インフォマートは調整一巡して反発期待、16年12月期増収増益予想

 インフォマート<2492>(東1)は企業間電子商取引「BtoBプラットフォーム」各種システムを提供している。フード業界中心に利用企業数が増加基調であり、16年12月期増収増益予想である。株価は調整一巡して反発が期待される。

■BtoB(企業間取引)プラットフォームを運営

 企業間で行われている世界共通の商行為を電子化する企業間電子商取引プラットフォーム「BtoBプラットフォーム」を運営している。

 16年1月サービスブランドを「BtoBプラットフォーム」に変更し、新サービスは、企業間受発注業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注、食の安全・安心の商品仕様書DBであるBtoBプラットフォーム規格書、企業間請求書発行・受取業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム請求書、BtoB専用の販売・購買システムであるBtoBプラットフォーム商談とした。

 これに伴って16年12月期から事業セグメント区分を変更し、受発注事業(BtoBプラットフォーム受発注)、規格書事業(BtoBプラットフォーム規格書)、ES事業(BtoBプラットフォーム請求書とBtoBプラットフォーム商談)、その他(海外・メディア事業など)とした。

 現在はフード業界向けで、外食チェーンと食材卸の間の受発注をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注を主力サービスとしている。他業界BtoBとして美容業界向け「BEAUTY info Mart」や医療業界向け「MEDICAL info Mart」も展開している。子会社はインフォライズがクラウドサービス事業、インフォマートインターナショナル(香港)が海外「BtoBプラットフォーム」事業を展開している。

■利用企業数、取引高、月額システム使用料収入は増加基調

 15年12月期末時点の「FOODS info Mart」利用企業数(海外事業を除く)は、14年12月末比1868社増加の3万9028社(売り手企業が同1917社増加の3万1836社、買い手企業が同49社減少の7192社)だった。15年12月期末の利用事業所数は22万7243事業所で、フード業界全体の118万6312事業所(総務省「平成24年度経済センサス-活動調査」14年2月26日公表)に対するシェアは19.1%となった。

 そして「FOODS info Mart」における15年の年間システム取引高は14年比20.0%増の1兆1768億円となった。外食産業の仕入金額(13年外食産業市場規模23兆9046億円の30%を前提として算出した7兆1713億円)に占める割合は、13年の12.4%、14年の13.6%から、15年には16.4%に上昇した。

 15年サービス稼働したBtoB電子請求書プラットフォームの利用企業数は、15年12月末時点で4万8478社、さらに16年2月に5万社、16年5月に6万社、16年6月には7万社に達した。請求業務完全電子化に向けた新機能追加や他システムとの連携を推進し、16年9月に利用企業数10万社、電子請求の年間流通金額1兆円を目指す。

■業界標準化に向けたシステム連携を強化

 業界標準化に向けたシステム連携を強化している。15年1月には、全国の商工会議所・商工会等が運営する「ザ・ビジネスモール(B-MALL)」の事務局を務める大阪商工会議所と、全国の企業へ電子請求を推進することを目的として業務提携した。

 15年4月には企業の受発注・請求業務の生産性向上を提供するため、内田洋行<8057>やミロク情報サービス<9928>など19社24ソリューションが提供する販売管理・会計・店舗管理システムとのデータ連携を強化した。15年末現在で「BtoBプラットフォーム受発注」は約66社が提供する販売管理・会計・店舗管理など79システムとデータ連携している。

 企業の受発注業務、請求業務、会計処理などにおける生産性向上を追求し、BtoB標準プラットフォームを実現するため、他社とのシステム連携戦略を強化し、今後3年間で利用企業数100万社への普及を目指すとしている。なお「BtoBプラットフォーム」の16年1~3月のECO実績は、A4紙伝票枚数約7580万枚、杉の木5万996本のCO2削減効果となった。

■ストック型ビジネスモデルで収益拡大基調

 顧客企業はネット環境さえあれば月々低料金で最新サービスを利用できるため、電話やFAXからWebに切り替えて受発注する企業・店舗が増加基調だ。そして利用企業数増加に伴って月額課金のシステム使用料収入が増加するストック型ビジネスモデルである。

 四半期別業績推移を見ると、14年12月期の売上高は第1四半期11億57百万円、第2四半期12億06百万円、第3四半期12億66百万円、第4四半期13億48百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期4億17百万円、第3四半期5億46百万円、第4四半期5億57百万円だった。

 15年12月期の売上高は第1四半期13億10百万円、第2四半期14億04百万円、第3四半期14億32百万円、第4四半期14億86百万円、営業利益は第1四半期5億11百万円、第2四半期4億77百万円、第3四半期5億44百万円、第4四半期5億62百万円だった。

 売上総利益率は13年12月期65.7%、14年12月期77.0%、15年12月期72.9%である。14年12月期は既存プラットフォームの期間短縮による償却が13年12月期に完了したことも寄与した。また販管費比率は13年12月期40.4%、14年12月期38.0%、15年12月期35.7%である。販管費比率は増収効果で低下傾向である。

 ROEは13年12月期20.6%、14年12月期32.3%、15年12月期19.5%となった。自己資本比率は13年12月期65.3%、14年12月期70.8%、15年12月期85.2%と上昇している。配当性向は13年12月期48.9%、14年12月期49.1%、15年12月期56.3%だった。配当政策については個別業績に応じた配当性向50%を基本方針としている。

 15年12月期末のBtoBプラットフォーム受発注は、買い手企業が同248社増加の1706社、店舗数が同5010店舗増加の3万5314店舗、売り手企業が同1884社増加の2万8240社、そしてシステム取引高が同22.4%増の1兆1419億円だった。BtoB電子請求書プラットフォームは、契約社数(有料ID・PW発行ベース)が同588社増加の884社(受取モデルが同458社増加の657社、発行モデルが同130社増加の227社)だった。

 なお商品ブランド変更および事業セグメント変更に伴って、利用社数などの表記も変更する。変更後の表記によると業界は全業界(従来はフード業界中心)で、社数は無料利用を含む社数(従来は有料利用社数)で15年12月期実績は6万2039社、事業所は本社・支店・営業所・店舗(従来は無料利用社数を含む本社・支店・営業所・店舗)で15年12月期実績は28万167事業所、流通金額は全業界の受発注金額と請求書金額(従来はフード業界の受発注金額)で15年12月期実績は1兆3678億円となる。

■16年12月期第1四半期はソフトウェア償却費増加などで減益

 今期(16年12月期)第1四半期(1月~3月)連結業績は、売上高が前年同期比12.0%増の14億67百万円、営業利益が同7.5%減の4億72百万円、経常利益が同10.7%減の4億56百万円、純利益が同4.1%減の2億94百万円だった。

 ソフトウェア償却費の増加、人件費の増加、販促費の増加で減益だが、利用企業数増加基調に変化はなく2桁増収だった。売上総利益は4.8%増加したが、売上総利益率は70.6%で同4.8ポイント低下した。販管費は18.1%増加し、販管費比率は38.4%で同2.0ポイント上昇した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、受発注事業は売上高が同16.3%増の8億81百万円、営業利益が同16.5%増の4億45百万円、規格書事業は売上高が同25.6%増の2億69百万円、営業利益が同2.1%増の77百万円だった。いずれも利用企業数が順調に増加した。ES事業売上高が同7.2%減の2億91百万円、営業利益が46百万円の赤字(前年同期は60百万円の黒字)だった。請求書が大幅に増加したが商談システム利用料が減少した。その他は売上高が同2.2%増加の34百万円、営業利益が3百万円の赤字(前年同期は4百万円の赤字)だった。

 BtoBプラットフォーム全体の利用企業数(無料利用含む)は15年12月期末比5109社増加の6万7148社、事業所数は同4万9442事業所増加の32万9609事業所となった。

 受発注は買い手企業数が同130社増加の1836社、売り手企業が同373社増加の2万8613社となった。規格書は買い手機能企業数が同21社増加の390社、卸機能企業数が同16社増加の490社、メーカー機能企業数が同66社増加の6120社となった。請求書(無料利用含む)は企業数が同1万4363社増加の5万5086社(うち契約企業数受取側が同206社増加の863社、契約企業数発行側が同86社増加の313社、契約企業数合計が同292社増加の1176社)となった。商談は買い手企業数が同78社減少の6837社、売り手企業数が同114社減少の1838社となった。

■16年12月期通期は増収増益予想

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想(2月15日公表)は売上高が前期(15年12月期)比18.1%増の66億49百万円、営業利益が同9.4%増の22億92百万円、経常利益が同12.2%増の22億89百万円、そして純利益が同13.2%増の14億81百万円としている。配当予想は同4銭増配の年間11円80銭(第2四半期末5円90銭、期末5円90銭)で予想配当性向は51.7%となる。

 利用企業数増加や利用拡大によって月額課金システム使用料が伸長し、ソフトウェア償却費の増加、人件費の増加、販促費の増加などを吸収する。売上総利益率は同1.3ポイント低下の71.6%、販管費比率は同1.5ポイント上昇の37.2%の想定としている。

 セグメント別(連結調整前)の計画は、受発注事業の売上高が同14.3%増の38億38百万円、営業利益が同7.4%増の18億62百万円、規格書事業の売上高が同28.0%増の12億28百万円、営業利益が同8.3%増の3億55百万円、ES事業の売上高が同20.7%増の14億73百万円、営業利益が同70.5%増の90百万円、その他の売上高が同7.8%増の1億45百万円、営業利益が9百万円の赤字としている。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が22.1%、営業利益が20.6%、経常利益が19.9%、純利益が19.9%である。やや低水準の形だが利用企業数が増加基調であり、ストック型のビジネスモデルである。請求書の収益寄与も本格化して増収増益基調に変化はないだろう。

■中期経営計画では18年12月期の受発注5万社と請求書100万社目標

 16年2月策定の中期経営計画(16年12月期~18年12月期)では、基本方針を、フード業界における徹底的なシェア拡大(BtoBプラットフォーム受発注の利用拡大)、電子請求プラットフォームのデファクト化(BtoBプラットフォーム請求書の全業界展開、BtoB電子商取引プラットフォームの構築(15年12月期の調達資金をシステム開発へ重点投資)とした。

 フード業界における徹底的なシェア拡大では、18年12月期までの目標として利用企業数5万社(15年12月期実績3.9万社)およびシステム取引高・外食シェア2兆円・30%(同1.2兆円・16%)を目指す。電子請求プラットフォームのデファクト化では、18年12月期までの目標として、利用企業数100万社(同4.8万社)およびシステム取引高3兆円(同1261億円)を目指す。BtoB電子商取引プラットフォームの構築では、システムコンセプトとして全業界対応BtoBプラットフォーム(同フード業界ASPシステム)を目指す。

 目標値には18年12月期の売上高95億円(受発注47億28百万円、規格書15億44百万円、ES28億39百万円、その他4億29百万円)、営業利益36億03百万円、経常利益36億円、純利益24億23百万円を掲げた。配当については個別業績に基づく基本配当性向50%を継続し、17年12月期年間配当13円08銭、18年12月期の年間配当17円48銭を計画している。

 そして2020年までに、あらゆる業界にBtoBプラットフォームを提供し、グローバルなBtoBインフラ企業を目指すとしている。積極的な事業展開で中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株価は調整一巡して反発期待

 株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して6月16日に926円まで調整する場面があった。ただし4月の年初来安値899円まで下押すことなく、切り返しの動きを強めている。

 6月23日の終値960円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円34銭で算出)は41倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間11円80銭で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS145円16銭で算出)は6.6倍近辺である。時価総額は約623億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、900円近辺が下値支持線の形だ。調整一巡して反発が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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