- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 京写の17年3月期は大幅営業増益予想、指標面に割安感
京写の17年3月期は大幅営業増益予想、指標面に割安感
- 2016/6/29 08:42
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
京写<6837>(JQS)はプリント配線板の大手メーカーである。17年3月期は新規取引も寄与して大幅営業増益予想である。自動車ヘッドライトLED化や京都大学との次世代無線通信技術「カオスCDMA」共同研究も注目される。株価は地合い悪化の影響で安値圏だが売られ過ぎ感を強めている。指標面の割安感も強く反発が期待される。
■プリント配線板の大手メーカー
プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を収益柱として、実装治具関連事業も展開している。16年3月期の製品別売上高構成比は片面板44.2%、両面板42.4%、その他13.4%だった。
プリント配線板は防塵対策基板、高熱伝導・放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持ち、生産は国内、中国、インドネシアに拠点展開している。また実装治具関連事業も強化し、14年10月にはキクデンインターナショナルからフロー半田付け搬送キャリア事業を譲り受けた。
16年3月期の製品用途別売上高構成比は、自動車関連が28.5%、家電製品が24.2%、事務器が13.1%、映像関連が7.6%、アミューズメント関連が3.8%、その他が17.6%だった。幅広い用途と顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得し、LED照明関連の需要拡大も背景として製品サイクルの長い自動車関連や家電関連を強化している。
なお海外展開に関しては、中国における韓国LGエレクトロニクスとの取引拡大に向けて15年9月に韓国駐在員事務所を設置し、自動車関連の拡販に向けてメキシコに販売会社を設立準備中である。
■京都大学と次世代無線通信技術「カオスCDMA」を共同研究
15年7月に京都大学との共同研究契約締結を発表した。梅野健教授(京都大学大学院情報学研究科)の研究室と、次世代無線通信技術の「カオスCDMA」の産業利用化を目的として共同研究する。
梅野健教授がカオス理論を用いて開発した「カオスCDMA」は、非常に高い通信安定性、高速通信、限られた周波数帯域で、多数の端末の同時アクセスを可能にする周波数共有技術である。有線通信と同等の性能を持ち、セキュリティ上重要な機密性も非常に高い無線技術で、信頼性や安定性の面で無線LANの課題を解決できるとされている。
この技術の実用化が実現した場合、産業機器などのように、これまで有線通信が前提だった製品の無線通信化が可能になるため、配線の束が不要になるなどコストダウンや利便性の向上が図られる。また通信分野、工作機械、監視カメラ、ドローン、自動車など、さまざまな用途への利用や製品展開も期待できるとしている。
なお15年12月には「動く産業用機械の配線を不要とする無線化技術」について、京都大学と共同で特許出願している。
■LED照明関連の市場拡大が収益に追い風
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期41億65百万円、第2四半期44億41百万円、第3四半期45億35百万円、第4四半期45億36百万円、営業利益は第1四半期2億53百万円、第2四半期2億33百万円、第3四半期2億39百万円、第4四半期1億91百万円だった。
自動車や家電などの生産動向の影響を受けやすいが、LED照明関連の市場拡大が追い風である。なお15年3月期の売上総利益率は20.2%で14年3月期比横ばい、販管費比率は15.0%で同0.2ポイント低下した。ROEは12.3%で同0.3ポイント上昇、自己資本比率は44.5%で同3.2ポイント上昇した。配当性向は16.7%だった。
■16年3月期は大幅減益、海外工場稼働率低下などが影響
前期(16年3月期)の連結業績は、前々期(15年3月期)比9.6%増収、同43.5%営業減益、同44.9%経常減益、同30.9%最終減益だった。製品別売上高は、片面板が同3.4%減の85億69百万円、両面板が同30.3%増の82億17百万円、その他が同3.8%増の25億92百万円だった。
国内はプリント配線板事業でスマートメーター等を新規受注し、LED照明の家電製品分野が堅調に推移した。実装事業も堅調だった。海外は自動車関連が大幅伸長した。ただし中国の景気減速の影響で片面板の受注が減少するなどプリント配線板事業が全体として伸び悩み、海外工場における内製稼働率の低下、円安に伴う輸入販売品や原材料などの調達コスト増加、搬送用治具事業譲受に伴う人件費の増加などで大幅減益だった。
売上総利益は同2.8%減少し、売上総利益率は17.9%で同2.3ポイント低下した。販管費は同11.2%増加し、販管費比率は15.3%で同0.3ポイント上昇した。営業外費用では為替差損益が悪化(前々期は差損9百万円、前期は差損31百万円)した。なお経常利益増減分析は、増益要因が売上要因3億44百万円、減益要因が原価率要因4億44百万円、販管人件費増減要因2億99百万円、営業外要因21百万円としている。為替影響は売上高でプラス13億円、営業利益でマイナス1億円、経常利益でマイナス1.3億円だった。
特別利益では投資有価証券売却益1億90百万円を計上し、特別損失では事業構造改善費用19百万円を計上した。ROEは7.5%で同4.8ポイント低下、自己資本比率は47.7%で同3.2ポイント上昇した。配当は前々期と同額の年間8円(期末一括)で配当性向は24.2%だった。
セグメント別に見ると、日本は売上高が同2.2%減の76億49百万円で営業利益(連結調整前)が同57.1%減の89百万円、中国は売上高が同23.5%増の100億08百万円で営業利益が同26.0%減の5億38百万円、インドネシアは売上高が同1.5%減の17億21百万円で営業利益が同1億23百万円の赤字(前々期は33百万円の赤字)だった。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期46億97百万円、第2四半期46億81百万円、第3四半期50億92百万円、第4四半期49億09百万円で、営業利益は第1四半期1億94百万円、第2四半期60百万円、第3四半期2億21百万円、第4四半期42百万円だった。
■17年3月期は新規取引も寄与して大幅営業増益予想、収益改善基調
今期(17年3月期)の連結業績予想(4月28日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比3.2%増の200億円、営業利益が同44.9%増の7億50百万円、経常利益が同36.0%増の7億円、純利益が同5.6%増の5億円としている。配当予想は前期と同額の年間8円(期末一括)としている。予想配当性向は22.9%となる。
売上面では自動車・家電製品分野のLED照明関連が堅調に推移し、中国における韓国LGエレクトロニクス向け新規取引も寄与する。利益面では販売価格の是正、海外工場における内製稼働率の上昇、中国およびインドネシアにおける人員削減などの効果で大幅営業増益予想だ。想定為替レートは1米ドル=110円としている。なお九州工場(熊本県玉名市)は4月19日から通常どおり稼働している。
■新中期経営計画で21年3月期営業利益17億円目標
16年6月策定の新中期経営計画では、経営ビジョンを「一流になる」、基本戦略を「企業間連携を活用し電子回路デバイス分野において独自技術を武器に成長分野を攻める」とした。企業間連携によって販路拡大、新マーケット開拓、技術開発を図る方針だ。
目標数値には21年3月期売上高280億円(片面板105億円、両面板145億円、治具20億円、実装10億円)、営業利益17億円(営業利益率6.0%)を掲げた。株主還元については配当性向20%を目標とする。
成長に向けた重点戦略としては、片面板は未開拓地域および新規顧客への拡販、独自技術による顧客および成長分野の開拓、両面板は海外での拡販および海外生産体制の拡充、実装は国内成長分野への特化と生産自動化、治具は国内外での拡販と新用途の開発などを推進する。また新規事業の創出と育成では、プリント配線板の上流下流および関連分野への進出、産学連携による産業利用用途の製品開発、企業間連携による経営効率化に取り組む方針だ。
成長分野のLED照明関連は、直管型LED照明の普及進展に加えて、自動車ヘッドライトのLED化進展も期待されている。自動車ヘッドライト関連の大手メーカーへの供給も拡大しているようだ。さらに政府が省エネ対策として、エネルギー消費の少ないLED照明の普及を促進するため、エネルギー効率の悪い白熱灯に対する規制を強化する方針を示していることも追い風となる。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は地合い悪化で安値圏だが売られ過ぎ感
株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して6月28日に251円まで調整し、2月の年初来安値235円に接近する場面があった。ただし売られ過ぎ感を強めている。
6月28日の終値260円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS34円89銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は3.1%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS444円12銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約38億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。指標面の割安感も強く反発が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)
IR-Solution