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パシフィックネットは17年5月期の収益拡大期待、6月25日専門店Rmobileオープン
- 2016/6/23 08:01
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パシフィックネット<3021>(東マ)は中古パソコン・モバイル機器のリユースやデータ消去を展開するセキュリティサービス企業である。6月25日大阪市に中古モバイル買取・販売専門のRmobile(アールモバイル)日本橋店をオープンする。17年5月期はマイナンバー対応本格化などで収益拡大が期待される。株価は安値圏だが調整一巡して反発が期待される。なお7月15日に16年5月期決算発表を予定している。
■中古情報機器のリユース・データ消去などを展開
中古パソコン・モバイル機器のリユースやデータ消去を展開するセキュリティサービス提供企業である。パソコン、タブレット端末、スマホなど中古情報機器の引取回収・販売事業を主力として、レンタル事業も展開している。主要仕入先のリース・レンタル会社や一般企業からの引取回収強化、生産性向上、業務プロセス効率化などで収益力を高めている。
旗艦店「PC-NETアキバ本店」など全国主要都市に10店舗を展開し、インバウンド需要対応で15年5月期に7店舗を免税店化した。6月25日には中古モバイル買取・販売専門店としてRmobile(アールモバイル)日本橋店(大阪市)をオープンする。
■データ消去・処分サービスなどセキュリティ体制に強み
全国主要都市の引取回収拠点や、ISO27001(ISMS)およびプライバシーマークに準拠した情報漏洩防止のセキュリティ体制に強みを持っている。IT機器データ消去・処分サービスではマイナンバー制度のガイドラインに完全対応し、データ消去証明書発行サービスも行っている。企業や官公庁のセキュリティ意識やコンプライアンス意識の向上を背景として中古情報機器の入荷台数が増加し、データ消去サービスなども奏功して顧客カバー率が一段と広がっている。
15年5月には電子記録メディア破壊機メーカーの日東造機から、オンサイト・オフサイトデータ物理破壊消去サービスの最優秀会社として「Crush Box プラチナサービスリセラー」の第1号に認定された。
マイナンバー完全対応データ消去サービスに関しては、15年12月LCMサービス業界大手の都築テクノサービスとパートナーシップ締結、16年1月米国方式のハードディスク破壊サービス(NSA/DoD準拠のV字型破壊)を開始した。
■買取・回収サービスを強化
14年10月に日本初のIT機器処分管理Webサービス「P-Bridge」の無償提供を開始し、15年10月には特許を取得した。ソリューション・プラットフォームと位置付けて、16年1月には「P-Bridge」と情報システム部門向けWEBメディア「ジョーシス」を連携して双方の会員アカウントを共通化した。
15年12月にはiPhoneおよびiPadの個人向け買取サービスを強化するため直営店での店頭買取に加えて、専用Webページ「R-mobile」を設置して買取受付を開始した。
■リユースの社会的取り組みを強化
14年11月には、Windowsクラスルーム協議会の「Windowsクラスルーム包括プログラム」のサービスメニューとして「教育機関のお客様向けECOサービス」を開始した。教育現場におけるICT機器導入時・処分時のコスト削減サービスや、ICT機器処分時の情報漏洩などセキュリティリスクを軽減するサービスを教育機関向けに提供する。
15年7月には特定非営利活動法人.sopa.jpと、子どもの学習支援と企業の使用済みパソコンの最活用を行うCSRプログラム「リユースforキッズ」を開始し、環境省の「平成27年度使用済製品等のリユースに関するモデル事業」として採択された。
■周辺領域への事業展開も推進
中期成長に向けて、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応した新たなレンタル市場・リユース市場・周辺事業への展開も推進している。
15年10月には光通信<9435>と合弁会社2B(トゥー ビー)を設立してBtoB専門MVNO(仮想移動体通信事業者)事業に進出した。出資比率は当社51%、光通信49%である。16年1月には法人向け通信サービス「Bizmo」第2弾として最新モバイル端末の商品ラインナップを拡充した。
15年11月にはドローン(無人航空機)の法人向けレンタルを開始した。ドローンの世界トップシェアメーカーであるDJI社製の最新モデル「ファントム3」を貸し出す。また企業のマイナンバー対策をサポートする「マイナンバー安心パック」を開始した。16年3月にはthisis(東京都)と協業してレンタルアート(法人向けにインテリアとして展示する絵画をレンタルするサービス)を開始した。
■中古情報機器の流通量の影響を受けやすい収益構造
15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)11億50百万円、第2四半期(9月~11月)10億86百万円、第3四半期(12月~2月)10億52百万円、第4四半期(3月~5月)12億03百万円、営業利益は第1四半期1億19百万円、第2四半期32百万円、第3四半期36百万円、第4四半期40百万円だった。
中古情報機器の流通量の影響を受けやすい収益構造だ。15年5月期の売上総利益率は46.7%で14年5月期比4.6ポイント低下、販管費比率は41.7%で同2.6ポイント低下、ROEは9.7%で同0.8ポイント低下、自己資本比率は62.8%で同6.1ポイント低下した。配当性向は45.4%だった。配当については継続的な利益還元を基本としたうえで業績連動型の配当方式を採用し、当期純利益の30%以上を配当性向の目安として決定することを基本方針としている。
■16年5月期第3四半期累計は減収減益
前期(16年5月期)第3四半期累計(6月~2月)は前年同期比1.7%減収で、同66.3%営業減益、同61.5%経常減益、同60.9%最終減益だった。
14年4月「WindowsXP」サポート終了に伴う入れ替え需要の反動減や新品パソコン価格高止まりで国内ビジネス系パソコン出荷台数が減少し、企業等からのビジネス系使用済み情報機器の排出台数が減少した。減収に伴って売上総利益は同8.1%減少し、売上総利益率は44.7%で同3.1ポイント低下した。販管費比率は42.8%で同0.7ポイント上昇した。
セグメント別動向を見ると、引取回収・販売事業は売上高が同5.3%減の27億02百万円、営業利益が同97.5%減の4百万円だった。中古モバイル機器は好調だったが、使用済みパソコンの入荷減少が影響した。レンタル事業は営業強化策が奏功して売上高が同21.8%増の5億30百万円、営業利益が同3.9倍の58百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期10億70百万円、第2四半期10億90百万円、第3四半期10億72百万円で、営業利益は第1四半期5百万円、第2四半期25百万円、第3四半期33百万円だった。
■16年5月期通期は増収増益予想、17年5月期の収益拡大期待
前期(16年5月期)通期の連結業績予想(7月15日公表)は売上高が前々期(15年5月期)比11.3%増の50億円、営業利益が同36.3%増の3億10百万円、経常利益が同29.9%増の3億18百万円、純利益が同16.7%増の2億12百万円としている。配当予想(7月15日公表)は前期比3円増配の年間19円(期末一括)としている。予想配当性向は46.2%となる。
展示会出展やWebプロモーション強化など顧客拡大策・営業強化策を継続実施し、中古モバイル販売の拡大、データ消去や消去証明書サービスの強化の効果も見込んでいる。通期会社予想に対する第3四半期累計進捗率は売上高64.6%、営業利益20.3%、経常利益24.5%、純利益28.8%と低水準のため下振れに注意が必要だが、今期(17年5月期)はマイナンバー対応本格化やビジネス系パソコン入れ替え需要の反動減一巡などで収益拡大が期待される。
■中期経営計画で18年5月期ROE10%以上目標
15年7月策定した中期経営計画「VISION2018」では、次の3ヶ年を「持続的成長・高い収益性を可能とする新たな事業モデルへのステップ」と位置付けて、目標値に18年5月期売上高65億円、営業利益6億円、営業利益率9.2%、ROE10.0%以上を掲げた。また東証1部への市場変更も目指すとしている。
成長に向けた基本戦略は、競争優位確立と営業マーケティング強化による顧客拡大、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応したレンタル市場・リユース市場・周辺事業の創出と展開、レンタル事業拡大とリユース事業との相乗効果の発揮、戦略実行力の強化と自律型組織・人財への変革としている。
■株価は安値圏だが調整一巡して反発期待
株価の動きを見ると、5月期末の配当権利落ちや地合い悪化の影響で6月17日に安値圏486円まで調整する場面があった。ただし2月の年初来安値445円まで下押すことなく切り返す動きだ。
6月22日の終値515円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS41円15銭で算出)は12~13倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間19円で算出)は3.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS371円92銭で算出)は1.4倍近辺である。時価総額は約27億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、500円近辺が下値支持線の形だ。教育IT関連やサイバーセキュリティ関連のテーマ性もあり、調整一巡して反発が期待される。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)