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エイジアは高値圏から急反落したが売られ過ぎ感、17年3月期増収増益・連続増配予想
- 2016/6/27 06:44
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エイジア<2352>(東マ)はメール配信システムの大手である。eコマース関連分野を強化し、16年6月には新製品オートメーションツールなどの発売を予定している。17年3月期増収増益・連続増配予想である。株価は06年以来の高値圏から急反落したが売られ過ぎ感を強めている。好業績を評価して一旦はリバウンド局面だろう。
■メール配信などe-CRMシステム「WEBCAS」シリーズが主力
自社開発e-CRMシステム「WEBCAS」シリーズを提供するアプリケーション事業を主力として、システム受託開発やマーケティングコンサルティングなどのサービスソリューション事業も展開している。16年3月期の事業別売上高構成比はアプリケーション事業が84%、サービスソリューション事業が16%だった。
メール配信システム「WEBCAS e-mail」は顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性が強みである。通販企業、メーカー、生命保険、情報サービス会社など多様な業界の企業や官公庁に導入され、国内メール配信パッケージ市場でシェア1位である。
また「WEBCAS」シリーズは、メール配信システム「WEBCAS e-mail」を中心として、アンケートシステム「WEBCAS formulator」やメール共有システム「WEBCAS mailcenter」などをラインナップに抱えるe-CRMアプリケーションシリーズである。15年5月には「WEBCAS」シリーズ導入企業が2500社を突破した。
16年1月にはアマゾンウェブサービス(AWS)のパートナープログラム「AWSパートナーネットワーク(APN)テクノロジーパートナー」に認定された。
■「WEBCAS」シリーズの商品ラインナップを強化
中期成長戦略として「メールアプリケーションソフトのエイジア」から、販売促進・マーケティング支援分野に事業領域を拡大して「eコマースの売上UPソリューションを世界に提供するエイジア」への発展を目指し、クラウドサービス(ASP、SaaS)の強化、新製品・サービス開発の推進、サービスソリューション事業の拡大に取り組んでいる。
15年5月SMS配信システム「WEBCAS SMS」およびカンタンCRM「WEBCAS CRM」を開始、15年7月「WEBCAS」シリーズとWebコンテンツ制作をセットにしたWebキャンペーン運営支援サービス「WEBCASキャンペーン支援パック」を開始した。15年8月日本最大級のクラウドソーシングサービスを運営するランサーズのメール配信基盤としてメール配信システム「WEBCAS e-mail」クラウド版を提供した。
15年9月システムインテグレータの「SI Omni Channel Services」と「WEBCAS e-mail」を連携したオムニチャネルマーケティング・ソリューション開始、15年11月LINEビジネスコネクトを活用したセグメント抽出型メッセージ配信システム「WEBCAS taLk」を発売した。
16年4月地方創生関連施策の推進や検証をサポートするCRMシステム「WEBCAS地方創生応援パック」を発売、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)対応の「WEBCAS e-mail for AWS」を発売した。
■新製品マーケティングオートメーションツールを6月発売予定
新製品のBtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations(ウェブキャス・オート・リレーションズ)」の開発を進め、16年6月27日に販売開始を予定している。複雑化したデジタルマーケティングを簡単に実現して効果を高めるためのBtoC企業向けマーケティング・プラットフォームである。マーケティング活動を自動化するマーケティングオートメーション市場は、米国を中心に急速に拡大し、日本でも拡大が期待されている。
さらに「WEBCAS Auto Relations」の今後の開発戦略については、16年にはSTEP2としてチャネルの複数化・多様化、定性分析による顧客セグメント化、17年にはSTEP3として人工知能「将来予測エンジン」の搭載または連携、IOT技術を活用したビッグデータ対応を計画している。
■M&A・アライアンスも積極活用
M&A・アライアンス戦略では、12年4月ECサイト構築・運営事業拡大に向けてシステムインテグレータ<3826>と資本・業務提携、12年12月メールマーケティングコンサルティング事業拡大に向けてメールマガジン制作・運用支援のグリーゼと資本・業務提携、13年10月メールマガジン戦略立案・企画・制作・分析サービスのFUCAを連結子会社化、14年1月Webサイトソーシャル化支援サービスのフィードフォース社と業務提携した。
15年5月ソフトフロントやホオバルなど異業種各社と協業して女性の起業をサポートする「コロコニ・プロジェクト」を発足、15年11月NPS(Net Promoter Score)を活用した調査・コンサルティングサービスを展開するwizpraと業務提携、16年1月ダイレクトマーケティング専門エージェンシーであるフュージョンと業務提携した。
16年4月米国トレジャーデータ社の日本法人トレジャーデータが16年4月提供開始した「TREASURE DMP(Private Data Management Platform)」と「WEBCAS e-mail」が連携した。またCMS開発・販売のミックスネットワークと業務提携し、Web運営基盤ツール「SITE PUBLIS(サイトパブリス)」と「WEBCAS Auto Relations」を連携した。
6月1日には電通ダイレクトフォースとマーケティングオートメーションを活用したメールマーケティング支援サービスの共同提供を目的として業務提携したと発表している。
■デジタルポスト社と業務提携して新サービス
15年10月には「WEBCAS」シリーズと連携したDM送信サービスを実現するため、Webサービス「Digital POST」を提供するデジタルポスト社と業務提携した。デジタルポスト社は日本郵便のハイブリッド郵便サービスを事業化するため11年に設立され、ネットやアプリから郵便やDMを作成・配送できるユニークなサービスを提供している。
15年12月には「WEBCAS」シリーズの新サービスとして、インターネット上からDM(ダイレクトメール)やハガキ、手紙などの作成から郵送までを行えるDM配送サービス「WEBCAS DM」の発売を開始した。デジタルポスト社から技術供与を受けた。
■人工知能(AI)を活用した新サービス開発にも注力
15年10月、人工知能(AI)技術や自然言語解析技術を活用したマーケティングソリューションの共同研究・開発を目的として、人工知能型「顧客の声」分析エンジンを提供するメタデータと資本・業務提携した。
16年2月にはメタデータがAIを活用した高速マッチングエンジン「xTech(エックステック)」を販売開始した。実用性に乏しい機械学習アルゴリズム(ディープラーニング)や、処理が遅延しがちな従来型マッチングエンジンの問題を解決する超高速マッチングエンジンである。2社(サービス業界、人材業界)への納入が決定し、さらにEC業界、Fintsch分野においても提供を予定している。
16年6月には「WEBCAS」シリーズの新サービスとして、人工知能アルゴリズムを駆使した感性分析型テキストマイニングシステム「WEBCAS Sense Analyzer」を発売した。メタデータから技術供与を受けた。
■海外はマレーシアを強化
海外は15年12月、マレーシアでマーケティング支援業務を行うMarvelous International社を子会社化した。購買力の高い富裕層や中間所得層が拡大する成長市場マレーシアにおける事業を強化する。なお本資本・業務提携に伴い、12年12月にマレーシア市場での当社サービスの販売を目的に業務提携したCRESCERE社とのマレーシアにおける契約を終了するが、タイにおける業務提携は継続する。
■下期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期2億22百万円、第2四半期2億65百万円、第3四半期2億67百万円、第4四半期2億77百万円、営業利益は第1四半期14百万円、第2四半期51百万円、第3四半期54百万円、第4四半期59百万円だった。
下期の構成比が高い収益構造である。15年3月期のROEは12.4%で14年3月期比4.7ポイント低下、自己資本比率は79.0%で同0.6ポイント上昇した。配当性向は26.6%だった。利益配分については、新規事業投資や研究開発投資等に必要な内部留保は従来どおり行いつつ、配当金による利益配分を行っていくことを基本方針としている。
■16年3月期は2桁増収増益・連続増配
前期(16年3月期)連結業績は、前々期(15年3月期)比11.1%増収、同34.1%営業増益、同34.2%経常増益、同47.9%最終増益だった。利益率の高いクラウドサービスが好調に推移して計画超の2桁増収増益だった。配当は同3円増配の年間18円(期末一括)とした。配当性向は22.2%である。
売上総利益は同16.0%増加し、売上総利益率は65.4%で同2.8ポイント上昇した。販管費は同9.1%増加したが、販管費比率は44.5%で同0.8ポイント低下した。ROEは15.6%で同3.2ポイント上昇した。自己資本比率は81.3%で同2.3ポイント上昇した。
セグメント別に見ると、アプリケーション事業は売上高が同12.5%増の9億62百万円、売上総利益率が同3.0ポイント上昇の73.0%、営業利益(連結調整前)が同20.9%増の4億51百万円だった。新サービスリリースなどで好調に推移し、重点分野のクラウドサービス(ASP・SaaS)売上高は同19.0%増加の6億59百万円となった。
サービスソリューション事業は売上高が同4.3%増の1億82百万円、売上総利益率が同1.3ポイント低下の25.2%、営業利益が同50.9%減の6百万円だった。受託開発案件への対応を最小限にして、エンジニアリングリソースを新製品マーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations」の開発に注力した。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期2億51百万円、第2四半期2億90百万円、第3四半期2億83百万円、第4四半期3億21百万円で、営業利益は第1四半期25百万円、第2四半期73百万円、第3四半期55百万円、第4四半期86百万円だった。
■17年3月期増収増益・連続増配予想
今期(17年3月期)連結業績予想(5月10日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比10.4%増の12億65百万円、営業利益が同10.7%増の2億65百万円、経常利益が同11.2%増の2億70百万円、そして純利益が同11.8%増の1億80百万円としている。配当予想は同2円増配の年間18円(期末一括)で予想配当性向は23.8%となる。
BtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations」や、人工知能アルゴリズムを駆使した感性分析型テキストマイニングシステム「WEBCAS Sense Analyzer」など、新製品投入も寄与してアプリケーション事業が好調に推移する。セグメント別売上高の計画は、アプリケーション事業が同13.5%増の10億93百万円(クラウドサービスは同26.3%増の8億32百万円)、サービスソリューション事業が同5.5%減の1億73百万円としている。
投資・戦略的な出費計画として、クラウドサービス提供サーバー等のインフラ増強18百万円、ESOPによるモチベーション戦略21百万円、新卒採用を含めた人材投資23百万円、「WEBCAS e-mail for AWS」提供環境構築1百万円、マレーシア市場開発7百万円、合計約70百万円を計画している。先行投資費用を吸収して増収増益基調が期待される。
■株式付与ESOP信託を導入
5月10日に、従業員を対象とした従業員インセンティブ・プラン「株式付与ESOP」の導入を発表した。本制度の導入に伴って、当社が保有する自己株式27万2500株(16年3月31日現在)のうち3万6700株(約98百万円)を、第三者割当によって処分(株式付与ESOP口)する。
■株主優待制度は3月末に実施
株主優待制度については15年2月に新設を発表した。毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。15年3月期末から実施した。
■筆頭株主が異動
6月22日に筆頭株主の異動を発表した。フュージョンパートナーの所有割合が低下(異動前5月17日現在23.77%から、6月15日現在17.93%、6月20日現在4.87%)し、6月15日付でその他の関係会社に該当しないことになり、6月17日付で主要株主である筆頭株主に該当しないこととなった。
■株価は06年以来の高値圏から急反落だが売られ過ぎ感
株価の動きを見ると、06年以来の高値圏3300円台から急反落した。筆頭株主の異動が影響したようだ。さらに6月24日には地合い悪化も影響して1571円まで下押す場面があった。
6月24日の終値1861円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS87円65銭で算出)は21~22倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS556円33銭で算出)は3.3倍近辺である。時価総額は約69億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を一気に割り込んだ。ただし52週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。また日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が30%程度まで拡大して売られ過ぎ感を強めている。一旦はリバウンド局面だろう。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)