバーオイルブロック」の拡販を図る。
化学品事業(メルテックス)では、高い技術力・ブランド力を持つIチップ抵抗向けスズめっき「メルプレートSN」シリーズの世界市場シェアNO.1を確保するとともに、15年から販売開始した大型新製品のプリント配線板向け硫酸銅めっき「ルーセントカパー」シリーズのグローバルシェア拡大を図る。
食品事業(イワキ、持分法適用会社のボーエン化成)では、商品開発効率化、生産コスト低減、ボーエン化成における国産・高付加価値原料の受託加工強化などを推進する。海外展開に関してはハラル対応原料に特化したマーケティングを開始し、マレーシア、インドネシア、中近東諸国の市場開拓に注力する。
■株価は地合い悪化の影響受けたが切り返し
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で6月16日に178円まで水準を切り下げたが、2月の年初来安値173円を割り込むことなく切り返しの動きを強めている。
6月21日の終値183円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS13円33銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は3.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS514円23銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約62億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、2月安値173円、4月安値175円から下値を切り上げる形だ。3%台の予想配当利回りや0.4倍近辺の低PBRと指標面の割安感は強く、有機EL関連としても注目される。出直り展開だろう。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
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