フライトホールディングスは新製品が寄与して17年3月期黒字化予想

 フライトホールディングス<3753>(東2)は電子決済ソリューションを主力として、システム開発やECソリューションも展開している。次世代型マルチ決済装置「incredist premium」や電子マネー対応版「ペイメント・マイスター」が寄与して17年3月期黒字化予想である。株価は急伸した6月6日の年初来高値から地合い悪化で反落したが、再動意の可能性があるだろう。

■システム開発や電子決済ソリューションなどを展開

 フライトシステムコンサルティングが13年10月、持株会社に移行してフライトホールディングスに商号変更した。システム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、電子決済ソリューションなどのサービス事業、B2B向けECサイト構築パッケージなどのECソリューション事業を展開している。

 14年10月、ECサイト構築パッケージソフト「イーシー・ライダー」のDRAGON TECHNOLOGYを子会社化(14年11月イーシー・ライダーに商号変更)し、ECソリューション事業も強化している。

■電子決済ソリューション分野に強み

 電子決済ソリューション分野では、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末「incredist(インクレディスト)」と、スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」の展開を強化している。

 スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」はiPhoneやiPadをクレジットカード決済端末にする大企業向けの、国内初のBtoB決済ソリューションである。10年9月に提供開始して高級ホテル、レストラン、観光タクシー、旅行代理店など幅広い業種に導入されている。

 そして13年4月には、J-Debit、電子マネー、銀聯カード、クレジットカードといったカードの読み取りを1台で実現できる、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末「incredist」の販売を開始した。

■アライアンスも活用して事業展開

 15年9月イーシー・ライダーがラクーン<3031>と業務提携して、イーシー・ライダーのBtoB向けECサイト構築システム「EC-Rider B2B」とラクーンのBtoB掛売り・請求書決済代行サービス「Paid」を連携した。

 15年12月フライトシステムコンサルティングが、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」の法人モデル「Pepper for Biz」向けで、ロボアプリパートナーとして認定された。

 16年4月イーシー・ライダーがportia(ポーシャ)と業務提携して、BtoB向けECサイト構築システム「EC-Rider B2B」とポーシャの企業向けオンラインリアルタイム決済システム「portia」を連携した。またイーシー・ライダーが、GMOインターネット<9449>のクラウドサービス「ConoHa byGMO」を基盤に採用した「EC-Rider B2B」の新プランを発表した。

■海外展開も加速

 14年12月「ペイメント・マイスター」および「incredist」の拡販に向けて米国子会社FLIGHT SYSTEM USAを設立した。ICチップ付きクレジットカード決済(EMV決済)やApple PayなどのNFC決済においてグローバル展開を推進する。15年12月アジアを中心とした電子決済ソリューション事業展開に向けてFLIGHT台湾を設立した。

 16年5月にはフライトシステムコンサルティングが、EUでクレジットカード・アクワイアリング事業を行うCredoraxと業務提携した。フライトシステムコンサルティングの「ペイメント・マイスター」をCredoraxに接続し、クレジットカード決済装置の新製品「incredist premium」を活用したタブレット連動型カード決済ソリューションをEU圏で広く展開していく。接続完了は16年8月頃の予定としている。

■新製品を積極投入

 15年10月フライトシステムコンサルティングが米国子会社FLIGHT SYSTEM USAを通じて、北米市場向けにタブレット連動型クレジットカード決済装置の新製品「incredist premium」を発表した。磁気クレジットカード、接触型ICクレジットカード(EMV)、非接触型ICクレジットカード(コンタクトレスEMV)、および日本独自の電子マネーに対応した決済端末である。

 また米国子会社FLIGHT SYSTEM USAは米国の大手決済センター事業者PIVOTALと業務提携した。PIVOTALのGlobalOneサービスと協業して新製品「incredist premium」の北米での販売を強化する。

 そして16年3月、新製品「incredist premium」の日本国内での販売を開始した。米国では現在セキュリティー基準の審査を依頼中であり、審査が終了次第、米国子会社FLIGHT SYSTEM USAを通じて米国での販売を開始する予定としている。

 6月2日にはフライトシステムコンサルティングが、スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」の新たなラインナップとして、トッパン・フォームズ<7862>のグループ会社であるTFペイメントサービス(TFPS)と連携し、電子マネー対応版「ペイメント・マイスター for Thincacloud」を開発し、加盟店向けに提供開始すると発表した。第一弾の電子マネーブランドとしてNTTドコモ<9437>の「iD(アイディー)」がサービスインする。

■大型案件も影響する収益構造

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期3億59百万円、第2四半期3億円、第3四半期2億38百万円、第4四半期6億95百万円、営業利益は第1四半期7百万円の赤字、第2四半期58百万円の赤字、第3四半期77百万円の赤字、第4四半期83百万円の黒字だった。

 サービス事業における大型案件の売上計上有無も影響する収益構造で、15年3月期は新規大型案件の先送りが影響した。ただし第4四半期に黒字化して営業損益は改善基調だ。

■16年3月期は開発費増加などで赤字拡大

 前期(16年3月期)連結業績は売上高が前々期(15年3月期)比22.8%増の19億55百万円、営業利益が92百万円の赤字(前々期は59百万円の赤字)、経常利益が1億28百万円の赤字(同62百万円の赤字)、純利益が1億62百万円の赤字(同84百万円の赤字)だった。配当は無配を継続した。

 新製品「incredist premium」大型案件納品で増収だが、開発費発生やECソリューション事業における固定費先行などで利益は赤字が拡大した。売上総利益は23.5%増加し、売上総利益率は25.9%で同0.1ポイント上昇した。販管費は同27.5%増加し、販管費比率は30.6%で同1.1ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前々期は差益13百万円、前期は差損7百万円)した。特別損失ではソフトウェア評価損10百万円を計上した。自己資本比率は22.0%で同10.8ポイント低下した。

 セグメント別(連結調整前)動向を見ると、C&S事業は売上高が同6.2%減の5億82百万円で営業利益が同3.3倍の11百万円、サービス事業は売上高が同40.2%増の13億51百万円で営業利益が同8.0%増の1億77百万円、ECソリューション事業は売上高が同54.8%増の36百万円で営業利益が46百万円の赤字(前々期は19百万円の赤字)だった。

 C&S事業は引き合いが堅調だったが人材採用が計画どおりに進まず、またサービス事業の立ち上げに要員を投入したため減収だった。営業損益は改善した。サービス事業は新製品「incredist premium」大型案件納品で大幅増収だが、同製品の開発費発生のため営業損益は伸び悩んだ。ECソリューション事業は事業立ち上げのため固定費が先行して発生している。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期1億83百万円、第2四半期2億61百万円、第3四半期1億73百万円、第4四半期13億38百万円で、営業利益は第1四半期1億43百万円の赤字、第2四半期79百万円の赤字、第3四半期1億33百万円、第4四半期2億63百万円だった。第4四半期はサービス事業における新製品「incredist premium」大型案件納品が寄与した。

■17年3月期は黒字化予想、新製品も寄与して収益改善期待

 今期(17年3月期)の連結業績予想(50月20日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比7.4%増の21億円、営業利益が60百万円の黒字(前期は92百万円の赤字)、経常利益が50百万円の黒字(同1億28百万円の赤字)、純利益が30百万円の黒字(同1億62百万円の赤字)としている。配当は無配継続としている。

 C&S事業は、前期からの仕掛案件や既存顧客のデータセンター移転案件に注力するほか、新たな取組としてクラウド移行の専門部隊を立ち上げ、ITインフラのクラウド移行の営業を強化する。サービス事業は、既存大口顧客に対する追加導入の提案活動、Apple Payを含むコンタクトレスEMVや電子マネーにも対応する新製品「incredist premium」の開発・販売に注力する。ECソリューション事業はカスタマイズ対応や越境ECにフォーカスして、BtoB向けECサイト構築パッケージ「EC-Rider B2B」の販売に注力する。

 利益面では、新製品「incredist premium」販売活動で、前期に積み残した北米での検定費用、EU圏、台湾、シンガポールなどでの検定費用、およびApple Pay到来に伴う決済センターとの接続など、1億円規模の開発費が発生する見込みだが、増収効果で吸収して黒字化予想だ。なおApple Pay開始時期が未確定のため、Apple Payが開始された場合に想定し得る売上については織り込んでいない。Apple Payが開始されたタイミングで売上・利益に関する見直しを行う予定としている。新製品も寄与して収益改善が期待される。

■株価は地合い悪化の影響で反落したが再動意の可能性

 株価の動きを見ると、急伸した6月6日の年初来高値520円から地合い悪化で反落し、6月24日に295円まで調整したが、その後は切り返しの動きを強めている。再動意の可能性があるだろう。

 6月28日の終値349円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS5円29銭で算出)は66倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS32円92銭で算出)は11倍近辺である。時価総額は約33億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。調整が一巡して再動意の可能性があるだろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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