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ラクーンは調整一巡して出直り期待、17年4月期増収増益予想
- 2016/6/30 08:39
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ラクーン<3031>(東1)は、BtoB電子商取引スーパーデリバリー運営を主力として、クラウド受発注のCOREC事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービスのPaid事業、売掛債権保証事業など周辺領域への拡大戦略を加速している。ストック型収益構造で16年4月期2桁増益となり、17年4月期も増収増益予想である。株価は地合い悪化の影響を受けたが調整一巡して出直りが期待される。
■企業間ECサイト「スーパーデリバリー」運営が主力
アパレル・雑貨分野企業間(BtoB)電子商取引(EC)スーパーデリバリー運営を主力として、クラウド受発注ツールのCOREC(コレック)事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービスのPaid(ペイド)事業、および売掛債権保証事業など周辺事業領域への拡大戦略を加速している。スーパーデリバリーでは15年8月に越境ECサービスのSDexportを開始した。
16年4月期セグメント別売上高構成比(連結調整前)は、EC事業(スーパーデリバリーとCOREC)60.8%、Paid事業13.6%、売掛債権保証事業25.6%だった。
なお6月13日にはスーパーデリバリーが第1回日本サービス大賞にて「地方創生大臣賞」を受賞したと発表している。
■スーパーデリバリーとCORECは新サービスを積極投入
15年8月にはスーパーデリバリーにおける越境ECサービス(海外販売)を開始した。商品を販売するメーカー側の配送業務を簡潔にするためディーエムエス(DMS)の物流代行サービスを利用し、日本最大級の輸出販売サービス「SD export」としてサービス提供する。約134ヶ国以上の小売店・企業への卸販売が可能となる。
15年11月には国内生産インフラサービス「SD factory」の開始を発表した。日本国内のアパレル関連工場やパタンナーと、アパレルメーカーやデザイナーをマッチングするサービスで、出展企業に対する生産面での新たな付加価値サービスとしている。取引が成立した際の代金回収についてはBtoB掛売り・請求書決済代行サービスのPaidを利用できる。
15年12月には偕成社と、ほるぷ出版がスーパーデリバリーで絵本の販売を開始した。16年3月には徳間書店など新たに8社の出版社が出展、16年4月にはCCCメディアハウスが出展した。
16年2月には日本未上陸ブランドを含むイタリアのメンズファッションブランドへの共同発注を開始した。スーパーデリバリーの会員小売店向けの新しい販売企画「SD Selection」の第一弾として実施した。
16年3月には越境ECサービス「SD export」の新たな決済手段としてPayPalが提供する決済サービス「ペイパル」の対応を開始した。また日本から韓国への海外配送代行サービス「Malltail(モールテール)」を展開するgroowbitsと業務提携した。
16年3月には「COREC API」の提供を開始した。CORECユーザー各社が導入している販売管理、倉庫管理、会計管理などのシステムに自動でデータを取り込むことが可能になる。
■Paid事業はFintech分野に事業展開
11年10月開始したBtoB掛売り・請求書決済代行サービスPaid事業はサービス改良によって業種・業態を問わず、あらゆるBtoB向けサービスに導入できるようになった。
15年12月には一般社団法人Fintech協会に加入、15年12月にはコミュニケーションアプリ「LINE」の公開型アカウント「LINE@」対応開始、16年2月にはSBIインベストメントのFinTechファンドに対して1億円出資した。
■M&A・アライアンスも積極活用
M&Aやアライアンスも積極活用している。14年10月Square社と業務提携してスーパーデリバリーおよびCORECとPOSレジアプリ「Squareレジ」がシステム連携した。
Paid事業では15年6月ロックオンと業務提携、15年9月フライトホールディングス<3753>グループ会社イーシー・ライダーと業務提携した。売掛債権保証事業では14年11月スタンドファームと業務提携、14年12月トラボックスと業務提携、15年7月信用交換所大阪本社に対して同社会員向け専用売掛保証サービス「シンコー保証」の提供を開始した。
■利用企業数は増加基調
16年4月期のスーパーデリバリー流通額は同0.6%増の95億87百万円だった。16年4月期末スーパーデリバリー会員小売店数は15年4月期末比8002店舗増加の5万2372店舗、出展企業数は同73社増加の1138社、商材掲載数は同10万2923点増加の55万9272点となった。有名アパレル関連企業の出展、アライアンス戦略効果、越境ECサービスのSDexport開始などで利用企業数が増加基調である。
CORECユーザー数は15年4月に2000社(バイヤー1191社、サプライヤー809社)を突破、15年7月に3000社(バイヤー1836社、サプライヤー1164社)を突破、16年2月に5000社(バイヤー3094社、サプライヤー1923社)を突破し、16年4月期末のCORECユーザー数は5903社となった。
連携サービスの増加、受注登録やレポート作成など機能の追加、サプライヤーによるバイヤーの誘致件数増加などの成果でユーザー数が増加基調である。業種別に見ると飲食関連が全体の23%を占めている。農業の6次産業化を進める農家・農園などの生産者と飲食店で受注・発注に利用するケースが増加しているようだ。
Paid加盟企業数は16年4月期末に1700社を超え、16年4月期のグループ内含む取引高は同27.7%増加して134億04百万円となった。売掛債権保証事業の16年4月期末グループ内含む保証残高は同41.0%増加の91億23百万円となった。
■月額課金のシステム利用料が積み上がるストック型収益構造
スーパーデリバリー流通に係る売上高に関して、従来は出展企業と会員小売店がスーパーデリバリーを通じて取引した金額を売上高計上(総額表示)し、商品仕入高も売上原価に計上していたが、15年4月期から商品仕入高を売上高と相殺して表示する方法(純額表示)に変更した。この変更によって、スーパーデリバリー流通に係る売上高は出展企業から徴収するシステム利用料売上となっている。従来の総額表示に比べて見掛け上の売上高は減少するが利益に変更はない。
15年4月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期4億90百万円、第2四半期5億06百万円、第3四半期5億22百万円、第4四半期5億38百万円、営業利益は第1四半期57百万円、第2四半期93百万円、第3四半期1億04百万円、第4四半期82百万円だった。
出展企業と会員小売店の増加に伴って月額課金のシステム利用料売上が積み上がるストック型収益構造である。15年4月期の売上総利益率は84.7%で14年4月期比0.5ポイント上昇、販管費比率は68.4%で同3.0ポイント低下、ROEは13.1%で同4.5ポイント上昇、自己資本比率は35.6%で同12.2ポイント低下した。配当性向は19.7%だった。配当の基本方針は、将来の事業展開と経営体質の強化に備えるための内部留保の充実等を勘案しながら、業績を反映した水準で利益還元を実施するとしている。
■16年4月期は2桁増益
前期(16年4月期)連結業績は、売上高が前々期(15年4月期)比8.4%増の22億29百万円、営業利益が同17.1%増の3億93百万円、経常利益が同12.2%増の3億67百万円、純利益が同12.2%増の2億39百万円だった。スーパーデリバリー国内流通額が伸び悩んだが、Paid事業の黒字転換などが寄与して2桁増益だった。
売上総利益は同6.3%%増加したが、売上総利益率は82.7%で同2.0ポイント低下した。また販管費は同3.7%増加したが、販管費比率は65.4%で同3.0ポイント低下した。営業外費用では東証1部への市場変更に伴う上場関連費用22百万円を計上した。ROEは14.4%で同1.3ポイント上昇、自己資本比率は35.7%で同0.1ポイント上昇した。
配当は年間4円50銭(期末一括)とした。15年8月1日付株式3分割を考慮して、前期の年間6円80銭(期末一括)を年間2円27銭に換算すると、実質的に2円23銭増配となる。配当性向は32.5%である。
セグメント別(連結調整前)に見ると、EC事業は売上高が同2.3%増の15億83百万円、営業利益が同4.5%減の2億23百万円だった。暖冬なども影響して国内流通額がやや伸び悩み、15年8月開始した越境ECサービスのSDexport準備費用なども影響して減益だった。なお流通額は国内伸び悩みで通期0.6%増(第1四半期2%減、第2四半期2%減、第3四半期1%減、第4四半期5%増)にとどまったが、国内流通額を四半期別に見ると第1四半期3%減、第2四半期4%減、第3四半期2%減に対して、第4四半期2%増となり復調傾向としている。
Paid事業は売上高が同30.9%増の3億52百万円、営業利益が20百万円の黒字(前々期は16百万円の赤字)だった。増収効果で営業損益が改善した。売掛債権保証事業は売上高が同17.3%増の6億66百万円、営業利益が同50.7%増の1億11百万円だった。事業用家賃保証サービスや提携案件も寄与して保証残高が順調に増加した。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期5億33百万円、第2四半期5億44百万円、第3四半期5億64百万円、第4四半期5億87百万円、営業利益は第1四半期87百万円、第2四半期96百万円、第3四半期97百万円、第4四半期1億13百万円だった。
■17年4月期は先行投資負担だが増収増益予想
今期(17年4月期)連結業績予想(6月10日公表)は、売上高が前期(16年4月期)比12.1%増の25億円、営業利益が同6.7%増の4億20百万円、経常利益が同14.2%増の4億20百万円、純利益が同4.4%増の2億50百万円としている。配当予想は未定としている。
成長スピードを加速するための先行投資期間と位置付けて、経営基盤強化に向けた集中投資を計画しているため、人件費、広告宣伝費、開発費などが増加して小幅増益予想としている。ただしスーパーデリバリー国内流通額の復調、越境ECサービスSDexportの規模拡大、COREC、Paid事業、売掛債権保証事業の順調な拡大で2桁増収予想である。収益拡大基調に変化はないだろう。
■株価は調整一巡して出直り期待
株価の動き(16年3月29日付で東証1部に市場変更)を見ると、地合い悪化の影響で戻り高値圏から急反落した。ただし2月の年初来安値393円まで下押すことなく切り返しの動きを強めている。
6月29日の終値519円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS14円25銭で算出)は36~37倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS101円17銭で算出)は5.1倍近辺である。時価総額は約95億円である。
週足チャートで見ると52週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。調整一巡して出直りが期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)