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ヨコレイは調整一巡して出直り、16年9月期大幅増益予想でさらに増額余地
- 2016/6/29 09:04
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ヨコレイ(横浜冷凍)<2874>(東1)は冷蔵倉庫の大手で、食品販売事業も展開している。16年9月期大幅増益予想で、さらに増額余地がありそうだ。冷蔵倉庫事業では低温物流サービスの戦略的ネットワーク構築に向けて積極投資を継続し、食品販売事業ではノルウェーHI社との資本業務提携などで業容を拡大している。株価は地合い悪化の影響を受けたが、調整一巡して出直りだろう。
■冷蔵倉庫事業と食品販売事業を展開
冷蔵倉庫事業、および水産品・畜産品・農産品などの食品販売事業を展開している。15年9月期のセグメント別売上高構成比は冷蔵倉庫事業15.6%、食品販売事業84.4%、その他0.0%だった。営業利益(連結調整前)構成比は冷蔵倉庫事業79.5%、食品販売事業19.9%、その他0.6%だった。
■冷蔵倉庫事業は低温物流サービスの戦略的ネットワークを構築
冷蔵倉庫事業では総合低温物流への取り組みを強化し、戦略的ネットワーク展開に向けて積極投資を進めている。
国内では14年4月北海道小樽市・石狩第2物流センター、14年6月大阪市・夢洲物流センター、14年10月宮崎県都城市・都城第2物流センターが竣工した。また北海道・十勝第3物流センター(仮称)は16年8月竣工予定、北海道河西郡芽室町のヨコレイ十勝ソーティングスポット(仮称)は16年9月竣工予定、埼玉県・幸手物流センター(仮称)は17年6月竣工予定である。海外はASEAN地域への展開で14年2月タイ・ワンノイ物流センター2号棟が竣工、15年8月タイ・バンパコン第2物流センターが竣工した。タイヨコレイ全体の保管収容能力はタイ国内トップシェアである。
15年11月には、森永乳業が所有する東京都大田区京浜島の土地と平和島の土地を取得(契約締結15年9月)したと発表している。また取得する平和島の土地に現在稼働している冷蔵倉庫を所有・運営するパックス冷蔵(森永乳業の100%子会社)の全株式を併せて取得する。京浜島の土地には最新鋭物流センターを建設する計画だ。一連の総投資額は90億円~100億円の予定としている。
16年3月には冷蔵倉庫建設用地として、福岡市アイランドシティ港湾関連用地4工区E区画の取得を発表した。引渡は18年3月予定である。
■食品販売事業ではノルウェーの大手水産加工会社と包括的業務提携
食品販売事業ではノルウェーの大手水産加工会社ホフセスインターナショナル(Hofseth International=HI)と、資本参加を含めた包括的業務提携を締結(調印式15年8月)した。
業務提携によって、HI社が生産するノルウェー産アトランティックサーモン加工品の北米・欧州の大手量販店向け輸出販売を開始する。日本国内向けビジネスでは鮭ハラス製品の独占販売権を取得した。またHI社との共同出資でHFSアライアンス社を設立し、サーモンオイルを成分としたサプリメントの中国向けネット通販を開始する。
16年3月には水産品輸出入の100%子会社アライアンスシーフーズ(ASF社)が、HI社の100%子会社でアトランティックサーモン等の加工製造を行っているSyyde社の全株式を取得した。
また6月17日には、当社がASF社の増資を引き受け、ASF社とHI社が合弁会社を設立してノルウェーの養殖事業会社Fjordlaks Aqua AS(FA社)の全株式を取得(16年7月中旬予定)すると発表した。
■15年9月期は償却負担
15年9月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期399億38百万円、第2四半期350億45百万円、第3四半期395億69百万円、第4四半期402億15百万円、営業利益は第1四半期12億95百万円、第2四半期5億28百万円、第3四半期12億28百万円、第4四半期8億23百万円だった。
15年9月期の売上総利益率は7.4%で14年9月期比0.7ポイント低下、販管費比率は4.9%で同0.3ポイント低下した。減価償却費増加などで営業・経常減益だった。減価償却費は44億65百万円で同5億83百万円増加した。純利益は減損損失一巡して増益だった。ROEは4.2%で同1.0ポイント上昇、自己資本比率は51.6%で同0.1ポイント上昇した。配当性向は41.1%だった。
なおセグメント別営業利益(連結調整前)の四半期別推移を見ると、冷蔵倉庫事業は第1四半期14億69百万円、第2四半期10億70百万円、第3四半期12億04百万円、第4四半期10億05百万円、食品販売事業は第1四半期3億30百万円、第2四半期67百万円の赤字、第3四半期5億22百万円、第4四半期4億04百万円だった。食品販売事業の営業損益は改善基調のようだ。
■16年9月期第2四半期累計は計画超の大幅増益
今期(16年9月期)第2四半期累計(10~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.8%増の755億72百万円、営業利益が同56.5%増の28億53百万円、経常利益が同66.0%増の30億82百万円、純利益が同75.8%増の19億84百万円だった。計画超の大幅増益だった。
冷蔵倉庫事業は新物流センターのフル稼働も寄与して好調に推移した。食品販売事業は円高によって輸入商材の収益環境が好転したことも寄与した。売上総利益は同15.4%増加し、売上総利益率は8.6%で同1.0ポイント上昇した。販管費は同4.2%減少し、販管費比率は4.9%で同0.2ポイント低下した。
セグメント別の動向を見ると、冷蔵倉庫事業は売上高が同6.0%増の126億63百万円、営業利益(連結調整前)が同28.5%増の32億63百万円だった。荷動きが堅調で、14年9月期から順次稼働した4つの物流センターのフル稼働が寄与した。入庫取扱量は同6.4%増加、出庫取扱量は同6.8%増増加、平均保管在庫量は同10.2%増加し、保管料収入が同7.5%増収、荷役料収入が同5.0%増収、運送収入が同5.0%増収となった。利益面では物流センター立ち上げに伴う消耗備品費が減少(1億53百万円減少)し、設備投資がピークアウトして減価償却費が減少(1億19百万円減少)したことも寄与した。
食品販売事業は、売上高が同0.2%減の628億79百万円だが、営業利益が同2.6倍の6億78百万円だった。水産品は増収増益、畜産品は減収減益、農産品は増収増益だった。水産品はノルウェーHI社とのアトランティックサーモン事業が順調に推移し、エビは回転率重視に徹底して利益率が改善した。畜産品はチキンの相場下落が影響した。農産品は主力商材が好調だった。円高によって輸入商材の収益環境が好転したことも寄与した。
その他は売上高が同84.9%増の29百万円で、営業利益が同13.3%減の16百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期420億35百万円、第2四半期335億37百万円、営業利益は第1四半期18億20百万円、第2四半期10億33百万円だった。
■16年9月期通期も大幅増益予想で増額余地
今期(16年9月期)通期の連結業績予想(11月13日公表)は、売上高が前期(15年9月期)比3.4%増の1600億円、営業利益が同29.1%増の50億円、経常利益が同23.8%増の50億円、純利益が同23.1%増の31億円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は33.4%となる。
セグメント別の計画は、冷蔵倉庫事業の売上高が同2.3%増の247億07百万円、営業利益(連結調整前)が同7.4%増の51億円、食品販売事業の売上高が同3.5%増の1352億26百万円、営業利益が同63.0%増の19億38百万円、その他の売上高が同2.1倍の67百万円、営業利益が同26.8%増の46百万円としている。
冷蔵倉庫事業では入庫・出庫取扱量および平均保管在庫量が順調に増加し、新規稼働物流センターの収益寄与も本格化する。食品販売事業では不採算在庫圧縮徹底や戦略的商材拡販などの効果が期待される。減価償却費の減少(通期ベースで1億44百万円減少見込み)も寄与して大幅増益予想である。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.2%、営業利益が57.1%、経常利益が61.6%、純利益が64.0%である。利益進捗率が高水準であり、大幅増益の通期会社予想に増額余地がるだろう。
■中期経営計画で17年9月期純利益32億円目標
14年10月にスタートした第5次中期経営計画「Flap The Wings 2017」に基づいて、冷蔵倉庫事業では「クールネットワークのリーディングカンパニー」を目指し、食品販売事業では「安定的な利益追求を基本としながらも、強みのある商材を全社的に展開する」ことを命題としている。
目標数値は、17年9月期売上高1650億円、営業利益57億円(連結調整前の冷蔵倉庫事業56億65百万円、食品販売事業20億67百万円)、経常利益57億円、純利益32億円、ROE5.1%、配当性向40%、EBITDA100億円、自己資本比率52.0%としている。
■株主還元は配当性向40%以上の維持目標、株主優待は9月末に実施
配当政策の基本方針は安定的な配当を継続して行うとしている。そして企業価値向上に必要な設備・IT投資等を勘案しつつ、配当性向40%以上を維持していくことを目標としている。
株主優待については毎年9月30日現在の1000株以上保有株主に対して実施している。優待内容は1000株以上~3000株未満保有株主に対して鮭切身詰め合わせ、3000株以上保有株主に対して北海道産ホタテ・いくらセットを贈呈する。
■株価は調整一巡して出直り期待
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で6月24日に970円まで調整した。ただし1月の年初来安値963円を割り込むことなく切り返している。
6月28日の終値1024円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS59円91銭で算出)は17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.0%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1185円23銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約539億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線がサポートラインとなって下げ渋る動きだ。調整が一巡して上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)