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日本アジアグループは成長戦略加速して中期的に収益拡大期待
- 2016/6/29 09:00
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本アジアグループ<3751>(東1)は社会インフラ・環境・エネルギー関連事業に経営資源を集中して成長戦略を強化している。17年3月期は先行投資負担で営業・経常減益予想だが、純利益は特別損失が一巡して増益予想である。さらに成長戦略を加速して中期的に収益拡大が期待される。株価は地合い悪化も影響して安値圏だが、下値支持線からの反発が期待される。
■社会インフラ・環境・エネルギー関連に経営資源を集中
社会インフラ・環境・エネルギー関連にグループ経営資源を集中して、空間情報コンサルティング事業(国際航業の社会インフラ関連事業)、グリーンエネルギー事業(太陽光発電の受託および売電事業、土壌・地下水保全コンサルティング事業、戸建住宅・不動産事業)、ファイナンシャルサービス事業(日本アジア証券などの証券業)を展開している。
16年3月期の報告セグメント別売上高構成比は空間情報コンサルティング事業が56.5%、グリーンエネルギー事業が33.1%、ファイナンシャルサービス事業が10.3%で、営業利益(連結調整前)構成比は空間情報コンサルティング事業が42.2%%、グリーンエネルギー事業が44.9%、ファイナンシャルサービス事業が13.3%だった。
グループ再編では、太陽光発電事業にかかる子会社事業を統合し、グリーンエネルギー事業のJAG国際エナジーとグリーンプロパティ事業の国際ランド&ディベロップメントが合併(15年7月)して新JAG国際エナジーが発足した。ファイナンシャルサービス事業の強化を図るため、日本アジア証券にファイナンシャルサービス部門の子会社を集約した。16年4月には連結子会社KHCを株式交換で完全子会社化した。KHCはグリーンエネルギー事業の主要会社の1つとして、兵庫県において環境配慮型住宅を含む戸建住宅事業を展開している。
■社会インフラ関連は改正PFI法も活用
15年12月には国際航業が、メタウォーター<9551>を代表企業とする特別目的会社「あらおウォーターサービス」に参画し、荒尾市企業局と特別目的会社が「荒尾市水道事業等包括委託」業務委託契約を締結した。改正PFI法の「民間事業者による提案制度」に基づいて事業化されたもので、水道事業に関する業務を包括的に民間委託する全国に先駆けた先進的事業である。16年4月に業務を開始した。
■再生可能エネルギー関連では流水式水力発電にも参入
再生可能エネルギー関連事業では14年10月JAG国際エナジーが、東京都が創設した官民連携再生可能エネルギーファンドの運営事業者に選定され、15年4月第1号案件として、当社グループが開発したメガソーラー発電所「足柄大井ソーラーウェイ」と「行田ソーラーウェイ」を運営する合同会社に投融資を実行した。
14年12月シーベルインターナショナル(東京都)の経営権を取得した。アジア・アフリカ各国に事業展開している同社の流水式超低落差型マイクロ水力発電システム(商品名:ストリーム)を活用し、マイクロ水力発電事業を再生可能エネルギー関連事業の第2の柱に育成する方針だ。
15年3月独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」の公募に対して、インドにおける「火力発電所放流渠を活用したマイクロ水力並列配置発電システム技術実証事業」が採択された。小水力発電プロジェクトに関しては国際連合工業開発機構(UNIDO)と「アフリカエチオピアプロジェクト」および「アフリカケニアプロジェクト」に関して正式契約を締結した。
15年7月流水式小水力発電装置「スモールハイドロストリーム」が湖北土地改良区(滋賀県長浜市)の中央幹線用水路に採用された。FIT(固定価格買取制度)を活用した民間企業による小水力発電事業において「スモールハイドロストリーム」の採用は初となる。
なお国内の太陽光発電事業に関する進捗状況は、16年3月末時点で売電事業の稼働・竣工が74.8MW(49ヶ所=国際航業15ヶ所+JAG国際エナジー34ヶ所)、案件確保が89.4MW、受託事業の稼働・竣工が129.8MW、案件確保が5.9MW、総合計が299.9MWである。
■空間情報コンサルティング事業は第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期124億60百万円、第2四半期176億00百万円、第3四半期181億62百万円、第4四半期276億81百万円、営業利益は第1四半期1億45百万円、第2四半期11億47百万円、第3四半期10億07百万円、第4四半期30億53百万円だった。
空間情報コンサルティング事業は公共事業関連が主力のため第4四半期の構成比が高い収益構造である。そして営業損益は改善基調だ。15年3月期のROEは14年3月期比3.3ポイント上昇して15.6%、自己資本比率は同1.9ポイント上昇して21.7%となった。
■16年3月期はファイナンシャルサービス落ち込みや特別損失計上で減益
前期(16年3月期)連結業績は、前々期(15年3月期)比0.5%減収、同27.4%営業減益、同31.4%経常減益、同89.0%最終減益だった。空間情報コンサルティング事業とグリーンエネルギー事業は好調だったが、ファイナンシャルサービス事業が想定以上に落ち込み、特別損失の計上も影響した。
売上総利益は同7.8%減少し、売上総利益率は31.1%で同2.5ポイント低下した。販管費は同2.6%減少し、販管費比率は26.0%で同0.5ポイント低下した。営業外収益では受取補償金81百万円を計上した。また持分法投資利益が増加(前々期4百万円、前期40百万円)し、為替差損益が改善(前々期は差損1億48百万円、前期は差益4百万円)した。
特別利益では投資有価証券売却益が減少(前々期9億36百万円、前期8億96百万円)した。特別損失では減損損失が減少(前々期3億60百万円、前期1億52百万円)し、関係会社株式売却損7億37百万円が一巡したが、おきなわ証券での偶発損失引当金繰入額13億60百万円を計上した。ROEは1.6%で同14.0ポイント低下、自己資本比率は21.9%で同0.2ポイント上昇した。
配当は前々期の無配に対して年間30円(第3四半期末20円=東証1部への市場変更記念特別配当、期末10円)とした。配当性向は200.5%だった。利益配分については業績に対応した水準であること、中長期的な視点から安定的に継続することを基本としつつ、競争力、事業環境、財務体質等を勘案して総合的に決定することを基本方針としている。当面の配当性向は10%~20%を目途としている。
セグメント別に見ると、空間情報コンサルティング事業は受注高が同2.0%増の421億46百万円、売上高が同1.6%増の426億81百万円、営業利益(連結調整前)が同26.4%増の17億46百万円だった。15年度の国の公共事業関係費が当初予算ベースで微増にとどまったが、まち・ひと・しごと創生関連事業、防災・減災・老朽化対策等への積極的な対応によって都道府県・市町村顧客の開拓を推進した。
グリーンエネルギー事業は受注高が同26.7%減の179億31百万円、売上高が同8.1%増の250億07百万円、営業利益が同10.9%増の18億56百万円だった。受注高は前々期の大型案件の反動で減少したが、売上面では売電事業が好調に推移し、受託事業も前々期受託した太陽光発電所開発が順調に進捗した。なお稼働済み発電所は49ヶ所以上、合計74MWを超える規模となった。
ファイナンシャルサービス事業は売上高が同27.5%減の77億95百万円、営業利益が同78.9%減の5億51百万円だった。株式市場低迷などで特に外国株式関連の収益が減少した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期155億14百万円、第2四半期194億05百万円、第3四半期187億75百万円、第4四半期218億30百万円、営業利益は第1四半期3百万円、第2四半期10億60百万円、第3四半期2億79百万円、第4四半期25億45百万円だった。
■17年3月期は先行投資負担で営業減益予想だが、中期的に収益拡大期待
今期(17年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比2.0%増の770億円、営業利益が同28.0%減の28億円、経常利益が同49.3%減の13億円、純利益が同2.4倍の10億円としている。先行投資負担などで営業減益・経常減益予想だが、純利益は特別損失が一巡して増益予想である。配当予想は年間10円(期末一括)としている。東証1部への市場変更記念特別配当20円を落として減配の形である。予想配当性向は27.6%となる。
セグメント別の計画は、空間情報コンサルティング事業の売上高が同2.9%増の439億円で営業利益(連結調整前)が同42.7%減の10億円、グリーンエネルギー事業の売上高が同0.4%減の249億円で営業利益が同19.2%減の15億円、ファイナンシャルサービス事業の売上高が同5.2%増の82億円で営業利益が同27.1%増の7億円としている。
空間情報コンサルティング事業は高水準の受注獲得や新規事業育成による民間・海外展開で増収だが、投資費用や販管費負担が先行して減益見込みとしている。グリーンエネルギー事業は大型案件の反動で売上高は横ばい、電源開発事業投資(風力・バイオマス)に伴う費用増加で減益見込みとしている。ファイナンシャルサービス事業は仲介店舗拡大などの収益基盤強化と相場環境のボトムアウトで増収増益見込みとしている。
■中期経営計画ではROE12%以上目標
中期経営計画では、16年度~20年度を「成長DNA醸成ステージ」と位置づけ、経営目標値として20年度売上高1400億円~1600億円、営業利益110億円~130億円、ROE12%以上を掲げている。
成長領域である「G空間×ICT」「まちづくり」「気候変動対策」分野への取り組みを強化する方針だ。財務面ではROE向上に向けて総資産利益率の向上および財務レバレッジ効果の追求を推進する。
■自己株式取得
5月17日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限20万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間16年5月18日~16年6月30日)については、6月7日時点の累計で取得株式総数20万株、取得価額総額8753万6700円となって終了した。
そして6月8日には新たに自己株式取得を発表した。取得株式総数の上限20万株(自己株式を除く発行済株式総数に対する割合0.7%)、取得価額総額の上限1億円、取得期間16年6月9日~16年6月30日としている。
■株価は安値圏だが下値支持線から反発期待
株価の動きを見ると地合い悪化も影響して安値圏400円~450円近辺でモミ合う展開だ。6月24日には年初来安値となる396円まで調整する場面があった。
6月28日の終値409円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS36円18銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS963円28銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約113億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、400円近辺の下値支持線から反発が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展