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アイリッジは調整一巡して反発、16年7月期増収増益予想
- 2016/6/30 08:34
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイリッジ<3917>(東マ)はスマホ向けのO2Oソリューション事業を主力として、FinTechソリューションも推進している。popinfo利用ユーザー数は16年5月に4000万を突破して増加スピードが加速している。16年7月期は人材採用など先行投資費用を吸収して増収増益予想である。そして中期成長期待は強い。株価は地合い悪化の影響で安値圏だが調整一巡して反発展開だろう。
■O2Oソリューション事業を展開
09年11月携帯電話待ち受け画面にポップアップで情報配信するフィーチャーフォン対応popinfo(ポップインフォ)提供開始、10年2月popinfoに配信エリア設定可能なGPS配信機能を搭載、10年7月スマートフォン対応popinfo提供開始した。
自社開発O2Oソリューション(組み込み型プログラム)である位置情報連動型プッシュ通知ASPのpopinfo提供をコアサービスとして、popinfoを搭載したO2Oアプリの企画・開発、さらに集客・販促を中心としたO2Oマーケティング企画・運用支援の提供まで、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を包括的に展開している。
O2O(online to offline)とは、消費者にオンライン(webサイトやアプリ)を通じて各種情報を提供し、オフライン(実店舗)への集客や販売促進に繋げるマーケティング手法である。
位置情報連動型プッシュ通知ASPのpopinfoは、企業や店舗のスマートフォンアプリに組み込み、アプリユーザーのスマホ待ち受け画面に、伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報やメッセージをプッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。そして「位置情報×属性情報×時間」を組み合わせて指定した場所・人・時間帯で配信が可能なため、たとえばアプリユーザーが実店舗指定エリアに接近するとイベント・セール・タイムサービスの情報を配信するなど、実店舗への誘導・集客や販売促進に高い効果を発揮する。
■導入アプリ数・利用ユーザー数は増加基調
O2Oやオムニチャネル化の進展とともに、popinfo導入アプリ数およびアプリ利用ユーザー数とも増加基調である。
15年10月現在、GU(ジーユー)、三井ショッピングパーク、三菱東京UFJ銀行、三井住友カード、阪急阪神、東急電鉄、トリンプをはじめ、小売・流通、金融、交通など業種を問わず大企業中心に採用され、popinfo導入アプリ数は300アプリ(導入社数ベースでは100社弱)を超えている。当社の第3位株主であるNTTデータ<9613>経由の導入も増加基調である。
09年サービス開始したpopinfoの利用ユーザー数(プッシュ通知配信に同意しているユーザー数、アプリごとにカウント)は14年1月に1000万突破、14年9月に1500万突破、15年3月に2000万突破、15年9月に2500万突破、16年1月に3000万突破、16年3月に3500万突破、そして16年5月に4000万を突破して増加スピードが加速している。
16年4月には東京都港区「港区防災アプリ」に導入され、新生銀行のサイト常駐型コンシェルジュサービス「アレコレ相談室」導入支援、シダックスグループのレストランカラオケ・シダックス(全国約270店舗)のスマホ向けアプリのリニューアル開発支援を行った。16年5月にはミサワホーム「ミサワオーナーズクラブ」アプリ、宮城県岩沼市「岩沼市防災アプリ」に導入された。
当社の成長要因として、外部要因ではスマホの普及とともにスマホを活用した企業のマーケティング活動が活発化していること、内部要因としてO2Oアプリ開発・リリース後も「新店舗オープンや季節イベントなどに応じたアプリ内企画」「利便性向上や機能追加」などに継続的に取り組んでいることがあげられる。O2O関連の技術面だけでなく、集客・販売促進の企画ノウハウも蓄積して、O2Oソリューションを包括的に展開していることが強みだ。
■顧客層拡大やサービスラインナップ拡充を推進
さらなる成長に向けて顧客層拡大(大手企業への深堀、中堅企業への拡大)、およびサービスラインナップ拡充(popinfoの情報配信機能を軸として、アナリティクス機能、クーポン機能、ポイント管理機能、iBeaconを用いた来店検知機能、ゲーム機能、アプリ決済機能など)による単価上昇に取り組んでいる。
より効果的なO2Oマーケティングを実現するため、ビッグデータ解析の活用によって従来よりも精度の高いターゲティング機能の整備を図る、ポイント残高管理機能を強化するなど、従来の集客・販売促進だけでなくターゲティングや決済までを網羅する方針だ。16年3月にはスマホアプリ向けポイントシステム「popinfoポイント」の提供を開始した。
■中期成長に向けてフィンテックとO2Oの融合を推進
15年12月テックビューロと業務提携した。テックビューロの国内唯一のプライベート・ブロックチェーン技術「mijin」を利用することで、高いセキュリティと効率の良いアプリ開発が可能になるため、当社の位置連動ソリューションであるpopinfoを組み合わせてフィンテックとO2Oを融合し、信頼性の高いフィンテック関連スマホ用アプリの共同開発を開始する。
■アライアンス戦略も積極化
16年3月NTTドコモのO2O戦略子会社であるロケーションバリューと、O2Oアプリ開発・マーケティング分野の戦略的パートナーとして業務提携した。当社のpopinfoとロケーションバリューのModuleAppsは、O2Oソリューションの特徴や主要顧客業種などが異なっているため、開発リソース連携などで高い補完関係が実現できるとしている。また当社の約4000万ユーザー(16年5月現在)、ロケーションバリューの約1200万ユーザー、合計で5000万ユーザーを超える国内最大級のO2O連携となる。
また16年3月には、既存株主であるクレディセゾン<8253>が当社株式を追加取得(デジタルガレージ子会社で当社の第2位株主DGインキュベーションが保有株式のうち24万株をクレディセゾンに譲渡)し、当社、クレディセゾンおよびデジタルガレージ<4819>との3社連携を強化した。FinTechソリューションの共同開発を推進する。
■ストック型ビジネスモデル、利用ユーザー数増加で収益拡大基調
収益はアプリ利用ユーザー数に応じた従量課金型の月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)、およびアプリ開発・コンサル等(popinfoを組み込んだO2Oアプリ開発に係る収入、O2O促進マーケティングに係る収入)である。導入企業数増加と利用ユーザー数増加に伴って収益が積み上がるストック型ビジネスモデルだ。
利用ユーザー数の増加で収益は拡大基調である。15年7月期サービス別売上高構成比はO2O関連96.4%(うち月額報酬25.7%、アプリ開発・コンサル等70.7%)、その他3.6%だった。15年7月期末popinfo利用ユーザー数は14年7月期末比1027万増加の2403万だった。アプリ開発・コンサル等売上高のうち既存取引先は約6割、新規取引先は約4割だった。
15年7月期の売上総利益率は41.1%で14年7月期比0.3ポイント低下、販管費比率は26.6%で同9.1ポイント低下、売上高営業利益率は14.5%で同8.8ポイント上昇、ROEは12.2%で同7.0ポイント上昇、自己資本比率は82.4%で同0.4ポイント上昇した。
四半期別売上高の推移は、第1四半期1億20百万円、第2四半期1億54百万円、第3四半期2億56百万円、第4四半期2億13百万円だった。現在はアプリ開発・コンサル等の売上高構成比が高いため、多くの取引先の決算月(3月)を含む第3四半期の構成比が高くなる傾向があるとしている。
■16年7月期第3四半期累計は先行投資負担で減益だが大幅増収基調
今期(16年7月期)第3四半期累計(8~4月)の非連結業績は、売上高が前年同期比63.6%増の8億69百万円、営業利益が同10.8%減の79百万円、経常利益が同11.2%減の79百万円、純利益が同11.4%減の51百万円だった。中期成長に向けた採用費、人件費、自社サービス開発コストなどの先行投資負担で減益だったが、利用ユーザー数増加に伴う大幅増収基調に変化はないようだ。
サービス別売上高はO2O関連が同64.3%増の8億69百万円(月額報酬が同53.2%増の2億06百万円、アプリ開発・コンサル等が同68.2%増の6億63百万円)だった。アプリ開発・コンサル等売上高のうち既存取引先は7割強、新規取引先は3割弱だった。popinfo利用ユーザー数は16年4月末3741万(15年7月末比1338万増加)で、16年5月末には4022万(15年7月末比1619万増加)に達している。
売上総利益は同41.8%増加したが、売上総利益率は36.7%で同5.6ポイント低下した。サービスラインナップ拡充の取り組みなどで原価が増加した。販管費は同76.1%増加し、販管費比率は27.6%で同2.0ポイント上昇した。人員増に伴い人件費が増加した。16年4月末の人員は57名となり、15年7月末比25名増加した。自社サービス開発、および外注から内製への切り替えによる原価率改善に向けて人材を積極採用している。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期2億29百万円、第2四半期2億62百万円、第3四半期3億78百万円、営業利益は第1四半期10百万円、第2四半期10百万円、第3四半期59百万円だった。増収基調に変化はなく、売上総利益率も第1四半期34.0%、第2四半期35.2%、第3四半期39.4%と上昇傾向を強めている。
■16年7月期通期は先行投資負担を大幅増収で吸収して増益予想
今期(16年7月期)通期の非連結業績予想(3月1日に売上高を増額、利益を減額)は、売上高が前期(15年7月期)比49.6%増の11億14百万円、営業利益が同11.5%増の1億20百万円、経常利益が同11.1%増の1億20百万円、純利益が同10.6%増の80百万円としている。配当予想は無配継続としている。
月額報酬はpopinfo利用ユーザー数増加、アプリ開発・コンサル等は既存取引先との取引拡大や新規取引先の開拓が順調に推移して大幅増収基調である。先行投資負担を大幅増収で吸収して増益予想である。なお16年7月期末人員は60名程度となる見込みだ。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が78.0%、営業利益が65.8%、経常利益が65.8%、純利益が63.8%である。利益進捗率が低水準の形だが、四半期別売上総利益率が上昇傾向であることや、内製化による原価率改善効果が第4四半期に顕在化することを考慮すれば通期予想は達成可能だろう。
popinfo利用ユーザー数については当面の目標として20年を目途に1億人超を目指している。顧客層の拡大、アプリ決済などサービスラインナップ拡充による単価上昇、開発内製化による売上総利益率改善、そしてpopinfo利用ユーザー数増加に伴うストック型収益(月額報酬)の構成比上昇などで、中期的にも収益拡大基調が期待される。
■株価は調整一巡して反発期待
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響を受けて6月24日に2821円まで調整する場面があったが、2月の上場来安値2647円を割り込むことなく切り返しの動きを強めている。
6月29日の終値3270円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS29円14銭で算出)は112倍近辺、実績PBR(前期実績のBPS289円82銭で算出)は11倍近辺である。時価総額は約90億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、中期成長期待が強く、FinTech関連のテーマ性も注目される。調整一巡して反発展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)