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ティー・ワイ・オーは16年7月期減益予想だが受注拡大、期末一括で予想配当利回り3%台
- 2016/6/29 08:47
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ティー・ワイ・オー<4358>(東1)はTV-CM制作の大手である。16年7月期は低利益案件などで減益予想だが受注は拡大基調である。新規事業としてPR業務への進出も発表した。戦略的M&Aや新規事業も寄与して中期成長が期待される。株価は地合い悪化も影響して安値圏だが、7月期末一括で3%台の予想配当利回りも注目され、調整一巡して反発が期待される。
■TV-CM制作の大手
TV-CM制作の大手である。広告事業(広告代理店向けTV-CM企画・制作およびポスト・プロダクション業務、広告主向けWEB広告およびプロモーションメディア広告の企画・制作、クロスメディア広告業務)を主力として、映像関連事業(アニメーションおよびミュージックビデオなどの企画・制作)も展開している。
6月10日には新規事業としてPR事業を開始(16年10月予定)すると発表した。クライアントから引き合いの多いPR業務を事業化(広報コンサルティング関連業務、メディアリレーションズ関連業務、危機管理広報関連業務、ステークホルダー向け業務など)し、広告・広報全般のコミュニケーション領域をワンストップで包括提供する。中期的に売上高30億円、営業利益3億円程度(営業利益率10%)を目指す。
■戦略的M&Aを積極推進
中期成長戦略として、ブランディングやセールスプロモーションなどの分野を中心に、一定規模以上の企業を対象として戦略的M&Aを積極推進する方針を打ち出している。民事再生中のスカイマークに対しては、投融資は行わないが、ブランド再生に関する業務支援を行う。
15年3月海外事業統括管理会社としてシンガポールにTYO-ASIAを設立し、15年7月インドネシアの広告会社The First Editionの代表Uli氏と合弁会社TYO FIRST EDITION(TYO-FE)を設立した。アジアにおける戦略的M&Aの第一弾としてThe First Editionの事業を合弁会社に順次継承していく。
15年8月ケー・アンド・エル社(K&L社)が実施する第三者割当増資を引き受けて連結子会社化した。K&L社はグラフィック領域を中心に大手広告主案件を長期に手掛けるクリエイティブ・エージェンシーで、中国やインドなどアジア地域へも事業進出している。
15年9月には、グループ会社として三浦武彦氏を代表とする100%子会社ミウラ・アンド・カンパニーを設立した。また15年11月サニーサイドアップのスピンオフベンチャー企業ENGAWA社(えんがわ社)が実施する第三者割当増資を引き受けた。ENGAWA社はジャパン・ブランド確立を目指す事業、そのテーマから派生する複数の事業を統括する会社として設立され、高いジャパンクオリティを備えた商品・サービスの発掘・広報・販路開拓などを支援するプロジェクト「OMOTENASHI SELECTION」の継続実施が決定している。
15年12月には連結子会社のK&L社が、同社連結子会社(当社孫会社)の凱立広告(上海)を通じて、シンガポールに新会社(当社における曾孫会社K&L CREATIVE ASIA)を設立した。
■案件ごとの採算性が影響、受注は拡大基調で規模も拡大
15年7月期の四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期52億99百万円、第2四半期72億97百万円、第3四半期69億11百万円、第4四半期88億86百万円、営業利益は第1四半期3億38百万円、第2四半期3億83百万円、第3四半期6億65百万円、第4四半期4億98百万円だった。
案件ごとの採算性が影響する収益構造だが、受注は電気・情報通信、自動車、飲料、衣料などの分野を中心として拡大基調である。また広告主直接取引の受注が大幅増加して、案件規模も拡大しているようだ。
15年7月期の売上総利益率は17.5%で14年7月期比0.2ポイント低下した。販管費比率は10.9%で同0.3ポイント低下した。ROEは21.6%で同8.3ポイント上昇、自己資本比率は38.2%で同0.8ポイント上昇した。配当性向は27.8%だった。
■16年7月期第3四半期累計は増収減益
今期(16年7月期)第3四半期累計(8~4月)の連結業績は、売上高が前年同期比9.9%増の214億44百万円、営業利益が同24.4%減の10億48百万円、経常利益が同29.8%減の9億54百万円、純利益が同42.3%減の4億98百万円だった。受注が好調(同1.7%増の224億18百万円)で増収だが、第1四半期に発生した低利益案件の影響、M&A関連費用、新規連結子会社費用、連結子会社の業績不振などで減益だった。
売上総利益は同2.9%増加したが、売上総利益率は17.2%で同1.2ポイント低下した。販管費は同20.2%増加し、販管費比率は12.3%で同1.0ポイント上昇した。販管費にはM&Aによるのれん償却額61百万円が含まれている。第3四半期末の人員は同135人増加の895人となった。広告主直接取引部門の人員増強や新規連結などで大幅に増加した。なお四半期別の売上総利益率は第1四半期14.1%、第2四半期15.7%、第3四半期17.2%と改善傾向である。
営業外収益では受取利息が増加(前期0百万円、今期24百万円計上)したが、保険返戻金が減少(前期31百万円、今期4百万円)した。営業外費用では為替差損が増加(前期0百万円、今期31百万円)し、売上債権売却損が増加(前期16百万円、今期31百万円)した。特別利益では受取保険金1億03百万円が一巡した。特別損失では固定資産除却損が減少(前期51百万円、今期5百万円)した。
セグメント別に見ると、広告事業は売上高が同11.8%増の205億85百万円、営業利益(連結調整前)が同5.8%減の24億26百万円だった。広告代理店経由取引の受注は電気・情報通信、自動車、飲料、衣料を中心に好調だった。広告主直接取引は、案件の検収時期が第4四半期に集中する傾向があるが、新規連結子会社も寄与して増収だった。利益面では第1四半期の低利益案件が影響したが、第2四半期以降の売上総利益率は改善傾向である。
なお取引形態別に見ると、広告代理店取引は売上高が同5.5%増の151億38百万円で営業利益が同2.1%減の25億32百万円、広告主直接取引は売上高が同33.9%増の54億46百万円で営業利益が同6.7%減の1億30百万円だった。利益面では、広告代理店取引は第1四半期の低利益案件の発生、広告主直接取引はインドネシアにおける新会社の不振が影響した。主要顧客別売上高は電通向けが同21.1%増の66億03百万円、博報堂向けが同13.0%増の43億25百万円だった。
映像関連事業は、売上高が同21.1%減の8億59百万円となり、営業利益が同85.4%減の15百万円だった。アニメーション制作における案件規模縮小、前期の大型ライブ映像案件の一巡などで減収減益だった。なおアニメーション制作の低利益案件の作業終了で利益改善傾向としている。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期54億54百万円、第2四半期83億37百万円、第3四半期76億53百万円、営業利益は第1四半期92百万円の赤字、第2四半期5億円、第3四半期6億40百万円だった。営業損益は低利益案件の発生が影響した第1四半期をボトムとして改善基調である。
■16年7月期通期は増収減益予想
今期(16年7月期)通期の連結業績予想(2月26日に減額修正)は、売上高が前期(15年7月期)比5.7%増の300億円で、営業利益が同20.4%減の15億円、経常利益が同25.3%減の13億50百万円、純利益が同35.7%減の7億20百万円としている。配当予想(9月11日公表)は前期と同額の年間5円(期末一括)で予想配当性向は43.3%となる。
第1四半期の低利益案件の影響、人員増加による人件費の増加、M&A関連費用や新規連結子会社の不振などで減益予想である。ただし受注拡大基調のため増収予想である。通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高71.5%、営業利益69.9%、経常利益70.7%、純利益69.2%である。やや低水準の形だが売上総利益率が改善傾向であり、広告主直接取引案件の検収時期が第4四半期に集中する傾向があることも考慮すれば通期会社予想の達成は可能だろう。
■中期経営計画で17年7月期営業利益27億円目標
中期経営計画では目標数値として17年7月期売上高400億円、営業利益27億円を掲げ、株主還元として配当性向25%以上目標と株主優待の継続実施の方針を示している。
広告市場は拡大基調であり、国内TV-CM制作業界では当社を含む大手制作3社による寡占化傾向を強めている。国内景気回復や20年東京夏季五輪開催も追い風となるため、事業環境は中期的に良好だろう。戦略的M&Aや海外展開本格化も寄与して中期的に収益拡大が期待される。
■株主優待制度は毎年1月末に実施
15年10月に株主優待制度の一部変更(クオカード贈呈の保有株式数による条件および贈呈金額変更)を発表した。変更後の株主優待制度は、毎年1月31日現在の10単元(1000株)以上保有株主を対象として、クオカード(1000株以上保有株主に対して1000円相当、3000株以上保有株主に対して5000円相当、5000株以上保有株主に対して1万円相当)を贈呈する。
さらにTYOオリジナル株主優待(対象条件に変更なし)として、毎年1月31日現在の5単元(500株)以上保有株主を対象として、応募者の中から抽選で実施する。16年1月31日時点の株主から実施した。
■株価は調整一巡して反発期待
株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して安値圏160円~170円近辺のモミ合いからやや水準を切り下げた。ただし2月の年初来安値138円まで下押す動きは見られない。
6月28日の終値158円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS11円54銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は3.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS89円31銭で算出)は1.8倍近辺である。時価総額は約99億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、7月期末一括で3%台の予想配当利回りも注目され、調整一巡して反発が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)