「離脱ショック」からのリカバリー・シナリオの一角に浮上!「第2の農業総合研究所」候補株にトライ余地=浅妻昭治
- 2016/6/27 09:45
- 編集長の視点
<マーケットセンサー>
想定外も想定外、大どてん返しを食らってしまった。英国の国民投票の結果である。6月24日の東京市場の寄り付き段階では日経平均株価は、EU(欧州連合)への残留支持派が優勢との世論調査が伝えられ続伸してスタートした。にもかかわらず、現地一部投票所の投票結果が、離脱支持派優勢に変わったと速報された途端に為替相場が、1ドル=99円台まで急速な円高となって急落、日経225先物取引には一時、サーキットブレーカーが発動される事態に陥り、大引けでは1286円安の1万4952円と今年2月の年初来安値を下抜いて2014年10月以来のおよそ1年8カ月ぶりの安値に突っ込んだからだ。
問題は、この株価急落と円高で「離脱ショック」をすべて織り込んだかどうかである。主要7カ国(G7)との政策協調はもちろん、麻生太郎財務相が示唆した円高阻止への日本単独の為替介入があるのかないのか、さらに離脱がどのように進むか、今後2年間かけて英国とEUとの交渉次第となり、この動向を見守りながら1000社以上、10兆円以上も現地投資している日本企業が、どうEU戦略を練り直すのか、7月10日に投開票日が迫った参議院選挙に英国の国民投票の影響が出るのか出ないのか、7月中旬から発表がスタートする3月期決算会社の第1四半期業績の動向を左右するのかしないのか、見極めなければならない難題は数知れない。
株式市場サイドでも、前週末24日の東証1部売買代金は、前日比2.1倍の3兆円超に膨らみ、値上がり銘柄がわずか6銘柄で99%超が値下がりし、年初来安値更新銘柄が36%超の716銘柄にのぼったが、これで追い証の恐怖感に捉われたパニック売りが一巡する「セリング・クライマックス」を通過したと即断するには、なお週明け以降の市場動向次第となりそうだ。このことは、逆に男性的に下げたからその分だけ相場のリカバリーも速いなどと予断することのリスクが大きいことも示唆している。
ただ、相場のリカバリーがどう進むかについては、いくつかのシナリオを想定することは許されるはずだ。前週末の株価急落で値幅調整は終了しだらだらと日柄調整の夏枯れ相場が続くケース、参議院選挙を境に「世直し相場」、「政策関連株相場」に火がつく展開、日銀の7月28日~29日開催の金融政策決定会合や臨時金融政策決定会合でETF(上場投信)などの資産買い入れ枠の増枠が決定され、黒田東彦日銀総裁の得意技のサプライズによる「御用金相場」がバズーカ・スタートするシナリオなどである。
そうしたリカバリー・シナリオの一角で、スケールは小さいくなるのは否めないが、注目したいのが新規株式公開(IPO)株の起爆力である。「上値にシコリがなく、値動きが軽い」といわれるIPO株のセールストークが、市場へのニューマネーの流入を誘引するケースである。今週29日には名古屋式モーニングサービスのコーヒーチェーン店を全国展開するコメダホールディングス<3543>(東1)、7月15日には無料通話アプリ大手のLINE<3938>(所属部未定)などの話題株のIPOが控えているからだ。直近IPO株のなかでも、前週末の株価急落のなかで農業総合研究所<3541>(東マ)とAWSホールディングス<3937>(東マ)が揃ってストップ高、市場参加者の希望をつないだのである。
このうち農業総合研究所のストップ高は、特筆ものである。同社株は、6月16日に公開価格1050円でIPOされ、初値は公開価格比78%の1870円でつけ初値倍率は中程度にとどまったが、IPO初日に初値比ストップ高で引けたあと4営業日連続でストップ高、23日に反落したものの、前週末24日には切り返してストップ高した。IPO以来の7営業日のうち、ストップ高は実に6日間にわたり、前週末日終値4380円は、公開価格に比べて4.1倍の大化けとなった。
この高人気は、同社の資金吸収額が約4億5000万円と小規模にとどまり、農家の直売所事業を展開する農業の産業化をサポートする独自のビジネスモデルが評価された結果である。この直売所は、大手スーパーの直売コーナーとしてすでに570店舗に出店され、全国のスーパーマーケットの1万7463店舗の3.3%に導入されているが、成長戦略として大手スーパーとの取引拡大を進めて潜在マーケットを掘り起こす「都市型農産物流通プラットフォーム」として新たな社会インフラになる可能性があるためだ。
またこの成長可能性は、同社の及川智正社長が、今年2月に独立行政法人中小企業基盤整備機構が主催する表彰制度「Japan Venture Aawrds(JVA)2016」で、「儲からない」と言われてきた農業を魅力的なビジネスに発展させたことを評価されて経済産業大臣賞を受賞したことでも明らかである。同社の株価がこのまま突っ走るなら、「第2農業総合研究所」探しとして既上場の類似会社に狙いを定めることが投資セオリーとして成立することになり、農業関連株がクローズアップされることになるが、ここはIPO関連株としてかつてJVAを受賞した経歴のある既上場会社に注目したい。
同賞は、大臣賞のほか中小企業庁長官賞、奨励賞などの数々の表彰制度があり、革新的で潜在成長力の高い事業や地域の活性化に貢献する事業を展開する企業の経営者を授賞対象者としてきており、一部では諺でいう「十神童十五で才子二十過ぎれば只の人」の買いかぶりのケースもなくはないが、まだ頑張っている受賞企業は、農業総合研究所の株価急騰でその成長可能性が見直され、リバウンド相場をアシストする展開も期待されることになる。(本紙編集長・浅妻昭治)