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フォーカスシステムズは17年3月期先行投資負担だが受注は高水準、AI活用の共同研究開始
- 2016/6/27 06:53
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
フォーカスシステムズ<4662>(東1)は、公共関連・民間関連のシステム構築・保守・運用を主力としてセキュリティ機器関連事業も展開している。医療事業への人工知能(AI)活用に向けた共同研究も開始する。17年3月期は先行投資負担で減益予想だが受注は高水準である。株価はAI関連として急伸したが、地合い悪化の影響で急反落した。ただし指標面には割安感があり、市場が落ち着けばAI関連として再動意の可能性があるだろう。
■システム構築・保守・運用を主力としてセキュリティ機器関連事業も展開
公共関連・民間関連のシステム構築・保守・運用・管理サービスを主力として、セキュリティ機器関連事業も展開している。16年3月期の事業別売上高構成比は公共関連事業が34.8%、民間関連事業が59.1%、セキュリティ機器関連事業が6.1%だった。
顧客別に見ると、NTTデータ<9613>関連および日本IBM関連を主力として、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)<4739>関連、沖電気<6703>関連、ソフトバンク<9984>関連などが続いている。
■女性活躍推進法に基づく「えるぼし」の最上位認定を取得
5月13日には監査役の退職慰労金制度の廃止を発表した。監査役の報酬体系を見直し、退職慰労金を廃止して固定報酬に一本化することで、監査役の経営に対する独立性を高め、コーポレートガバナンスの一層の強化を図る。16年6月29日開催予定の定時株主総会終結の時をもって廃止する。
そして5月17日には、16年4月1日全面施行の女性活躍推進法に基づく厚生労働大臣認定「えるぼし」企業に認定されたと発表している。認定は基準を満たす項目数に応じて3段階あり、最も高い「3段階目」の最上位認定を受けた。
■中期成長に向けて対応領域拡大を推進
中期成長に向けた重点戦略として、需要が潤沢なインフラビジネス分野における技術者の育成、ノウハウ蓄積にも繋がる運用系業務分野におけるシェア拡大、業務アプリケーション分野における専門技術への取り組み強化による対応領域拡大を推進している。また民間関連事業では関東圏・近畿圏に加えて、東海圏での業務拡大に取り組んでいる。
15年7月には東京国税局に対するICT関連の技術支援等コンサルティング業務の提供開始を発表した。デジタル・フォレンジック技術と豊富な不正調査の経験を活かしたコンサルティングサービスを提供する。
15年9月にはベトナムの日系ソフトウェア開発会社であるインディビジュアルシステムズ(IVS)社への出資を決定した。現地当局の許認可等の取得を前提に当社出資比率は10%の予定としている。13年からオフショア事業での取引関係を続けてきたが、今回の出資によって協業関係を一段と強化する。
15年10月には富士ゼロックスのサービス提供会員制ポータルサイト「富士ゼロックスダイレクト」のプラットフォームを、企業内のIT環境を集約して各業務アプリケーションの全社横断的な運用を可能にするシステム共通基盤「intra-mart(イントラマート)」を用いて構築したと発表した。
15年10月にはエプソン販売と連携して、同社が販売するスマートヘッドセットMOVERIO Pro「BT-2000」と連動できるBeaconの提供開始を発表した。
15年12月には松久産業(福井県福井市)から、パケットログ収集・保管装置(監視・警告機能等搭載済み)「サイバーガーディアン・パケット(略称CGP)」(商標登録出願中)の供給を受け、機器販売および付帯する調査・解析サービス事業を構築すると発表した。収集・保管したログの調査・解析サービスは16年4月開始を予定している。
16年4月には、日立製作所<6501>のシステム運用に必要なあらゆる情報を関連付けて一元管理できるクラウドサービス「Hitachi Cloudアプリケーション運用ナビゲーションサービス」の販売パートナーになったと発表した。当社の強みであるintra-martとの連携導入も可能なため、システム構築から運用までをトータルにサポートする。
■医療事業への人工知能(AI)活用に向けた共同研究を開始
6月21日には、洛和会ヘルスケアシステム、UBIC<2158>(7月1日付で社名をFRONTEO(フロンテオ)に変更予定)および当社が、病院経営や医療現場の運営に関わる意思決定や判断支援など、医療事業分野に人工知能(AI)を用いるための共同研究を開始すると発表した。
■第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期35億83百万円、第2四半期37億03百万円、第3四半期35億90百万円、第4四半期42億05百万円、営業利益は第1四半期99百万円、第2四半期1億96百万円、第3四半期2億40百万円、第4四半期4億05百万円だった。
年度末にあたる第4四半期の構成比が高い収益構造だ。そして公共関連事業やセキュリティ機器関連事業が好調に推移して、営業損益は改善基調である。15年3月期の売上総利益率は14.0%で14年3月期比0.1ポイント上昇、販管費比率は7.7%で同0.1ポイント上昇、ROEは10.0%で同0.8ポイント上昇、自己資本比率は47.2%で同4.7ポイント上昇した。配当性向は29.3%だった。
■16年3月期は計画超の増収増益
前期(16年3月期)非連結業績は、前々期(15年3月期)比9.3%増収、同1.4%営業増益、同5.9%経常増益、同24.6%最終増益だった。受注が堅調に推移して売上高、利益とも計画を上回り、営業減益予想から一転して営業増益での着地となった。
売上総利益は同4.4%増加したが、売上総利益率は13.3%で同0.7ポイント低下した。販管費は同6.8%増加したが、販管費比率は7.6%で同0.1ポイント低下した。特別利益に投資有価証券売却益2億08百万円を計上した。ROEは10.4%で同0.4ポイント上昇、自己資本比率は49.6%で同2.4ポイント上昇した。
配当は年間16円(期末一括、普通配当12円50銭+記念配当3円50銭)とした。15年10月1日付株式2分割を考慮して年間32円に換算すると、前々期の年間25円(期末一括、普通配当10円+特別配当15円)に対して、実質的に7円増配となる。配当性向は30.0%である。
セグメント別に見ると、公共関連事業は売上高が同6.7%増の57億34百万円で営業利益(連結調整前)が同2.4%減の8億35百万円だった。社会保険関連や航空管制関連が増加したが、マイナンバー関連業務で想定していた規模の受注が得られず利益率が低下した。民間関連事業は売上高が同12.8%増の97億38百万円で営業利益が同13.1%増の11億87百万円だった。インフラ構築・運用サービス、ERP関連製品のカスタマイズなどが順調だった。セキュリティ機器関連事業は売上高が同6.1%減の10億09百万円で営業利益が同12.7%減の1億73百万円だった。
四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期35億42百万円、第2四半期39億52百万円、第3四半期42億02百万円、第4四半期47億86百万円、営業利益は第1四半期26百万円、第2四半期1億75百万円、第3四半期2億98百万円、第4四半期4億54百万円だった。
■17年3月期は先行投資負担で減益予想
今期(17年3月期)の非連結業績予想(5月13日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比3.1%増の170億円、営業利益が同16.1%減の8億円、経常利益が同19.0%減の7億70百万円、純利益が同33.7%減の4億90百万円としている。配当予想は記念配当を落として同3円50銭減配の年間12円50銭(期末一括)としている。予想配当性向は35.3%となる。
受注は高水準に推移するが、優秀な人材確保のための採用投資、より高付加価値をつけるための技術者への教育投資、ガバナンス強化を目的とした社内管理体制へのシステム投資および人的投資など、中期成長に向けた先行投資の影響で減益予想としている。純利益は前期計上した投資有価証券売却益一巡も影響する。ただし会社予想には保守的な印象も強い。上振れ余地があるだろう。
■株価は市場が落ち着けば再動意の可能性
株価の動き(16年3月4日付で東証2部から東証1部へ指定替え)を見ると、AI関連として500円台まで急伸したが、地合い悪化の影響で反落し、6月24日には412円まで下押す場面があった。
6月24日の終値438円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS35円39銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円50銭で算出)は2.9%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS535円58銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約71億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、指標面には割安感があり、市場が落ち着けばAI関連として再動意の可能性があるだろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)