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日本エンタープライズは16年5月期に続き17年5月期も増収増益基調期待
- 2016/7/5 07:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信、店頭アフィリエイト広告、企業向けソリューションなどを展開し、成長分野の企業間電子商取引分野やM2M/IoT分野への事業領域拡大も推進している。16年5月期に続き17年5月期も増収増益基調が期待される。株価は急伸した6月10日の年初来高値から一旦反落したが、自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。なお7月12日に16年5月期決算発表を予定している。
■コンテンツサービス事業とソリューション事業を展開
交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲーム、メール、音楽などのコンテンツを制作してキャリアの定額制サービスで配信するコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開している。
15年5月期のセグメント別売上高構成比はコンテンツサービス事業49%、ソリューション事業51%、営業利益構成比(連結調整前)はコンテンツサービス事業76%、ソリューション事業24%だった。
配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略としている。そしてM&A・アライアンスも積極活用して事業領域を広げ、ネイティブアプリや法人向け業務支援サービスを新たな収益柱に育成する方針だ。
■中国では携帯電話販売事業を展開
中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営や電子コミック配信サービスなどを手掛けている。中国・上海の携帯電話販売事業はキャリアの販売施策変更に影響されない収益構造構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、コスト削減などの収益改善策を推進している。
15年10月には中国向けサンリオキャラクター商品卸売事業を行う合弁子会社NE銀潤(当社出資比率51.0%)を設立した。15年12月には北京業主行網絡科技有限公司の出資持分を売却した。中国の携帯通信事業者(チャイナモバイル、チャイナユニコム、チャイナテレコム)向けにモバイルコンテンツを配信してきたが、コンテンツプラットフォームの多角化でICPライセンス保有メリットが低下した。
今後の中国における事業展開については、携帯電話等販売事業(チャイナテレコムの携帯電話販売店2店舗の運営)、卸売をはじめとしたソリューション事業(NE銀潤に対するサンリオキャラクター商品の日本からの輸出など)、およびモバイルコンテンツ事業を積極的に展開する。
16年4月には中国の子会社・因特瑞思(北京)が、業務提携先である中国大手通信事業者の上海電信からの委託を受けて、携帯電話販売店「上海電信 御橋路店」を開店した。
■中期成長に向けてM&A・アライアンスを積極活用
ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化、成長分野のM2M/IoTへの事業領域拡大など、中期成長に向けてM&A・アライアンスも積極活用している。
13年3月音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月子会社のHighLabを設立、14年11月アプリ開発の会津ラボを子会社化、15年6月スマートコミュニティ事業および太陽光発電・販売の合弁子会社として山口再エネ・ファクトリーを設立、15年7月プロモートを子会社化した。15年12月クルーズ<2138>が運営するフリマアプリ「Dealing」サービスを譲り受けて電子商取引(EC)分野に参入、16年2月スマートバリュー<9417>と業務資本提携、16年4月エキサイト<3754>と業務提携した。
■法人向け業務支援サービスを収益柱に育成方針、BtoB分野に本格参入
法人向け事業では14年8月スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発、14年10月ビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。
15年5月には子会社の会津ラボが会津若松市の「次世代型食品生産トライアル事業」に対するスマート農業支援を発表、15年6月にはIDCフロンティアとクラウド分野で業務提携してクラウド型統合運用監視サービス「プレミアクラウド」サービスを開始、15年8月には千葉県のスマートフォンアプリ「ちばMy Style Diary」を開発・運用開始、15年9月には子会社の会津ラボが山口県周南市の徳山動物園でナビゲーション「あるく動物ナビ」のサービスを開始した。
16年1月には千葉県山武群横芝光町の「横芝光町情報発信アプリサービス開発業務」を受託、16年2月には静岡県下田市の子育て支援アプリ「しもだこどもDiary」を発表した。16年5月にはグループ会社の山口再エネ・ファクトリーが山口県宇部市に建設していた「東岐波太陽光発電所」が竣工した。
1 6年6月には東京都中央卸売市場築地市場・東京魚市場卸協同組合と協業して電子商取引事業を行う100%子会社いなせりを設立した。同組合に所属する仲卸業者が飲食事業を展開する企業・店舗に向けて鮮魚・水産物を直接販売する電子商取引サービス「いなせり」を16年秋から開始する。これによって企業間(BtoB)EC分野に本格参入する。
■ドローン分野の事業化に向けた技術開発も推進
16年3月には子会社の会津ラボが、会津大学との産学連携により開発したドローン群制御技術「Dronet(ドロネット)」を、ドローン展示会「Japan Drone 2016」で発表した。会津大学が研究を主導し、会津ラボが主な開発を担当した。
複数のドローンを給電ケーブルで接続し、ドローン間のケーブルの角度からドローン同士の距離を一定に保ち、ドローン群全体を安定制御する技術である。事業化に向けた開発も会津ラボが行う。
■15年5月期は販管費増加
15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期13億16百万円、第2四半期11億98百万円、第3四半期12億26百万円、第4四半期13億76百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期10百万円、第3四半期52百万円、第4四半期75百万円だった。
15年5月期はソリューション事業の売上が大幅に伸長したが、原価率の上昇や販管費の増加などで営業損益が低調だった。売上総利益率は47.1%で14年5月期比1.5ポイント低下、販管費比率は43.4%で同2.2ポイント上昇、ROEは3.8%で同7.1ポイント低下、自己資本比率は81.6%で同5.9ポイント上昇した。配当性向は64.8%だった。
■16年5月期第3四半期累計は増収・営業増益
前期(16年5月期)第3四半期累計連結業績は、前年同期比7.5%増収、同32.8%営業増益、同33.1%経常増益、同20.2%最終減益だった。投資有価証券売却益が減少して最終減益だが、ソリューション事業が大幅増収となり、販管費抑制も寄与して営業増益、経常増益だった。
ソリューション事業の売上構成比上昇に伴って売上総利益は同1.3%減少し、売上総利益率は44.0%で同4.0ポイント低下した。ただし販管費は同3.6%減少し、販管費比率は40.2%で同4.7ポイント低下した。広告宣伝費が減少した。
コンテンツサービス事業は売上高が同11.4%減の16億93百万円(交通情報6.5%減収、エンターテインメント7.9%減収、ライフスタイル31.3%減収)、営業利益(連結調整前)が同7.0%増の4億70百万円、ソリューション事業は売上高が同27.3%増の23億28百万円(ソリューション50.4%増収、広告同0.1%減収、海外71.2%増収)、営業利益が同26.7%減の95百万円だった。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期13億19百万円、第2四半期12億28百万円、第3四半期14億75百万円、営業利益は第1四半期57百万円、第2四半期14百万円の赤字、第3四半期1億09百万円だった。
■16年5月期通期増収増益予想、17年5月期も増収増益基調期待
前期(16年5月期)通期の連結業績予想(5月27日に増額修正)は、売上高が前々期(15年5月期)比7.5%増の55億円、営業利益が同32.3%増の2億50百万円、経常利益が同22.6%増の2億50百万円、純利益が同80.8%増の3億20百万円としている。配当予想(7月10日公表)は前期と同額の年間3円(期末一括)で予想配当性向は38.0%となる。
前期(16年5月期)はコスト削減効果や投資有価証券売却益2億55百万円計上も寄与して大幅増益予想である。そして今期(17年5月期)は法人向け事業の収益も寄与して増収増益基調が期待される。
■株価は自律調整一巡して上値試す
株価の動きを見ると、急伸した6月10日の年初来高値399円から地合い悪化も影響して一旦反落したが、6月24日の直近安値266円から切り返しの動きを強めている。
7月4日の終値324円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS7円89銭で算出)は41倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.9%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS126円65銭で算出)は2.6倍近辺である。時価総額は約131億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形となった。自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)