【編集長の視点】ナノキャリアは主力パイプライン臨床試験の開発地域拡大を買い直して急反発

 ナノキャリア<4571>(東マ)は、寄り付きの買い気配から147円高の1145円と買い進まれ急反発している。前日22日11時30分に発表した同社の主力パイプラインのミセル化ナノ粒子「NC-6004」の臨床試験の開発地域拡大を見直しディフェンシブ関連のバイオ株買いが再燃している。

 前日後場は、同材料発表で1098円高値まで急伸し、大引けでは、全般相場伸び悩みの影響で反落したが、その同高値も上抜いている。テクニカル的にも、今年4月につけた年初来高値2095円から日柄で約3カ月、値幅でも54%の下値調整となっており、日柄・値幅調整十分として下げ過ぎ訂正期待を高めている。

■「NC-6004」開発のEU拡大に向け規制当局に申請資料を提出

 同社は、東京大学の片岡一則教授や東京女子医科大学の岡野光夫教授らにより研究されてきたミセル化ナノ粒子技術による医薬品の開発を目的に設立された創薬ベンチャーで、医薬品を封入した同粒子が、静脈内投与されると血中に薬物が長時間循環し効果が持続する薬物キャリアになるとともに、がん組織などへの病変部へ集積し標的にすることを可能とし、難治性疾患の有望な薬物治療法と評価されている。

 このうち「NC-6004」は、日本、米国、欧州など23カ国で特許を取得しアジア地域での膵臓がんの第Ⅲ相臨床試験、国内では頭頸部がんの第Ⅰ相臨床試験、米国で非小細胞がんなどを対象疾患とした第Ⅱ相臨床試験、頭頸部がんを対象疾患として第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験などを進めている。前日22日は、この米国で進めている臨床試験の開発地域にEU(欧州連合)地域を追加して拡大するために、EU地域の規制当局に申請資料を提出したと発表した。また「NC-4016」は、米国で固形がんの第Ⅰ相試験、「NC-6300/K-912」は、日本で固形がんの第Ⅰ相試験、「NK105」は、転移・再発乳がんを適用対象に第Ⅲ相試験の国際共同試験が進められている。この主要4パイプラインのほかにも、同社独自の抗体/薬物結合型ミセルを用いた次世代型医薬品パイプラインの開発も推進されている。

 業績は、創薬ベンチャーとして前期にスタートした新規臨床試験や同試験の拡大、新規パイプラインの開発などで研究投資がいっそう加速化することから水面下推移が続いている。今3月業績は、売り上げ1億8200万円(前期比25.2%減)、営業利益34億5200万円の赤字(前期は20億8200万円の赤字)、経常利益34億1000万円の赤字(同23億8100万円の赤字)、純利益34億7500万円の赤字(同25億3700万円の赤字)と見込んでいるが、これが、同社の中長期的な企業価値の極大化につながることになる。

■上値抑制の25日線を上抜いて急騰特性に拍車を掛けリバウンド幅を拡大

 株価は、臨床試験の進展、特許取得などの材料が飛び出すたびに上ぶれ、今年4月には、核酸デリバリー技術で米国特許を取得したことでストップ高し年初来高値2095円まで6割高し、同高値からは約3カ月、25日移動平均線を上値限界に日柄調整をした。同調整の最終局面では962円までダメ押しをし高値から5割強の調整と、値幅調整終了も示唆した。上値を抑制してきた25日線突破も目前となっているだけに、25日線抜けから急騰特性の再発揮にいっそう拍車を掛け一段の戻りにトライしよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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