- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- クリナップは17年3月期大幅増益予想で収益改善基調、低PBRも見直し
クリナップは17年3月期大幅増益予想で収益改善基調、低PBRも見直し
- 2016/6/29 08:28
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手でシステムバスルームなども展開している。17年3月期大幅増益予想で収益改善基調が期待される。低金利や住宅取得優遇策なども追い風だろう。株価は地合い悪化の影響を受けたが、収益改善基調や0.5倍近辺の低PBRを見直して反発展開が期待される。
■システムキッチンの大手でシステムバスルームも展開
厨房部門(システムキッチン)を主力として、浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)も展開している。16年3月期の部門別売上高構成比は厨房部門78.4%、浴槽・洗面部門16.1%、その他5.5%で、販売ルート別売上高構成比(単体ベース)は、一般ルート(工務店・リフォーム)78.9%、ハウスメーカー16.0%、直需(マンション)5.1%だった。
■中期経営計画で「ザ・キッチンカンパニー」目指す
中期経営計画では「ザ・キッチンカンパニー」の確立を目指している。重点施策として、システムキッチン「S.S.」「クリンレディ」「ラクエラ」を軸とした商品ラインナップの充実、中高級システムキッチンの販売強化と市場シェア上昇、リフォーム市場での競争優位となる商品の開発、全国のショールームを核とした販売戦略の推進、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携強化とリフォーム需要の取り込み、サプライチェーン全体での原価低減活動強化、設備投資およびコストの最適化、CPS活動の全社展開による業務効率化、20年サポートを支える業務システムの整備、海外事業の強化などを推進している。
商品ラインナップの充実では、15年5月発売の新機能「流レールシンク」搭載システムキッチン「クリンレディ」が、2015年日経優秀製品・サービス賞において優秀賞日経産業新聞賞を受賞した。
全国のショールームを核とした販売戦略の推進では、ショールームを顧客接点の要、地域に根差したブランド戦略の重要拠点、リフォーム需要取り込みの最重要拠点と位置付けて、集客を強化するためリニューアルと生活提案型ショールームへの転換を進めている。シュールームのリニューアル数は12年3月期4ヶ所、13年3月期14ヶ所、14年3月期21ヶ所、15年3月期9ヶ所、16年3月期13ヶ所で、5期合計61ヶ所のリニューアルを実行した。
会員登録制組織「水まわり工房」正会員数は16年3月期末4259社(15年3月期末比309社増加)となった。生産面では16年2月、クリナップ岡山工業津山工場のプレス棟建築工事とプレスライン設備工事が完了した。16年7月本格稼働後は、福島県いわき市の東日本の拠点と合わせて生産拠点の二極化体制が整い、西日本における供給体制を強化する。
海外展開は中国、台湾、シンガポール、マレーシアなどに展開している。中国にはハウスメーカーと共同進出して、瀋陽、蘇州、無錫、太倉の4地区にキッチン等を供給している。
■新設住宅着工やリフォーム需要の影響を受けやすい収益構造
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期319億24百万円、第2四半期284億53百万円、第3四半期288億39百万円、第4四半期270億23百万円、営業利益は第1四半期19億68百万円、第2四半期5億49百万円、第3四半期11億13百万円、第4四半期6億02百万円の赤字だった。
収益は新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすく、15年3月期は消費増税の影響長期化などで営業損益が悪化した。15年3月期のROEは1.5%で14年3月期比7.0ポイント低下、自己資本比率は65.7%で同2.5ポイント上昇した。配当性向は96.0%だった。利益配分については、長期的な安定と成長を実現することにより最大の利益をあげ、安定的な配当を長期的に継続していくことを基本方針としている。
■16年3月期は大幅減益
前期(16年3月期)の連結業績は、前々期(15年3月期)比3.0%減収、同62.7%営業減益、同67.9%経常減益、同61.5%最終減益だった。新設住宅着工戸数や住宅設備機器需要が本格回復に至らず、原材料価格上昇、ショールームリニューアル費用や広告宣伝費の増加などで大幅減益だった。ショールームは15年10月に首都圏エリア旗艦ショールームとして「クリナップ・キッチンタウン・東京」をオープンしたほか、6ヶ所を新築移転、6ヶ所を全面リニューアルした。
売上総利益は同4.1%減少し、売上総利益率は32.4%で同0.9ポイント低下した。販管費は同0.9%増加し、販管費比率は31.5%で同0.8ポイント上昇した。なお特別損失では前々期計上した厚生年金基金解散損失引当金繰入額9億15百万円が一巡した。ROEは0.6%で同0.9ポイント低下、自己資本比率は65.0%で同0.7ポイント低下した。配当は前々期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で配当性向は244.2%だった。
部門別売上高は、厨房部門が同1.6%減の897億55百万円、浴槽・洗面部門が同2.6%減の184億66百万円、その他が同2.2%増の62億23百万円だった。厨房部門のシステムキッチン「S.S.」は数量・金額とも減少、「クリンレディ」は数量・金額とも増加、「ラクエラ」は数量・金額とも減少した。浴槽・洗面部門のシステムバスルーム「アクリアバス」は数量・金額とも減少、「ユアシス」は数量・金額とも減少、洗面化粧台は数量・金額とも減少した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期271億23百万円、第2四半期292億70百万円、第3四半期301億81百万円、第4四半期278億71百万円、営業利益は第1四半期32百万円の赤字、第2四半期4億30百万円、第3四半期13億59百万円、第4四半期6億28百万円だった。
■17年3月期は大幅増益予想で収益改善基調期待
今期(17年3月期)の連結業績予想(5月10日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比4.0%増の1190億円、営業利益が同2.2倍の25億円、経常利益が同2.5倍の22億円、純利益が同2.5倍の12億円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は69.3%となる。
部門別売上高の計画は、厨房部門が同3.5%増の929億09百万円、浴槽・洗面部門が同4.7%増の193億29百万円、その他が同8.7%増の67億62百万円としている。
会員登録制組織「水まわり工房」加盟店や流通パートナーと連携し、流レールシンクを標準装備したシステムキッチン「クリンレディ」や美コートワークトップを標準装備したシステムキッチン「S.S.」などを中心に拡販を強化する。生産設備の整備、ショールームの新設・移転・改装、情報基盤整備などへの投資を継続しつつ、生産面での原価低減や営業業務の効率化などで大幅増益予想としている。低金利や住宅取得優遇策なども追い風となって収益改善基調が期待される。
■株価は地合い悪化の影響受けたが低PBRなど見直し
株価の動きを見ると地合い悪化の影響で6月17日に662円、24日に681円まで下押す場面があった。ただし1月の年初来安値644円を割り込むことなく切り返す動きだ。
6月28日の終値711円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS28円85銭で算出)は24~25倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1340円97銭で算出)は0.5倍近辺である。なお時価総額は約298億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、収益改善基調や0.5倍近辺の低PBRを見直して反発展開が期待される。(日本インタビュ打新聞アナリスト水田雅展)