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アドアーズは調整一巡して戻り歩調、17年3月期大幅営業増益予想で収益改善期待
- 2016/6/28 08:07
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アドアーズ<4712>(JQS)は、アミューズメント施設運営の総合エンターテインメント事業を主力として、不動産事業なども展開している。17年3月期は介護事業休止も寄与して大幅営業・経常増益、最終黒字化予想である。オリーブスパと業務提携した店舗サブリース事業の寄与も期待される。株価は調整一巡して戻り歩調だ。
■Jトラストグループで総合エンターテインメント事業や不動産事業を展開
13年2月に、親会社Jトラスト<8508>グループで戸建て住宅分譲や商業建築など展開するキーノート、アミューズメント施設向け景品製作・販売など展開するブレイクを子会社化した。Jトラストグループ内で、総合エンターテインメント事業、不動産事業、商業施設建築事業の中核を担う位置付けである。
アミューズメント施設を運営する総合エンターテインメント事業は、利益率の高いメダルゲームジャンルを注力分野として収益改善を目指し、新業態開発やゲーム景品製造も強化している。不動産事業では一戸建分譲事業のエリア拡大や不動産アセット部門の強化を推進している。
総合エンターテインメント事業のアミューズメント施設運営部門の16年3月期末店舗数(ブレイク1店舗含まずアドアーズ店舗のみ)は50店舗(うちコラボ店7店舗)で、ゲームジャンル別売上構成比はメダルゲーム35.5%、クレーンゲーム28.6%、プリクラ2.4%、アーケードゲーム20.1%、その他(コンテンツ関連含む)13.4%だった。不採算店閉鎖による店舗数減少で減収傾向だが、コラボ店舗増設などで収益力向上を推進している。なお16年4月に2店舗を閉店して4月末時点の総店舗数は49店舗となった。
14年9月韓国JBアミューズメント(JBA)の第2位株主となった。韓国・済州新羅ホテルでカジノ事業を行うマジェスターを含むJBAグループと協力関係を構築し、アミューズメント事業におけるシナジー創出や事業拡大を目指す。
6月20日には、香港特別行政区に当社の孫会社となるブレイク・アジア(中国名:布雷克有限公司)の設立が完了したと発表した。アジア地域における日本キャラクターの人気が根強いため、日本ライセンス商品の販売を拡大し、総合エンターテインメント事業の業容拡大を目指す。
■介護事業は休止
14年11月に通所介護事業の日本介護福祉グループを連結子会社化して介護事業に参入したが、15年8月に同社株式の譲渡と介護事業の休止を発表した。競争激化などで通所介護事業の業績改善の兆しが見込めないため、同社の創業者である藤田英明氏に全株式を譲渡して介護事業を休止した。なお15年12月、藤田英明氏に対して損害補償請求訴訟を東京地方裁判所に提起している。
■オリーブスパと業務提携
16年3月、首都圏中心に全国34拠点(16年2月末現在、海外1店舗含む)でリラクゼーションサロン「OLIVE SPA」等を運営するオリーブスパ(オリスパ社)と、オリスパ社の店舗開発、出店時の内外装工事、店舗サブリース、オリスパ店舗チケットを活用した販促活動に関して業務提携した。
店舗リース事業による収益強化、子会社キーノートの商業施設建築事業の拡大、株主優待制度導入などオリスパ社のブランド力を活かした販促活動が可能になるとしている。
■15年3月期は介護事業連結で営業損益悪化
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期56億85百万円、第2四半期60億97百万円、第3四半期61億04百万円、第4四半期55億13百万円、営業利益は第1四半期3億60百万円、第2四半期3億52百万円、第3四半期1億10百万円、第4四半期1億58百万円の赤字だった。
第4四半期の営業損益悪化は介護事業の連結化も影響した。また15年3月期のROEは4.1%で14年3月期比4.8ポイント低下、自己資本比率は47.8%で同5.4ポイント低下した。配当性向は60.4%だった。利益還元については、将来必要となる設備投資や投資資金とのバランスを総合的に勘案したうえで、利益還元の充実を図っていくことを基本方針としている。
■16年3月期は減収減益、減損損失計上で最終赤字
前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比4.3%減の223億96百万円、営業利益が同12.9%減の5億78百万円、経常利益が同8.0%減の5億07百万円、そして純利益が12億53百万円の赤字(前々期は4億61百万円の黒字)だった。
アミューズメント施設運営部門の店舗数減少および既存店減収、商業施設建築事業の大型施工案件受注時期ズレ込み、15年8月の介護事業休止などで減収・営業減益・経常減益となり、介護事業休止に伴う減損損失計上、アミューズメント施設運営部門における店舗関連資産の減損損失計上、介護事業休止に伴う繰延税金資産取崩、その他法人税等調整額の計上で最終赤字だった。
売上総利益は同5.4%減少し、売上総利益率は14.2%で同0.2ポイント低下した。販管費は同3.5%減少したが、販管費比率は11.7%で同0.1ポイント上昇した。特別利益では固定資産売却益2億13百万円および関係会社株式売却益1億54百万円を計上したが、特別損失では減損損失が増加(前々期77百万円計上、前期16億85百万円計上)し、投資有価証券評価損51百万円も計上した。ROEはマイナス11.9%で同16.0ポイント低下、自己資本比率は46.1%で同1.6ポイント低下した。配当は同1円減配の年間1円(期末一括)とした。
セグメント別に見ると、総合エンターテインメント事業は売上高が同2.3%減の147億89百万円、営業利益(連結調整前)が同19.7%減の6億93百万円だった。コラボ店舗3店舗(うち1店舗は期間限定)を新規開設したが、ゲームセンター市場の減退、不採算店舗閉店による店舗数減少、メダルゲームジャンルやプライズジャンルの落ち込み、アミューズメント景品・製造販売部門における円安による製造原価上昇やオリジナル商品の苦戦などで減収減益だった。アミューズメント施設運営部門の16年3月期末店舗数(ブレイク1店舗含まずアドアーズ店舗のみ)は50店舗(うちコラボ店7店舗)で、既存店売上は96.6%だった。
不動産事業は、売上高が同6.1%増の61億92百万円となり、営業利益が同19.1%増の4億93百万円だった。不動産アセット部門は前期に都心エリアの一部保有不動産を売却した反動で減収だが、一戸建分譲部門が横浜支店開設によって取扱件数が順調に増加し、東京の城南エリアや大阪の北摂エリアにおいても販売物件引き渡しが安定的に推移した。一戸建分譲部門の引渡件数は同26件増加の111件だった。
商業施設建築事業は大型施工案件受注時期がズレ込み、売上高が同56.0%減の7億69百万円、営業利益が同93.2%減の8百万円だった。介護事業(15年3月期第4四半期から連結、15年8月事業休止)は売上高が6億08百万円、営業利益が1億10百万円の赤字、その他の売上高が36百万円、営業利益が10百万円の赤字だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期54億74百万円、第2四半期56億84百万円、第3四半期54億08百万円、第4四半期58億30百万円、営業利益は第1四半期11百万円、第2四半期3億37百万円、第3四半期1億36百万円、第4四半期94百万円だった。
■17年3月期は大幅増益予想で収益改善期待
今期(17年3月期)の連結業績予想(5月10日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比1.8%減の220億円、営業利益が同38.2%増の8億円、経常利益が同37.9%増の7億円、純利益が3億円(前期は12億53百万円の赤字)としている。介護事業休止などで減収だが、関連費用も減少するため大幅営業増益・経常増益予想である。純利益は減損損失が一巡して黒字化予想である。配当予想は同1円増配の年間2円(期末一括)で予想配当性向は92.7%となる。
セグメント別計画は、総合エンターテインメント事業の売上高が同1.5%減の145億70百万円、営業利益(連結調整前)が同19.8%増の8億30百万円、不動産事業と商業施設建築事業の合計の売上高が同4.9%増の73億円、営業利益が同15.8%増の5億80百万円、その他(店舗サブリース)の売上高が1億30百万円、営業利益が20百万円としている。
総合エンターテインメント事業は、50周年記念イベントによる既存業態の認知度向上、自社開発メダルゲーム機の導入、クレーンゲームジャンルにおけるマシン増台、コラボ店舗のドミナント出店、香港進出による販路拡大などに取り組む。不動産事業および商業施設建築事業は一戸建分譲部門の事業規模拡大、商業施設建築の大型案件受注に取り組む。一戸建分譲部門の引渡件数は同9件増加の120件の計画としている。
なお新規事業として店舗サブリース事業を開始する。業務提携したオリーブスパの店舗開発・出店準備に対して、当社の店舗開発ノウハウや情報網を活用し、内外装工事を含めた準備に加え、物件を店舗サブリースでオリーブスパに提供する。
■アミューズメント施設5月既存店売上は3ヶ月連続のプラス
アミューズメント施設の月次既存店売上高(前年比、速報値)を見ると、16年5月は100.9%で、3ヶ月連続の前年比プラスだった。クレーンゲームジャンルにおけるアドアーズ限定商品の多数入荷効果などが牽引した。
■中期経営計画で18年3月期ROE8%目標
15年5月策定の中期経営計画では、目標数値として最終年度18年3月期売上高330億円(アミューズメント事業148億円、不動産事業・商業建築事業80億円、介護事業102億円)、営業利益17億円、経常利益14億円、純利益9億50百万円、ROE8%を掲げている。さらに20年3月期には売上高410億円、営業利益29億円、経常利益23億円、純利益14億円を目指すとしている。
中期戦略として、総合エンターテインメント事業では自社コンテンツ保有、VRやARなど新たな遊びの活用、20年に向けたインバウンド施策強化、不動産事業・商業建築事業では一戸建分譲部門における自社施工比率の向上と「KEY STYKE」ブランドの確立、新規事業の店舗サブリース事業ではオリーブスパ以外の新規事業会社を対象とする展開も検討する。グループ連携強化も奏功して中期的に収益拡大が期待される。
■株主優待制度を導入、毎年3月末に実施
3月8日に株主優待制度の導入を発表した。毎年3月末日現在で、株式2000株(2単元)以上保有株主を対象として、16年3月期末から実施した。
優待内容は保有株数に応じて、業務提携先のオリーブスパが首都圏中心に運営するリラクゼーションサロン「OLIVE SPA」および「PANTHEON」の全店舗(16年2月末現在24店舗)で利用できるアロマオイルトリートメント120分ボディコース(2万円相当分)のサロンチケットを贈呈する。
■株価は調整一巡して戻り歩調
5月25日に「資本準備金の額の減少ならびに剰余金処分および期末配当に関するお知らせ」をリリースした。繰越利益剰余金の欠損額を補填し、財務内容の健全化と早期の配当の回復を目的とするもので、資本準備金の額を減少してその他資本剰余金に振り替える。さらに繰越利益剰余金に振り替えて欠損補填に充当する。純資産の部の勘定科目振替のため純資産に変動はない。効力発生日は6月29日予定である。
株価の動きを見ると、100円~110円近辺でのモミ合いから上放れの動きを強めている。6月23日には129円まで上伸する場面があった。
6月27日の終値119円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS2円20銭で算出)は54倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間2円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS69円08銭で算出)は1.7倍近辺である。時価総額は約166億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。調整一巡して戻り歩調の展開だろう。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)