【鈴木雅光の投信Now】50歳からの「投機」は止めましょう
- 2016/7/7 12:45
- 株式投資News
ここ数年、さまざまな個人投資家に話を聞いてきました。といっても、投資信託でコツコツ運用しているのではなく、株式のデイトレーダー、スイングトレーダーが中心です。中には、500万円を数億円にまで殖やしている人もいます。
人間は皆、お金に対する欲望がありますから、こういう人たちの話を聞くと、「自分も億を稼げるのではないか」と思ってしまいがちです。
で、最近の話ですが、私の知人が52歳で、某大手メーカーの子会社をリストラされました。次の仕事はなかなか見つかりません。そこで、退職金を何とか増やしたいので、株式投資について教えて欲しいというのです。ちなみに、彼のこれまでの人生において、株式はおろか投資信託を買った経験もありません。
「悪いことは言わないから、株式投資やFXは止めましょう」とアドバイスしました。不服そうでしたが、それが彼のためです。
まず、退職金はご褒美でも何でもなく、単にこれからの長い老後生活を支える生活費であり、本来、現役時代に受け取れるはずだった給与の一部を会社がストックして、後払いにしているだけのものに過ぎないという認識を持ってください。親が超お金持ちで莫大な相続財産が得られる人は別ですが、大概の人は退職金のようにまとまったお金を一度に得る機会は、この先、ほとんどないはずです。
だから大きく増やしたいのかも知れませんが、私がこの数年で会ってきた投資家は皆、一度は数百万、数千万単位で大きな損を被っています。それでも立ち直って今があるのは、彼らが皆、若いうちに大失敗をしているからです。
でも、50代でこれまで投資経験が全くなかった人が、いきなり株式投資で数百万円の損失を被ったら、恐らく再起は難しいでしょうし、何よりもその後の人生が狂ってしまう恐れもあります。
もちろん、だからといって預貯金に全額預けておくことを是とするつもりはありません。10年、15年で見た時に、年平均3~5%程度のリターンを稼げるような投資信託で運用すれば良いのです。世界中の株式、債券に分散投資するバランス型ファンドなどが、これに該当します。50代になって初めて資産運用をする必要性に気付いた人は、株式の短期トレードやFXのような、「投機」に近い運用ではなく、仮にマーケットが下げても大きくやられずに済む、バランス型の投資信託で積立投資をすることをお勧めします。
(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)