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インフォコムは調整一巡して上値試す、17年3月期営業増益・連続増配予想
- 2016/7/8 07:49
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォコム<4348>(JQS)は、ITサービスや電子書籍配信サービスを主力としてIoT領域の事業創出も積極推進し、17年3月期営業増益・連続増配予想である。株価は5月の年初来高値から反落したが、調整一巡して上値を試す展開だろう。なお7月26日に第1四半期の業績発表を予定している。
■ITサービス事業とネットビジネス事業を展開
帝人<3401>グループで、企業向けITサービス(医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、一般企業向けSIのエンタープライズ事業、ERPソフト「GRANDIT」や緊急連絡・安全確認サービスなどのサービスビジネス事業)、および一般消費者向けネットビジネス(子会社アムタスの電子書籍配信サービス、eコマース、各種デジタルコンテンツの提供)を展開している。
14年9月には新規事業の発掘を目的として米国シリコンバレーに連結子会社のコーポレートファンド(総額20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立し、16年3月期末時点で投資実績は20社超となっている。
また中期成長に向けてグループ再編や戦略的M&A・アライアンスを積極推進している。13年9月医薬品業界CRM事業強化に向けてミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立した。14年3月EC事業運営効率化に向けて、アムタスグループ内で食品EC事業を展開するドゥマンを連結子会社化、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンに統合した。
なお16年3月期のセグメント別売上高構成比はITサービス59%、ネットビジネス41%、営業利益構成比(連結調整前)はITサービス56%、ネットビジネス44%だった。
■ITサービスは完全Web-ERPソフト「GRANDIT」などが主力
ITサービスのサービスビジネス事業では、完全Web-ERPソフト「GRANDIT」の導入企業数850社超、3800サイト超で、緊急連絡・安全確認サービス「エマージェンシーコール」は導入企業数800社超、登録従業員数200万人超の規模に達している。15年9月には企業・団体向けに特化したMVNO(仮想移動体サービス事業者)サービスを開始した。
6月23日には採用事例として、独立行政法人国立公文書館に納入したシステムによる「国立公文書館デジタルアーカイブ」が16年4月1日に正式公開されたと発表している。本サービスは官公庁、研究機関、大学、図書館などに多くの納入実績を持つ当社のデジタルアーカイブシステムパッケージソフト「InfoLib」シリーズによって構築した。
■ネットビジネスは電子書籍配信「めちゃコミック」が主力
ネットビジネスの電子書籍配信サービスでは、06年11月開始のスマートフォン・フィーチャーフォン向け電子書籍配信サービス「めちゃコミック」が国内トップクラスの地位を強固にしている。16年5月の月間サイト来訪ユニークユーザー数は約800万人に達し、月間売上高は14億円を突破して過去最高となった。累計売上高は700億円を突破した。また13年11月開始のマルチデバイス対応電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も拡大基調である。
ソーシャルゲームについては15年4月に自社タイトルの開発・配信を終了し、国内外の人気ミニゲームの流通に特化している。
7月5日には食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」を運営するドゥマンが法人向け手土産ECサイト「カシクル」のサービスを開始すると発表した。
■中期経営計画でヘルスケア、GRANDIT、電子書籍配信を重点3事業
中期経営計画では、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、完全Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、電子書籍配信サービスなどのネットビジネス事業を重点3分野と位置付け、経営目標数値には17年3月期売上高550億円、営業利益50億円、21年3月期売上高1000億円、営業利益100億円を掲げている。
■ヘルスケア事業は新規分野も積極開拓
ヘルスケア事業では帝人との連携も強化しながら、厚生労働省「地域包括ケア」に対応した医療ITからヘルスケアサービスへの展開を強化している。
15年3月ヘルスケア事業の一環としてアスリート支援サービス「ATHLETE STORIES(アスリートストーリーズ)」を開始、15年8月トレーナー向けアプリも提供開始した。15年11月医療事務受託の国内大手で介護サービス事業も展開しているソラスト社(旧日本医療事務センター)と、ヘルスケア事業分野において業務・資本提携(ソラスト社の株式3%取得)した。またリゾートソリューション<5261>とのメンタルヘルスケア事業における協業を開始した。15年12月実施のストレスチェック義務化に合わせてグローバル展開企業のメンタルヘルスケアをサポートする。
7月7日には災害・救急自動車映像伝送システム「V-FAST」が、北海道千歳市消防本部の救急医療システムとして、また京都府災害拠点病院の指定を受けている洛和会音羽病院の救急医療システムとして採用されたと発表している。
■GRANDIT事業はクラウド対応を強化
完全Web-ERPソフト「GRANDIT」(コンソーシアム方式により、業界を代表するSI企業のノウハウを集大成したWeb-ERP)のサービスビジネス事業ではクラウド対応を強化している。
なお「GRANDIT」の開発・販売を推進するGRANDITコンソーシアム(03年10月設立)は、16年4月時点でプライムパートナー14社、ビジネスパートナーを加えると57社で構成され、16年5月にはパシフィックシステムがビジネスパートナーとして加盟した。
16年6月にはグループ経営管理機能を強化した「GRANDIT」新バージョンを投入した。
■電子書籍配信はコンテンツ拡充と海外展開による事業拡大を推進
電子書籍配信サービスの分野では、コンテンツ拡充と海外展開による事業拡大を推進する。14年10月シフトワンと共同で次世代電子コミック「モーションコミック」を開始した。15年2月にはアムタスが、中国でコミック関連事業を展開している厦門優莱柏網絡科技有限公司(ユーラボ社)、および恋愛・乙女系アプリ配信を展開しているKOYONPLETE(コヨンプリート社)(東京都)と業務提携した。コヨンプリート社に関しては第三者割当増資も引き受けた。
15年9月には中国およびアジア地域でのアニメ・マンガ版権の保護や産業の良質な発展の促進を目的として、アムタス、少年画報社(東京都)、業務提携先の中国・ユーラボ社、および中国通信事業者のアニメ・マンガ関連部門、中国政府機関などと共同で、アジア版権保護連盟を設立したと発表した。
中国政府機関も参画することで、版権侵害行為の取り締まりから法的手続きまで行うことができ、出版・版権元および運用企業の利益と権利を守ることが可能になる。中国アニメ・マンガ市場における版権保護と市場育成を進め、将来的には加盟企業・団体を増やすとともに、対象地域を拡大する予定としている。
■IoT領域の事業創出を積極推進
IoT領域の事業創出も積極推進する。15年12月米EverySense社(14年7月IoTおよびM2M領域における共同開発を目的として当社、光電製作所、コーデンテクノインフォの3社共同で設立)が、世界初のIoTデータ交換取引所を日本に開設した。また米Afero社と事業提携した。16年3月IoTで漁業支援を行う共同研究開発プロジェクトのスタートを発表した。米EverySense社、光電製作所、およびブロードバンドタワーと共同で、魚群探知機で収集した漁場データ分析と情報共有基盤構築を推進する。
16年4月には一般社団法人インターネット協会のIoT推進委員会IoT実証実験ワーキンググループが推進するIoTソリューションの有効性実証実験に参画し、当社を含む7社でオフィス内環境モニタリング実証実験をスタートすると発表した。
■ITサービス事業は第4四半期の構成比が高い収益構造
四半期別推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期81億99百万円、第2四半期104億98百万円、第3四半期94億11百万円、第4四半期122億01百万円、営業利益は2億26百万円の赤字、8億16百万円、3億99百万円、26億17百万円だった。16年3月期は売上高が86億88百万円、100億47百万円、90億39百万円、125億42百万円、営業利益が1億54百万円、10億49百万円、8億78百万円、23億46百万円だった。
ITサービス事業は年度末の第4四半期の構成比が高い収益構造である。16年3月期の売上総利益は同1.5%増加し、売上総利益率は45.4%で同0.7ポイント上昇した。販管費は同3.9%減少し、販管費比率は34.4%で同1.4ポイント低下した。ROEは3.5%で同7.4ポイント低下、自己資本比率は66.5%で同6.5ポイント低下した。配当は同3円50銭増配の年間22円(期末一括)で配当性向は82.6%だった。
■16年3月期特別損失計上で最終減益だが、大幅営業・経常増益
前期(16年3月期)連結業績は売上高が前々期(15年3月期)比横ばい、営業利益が同22.8%増益、経常利益が同23.5%増益、純利益が同66.5%減益だった。営業利益と経常利益は上場来最高を更新した。
売上高は米国子会社譲渡、ゲーム子会社清算、eコマース子会社アパレル系事業譲渡などで横ばいにとどまり、特別損失計上で最終減益だったが、GRANDIT事業の堅調推移、売上構成変化による収益性改善、ヘルスケア事業の業績回復、電子書籍配信サービス事業の好調、ソーシャルゲーム事業の自社開発終了などの効果で営業利益と経常利益は大幅増益だった。特別損失では、事業構造改革の一環として新横浜データセンター(DC)によるサービス提供を終了(17年6月末目途)することに伴って、事業再編損25億45百万円を計上した。
セグメント別に見ると、ITサービスは売上高が同4.9%減の237億37百万円、営業利益が同3.0%増の24億71百万円だった。ネットビジネスは売上高が同8.1%増の165億79百万円、営業利益が同62.0%増の19億56百万円だった。なお電子書籍配信サービスの売上高は150億円を突破した。
■17年3月期2桁営業増益・大幅最終増益・増配予想
今期(17年3月期)連結業績予想(4月28日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比11.6%増の450億円、営業利益が同12.9%増の50億円、経常利益が同9.7%増の50億円、純利益が同4.1倍の30億円としている。配当予想は同3円増配の年間25円(第2四半期末10円、期末15円)としている。中間配当を実施する。予想配当性向は22.8%となる。
セグメント別には、ITサービスの売上高が同5.4%増の250億円で営業利益が同5.3%増の26億円、ネットビジネスの売上高が同20.7%増の200億円で営業利益が同23.1%増の24億円の計画としている。
ITサービスでは、ヘルスケアおよび企業向けSI・パッケージ販売が好調に推移し、新事業に係る先行投資などを吸収する。ネットビジネスでは電子書籍配信サービスが一段と拡大する。電子書籍配信サービスの売上高は180億円を目指す。
なお新横浜DCによるサービス提供終了によって、運用コスト低減や、固定資産である建物・設備劣化に対する改修・新規投資の抑制など、データセンターのコモデティ化による売上減少回避なども含めて、10年間で約40億円の費用削減効果が得られる見込みとしている。
中期的にも医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、ネットビジネス事業の重点3分野の成長が加速し、eコマース分野の構造改革効果も寄与して収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度は毎年9月末に実施
株主優待制度については毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。
■株価は5月の年初来高値から反落したが、調整一巡して上値試す
株価の動きを見ると、5月の年初来高値1897円から反落し、地合い悪化も影響して6月24日に1356円まで調整する場面があったが、その後は切り返しの動きを強めている。
7月7日の終値1483円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS109円73銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS769円42銭で算出)は1.9倍近辺である。なお時価総額は約427億円である。
週足チャートで見ると52週移動平均線から切り返してサポートラインを確認した形だ。調整一巡して上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)