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朝日ラバーは調整一巡して反発期待、17年3月期営業増益予想で収益改善基調
- 2016/7/8 07:35
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
朝日ラバー<5162>(JQS)はシリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装LED照明光源カラーキャップやRFIDタグ用ゴム製品などを展開している。17年3月期営業増益予想で収益改善基調である。株価は安値圏だが調整一巡して反発が期待される。なお8月5日に第1四半期の業績発表を予定している。
■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力
シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連などの工業用ゴム製品、スポーツ用ゴム製品(卓球ラケット用ラバー)、医療・衛生用ゴム製品(点滴輸液バッグ用ゴム栓など)、機能製品のRFIDタグ用ゴム製品などを展開している。
自動車内装照明関連で、車載用小型電球の光源カラーキャップ「ASA COLOR LAMPCAP」や、車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が主力製品である。車載用「ASA COLOR LED」は高級車向けに加えて、小型車や軽自動車向けにも採用が拡大している。
16年3月期のセグメント別売上構成比は工業用ゴム事業が81.2%、医療・衛生用ゴム事業が18.8%で、営業利益(連結調整前)構成比は工業用ゴム事業が71.4%、医療・衛生用ゴム事業が28.6%だった。分野別売上構成比は自動車分野が62.6%、医療分野が18.3%、ライフサイエンス分野が6.6%、その他が12.5%だった。地域別売上構成比は国内84.0%、海外16.0%(アジア13.7%、北米2.1%、欧州0.2%)だった。
■マイクロ流体デバイスの新工場(第2白河工場)を着工
NEC<6701>のポータブルDNA解析装置向けマイクロ流体デバイスについては14年10月に量産を開始した。分子接着技術を活用した製品である。
マイクロ流体デバイスの生産能力増強、およびライフサイエンス分野や医療分野における新製品開発推進のため、福島県白河市の白河工場の隣接地に新工場(第2白河工場)を建設する。総投資額は約11億60百万円で16年6月着工した。17年2月竣工予定である。
なお新工場建設および初期導入の生産設備投資は、福島県の「平成27年度福島医療・福祉機器開発・事業化事業費補助金」の補助対象事業として採択・交付決定された。交付金額は最大7億50百万円で設備稼働後に受領する。これによって補助金収入を特別利益に計上し、補助金のうち固定資産取得に該当する分について圧縮記帳処理を行い、固定資産圧縮損として特別損失を計上する。
■見やすく疲れにくい自動車内装照明の開発開始
15年9月には埼玉大学と連携して、色のバラつきが少なく視認性に優れ、疲労低減性のある自動車内装照明用LEDの蛍光体層の共同開発を開始すると発表した。LEDの光を波長変換する蛍光体を組み合わせ、人間工学に基づいて運転者にとって見やすく疲れにくい照明の開発を目指す。
この共同開発は経済産業省の「平成27年度 革新的ものづくり産業創出連携促進事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)」として申請し、補助金の採択を受けた。事業期間は15年度から3年間、補助金額は3年間で9750万円の予定としている。
■15年3月期の営業損益悪化は一過性の特殊要因が影響
四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期14億85百万円、第2四半期15億40百万円、第3四半期15億21百万円、第4四半期15億13百万円、営業利益は55百万円、1億01百万円、50百万円の赤字、8百万円だった。16年3月期は売上高が13億96百万円、15億02百万円、14億72百万円、16億06百万円、営業利益が26百万円、49百万円、46百万円、1億16百万円だった。
15年3月期の販管費に計上した役員退職慰労引当金繰入額計上が一巡して営業損益は改善基調である。なお16年3月期の売上総利益は同8.2%減少し、売上総利益率は24.1%で同1.8ポイント低下した。販管費は同17.3%減少し、販管費比率は20.1%で同3.9ポイント低下した。特別利益では15年3月期計上した受取保険金3億12百万円が一巡した。ROEは3.7%で同5.9ポイント低下、自己資本比率は40.1%で同0.8ポイント上昇した。配当性向は44.6%だった。利益配分については、株主資本の充実と長期的な収益力の維持・向上、業績に裏付けられた安定的な配当の継続を原則としている。
■16年3月期は販管費の特殊要因が一巡して大幅営業増益
16年3月期連結業績は、15年3月期比1.4%減収、同2.1倍営業増益、同92.8%経常増益、同60.0%最終減益だった。工業用ゴム事業、医療・衛生用ゴム事業とも減収となり、純利益は15年3月期の特別利益に計上した受取保険金が一巡して減益だったが、15年3月期の販管費に計上した取締役2名の役員退職慰労引当金繰入額が一巡して大幅営業増益・経常増益だった。
セグメント別に見ると、工業用ゴム事業は売上高が同0.9%減の48億50百万円、営業利益(連結調整前)が同27.0%減の3億20百万円だった。自動車内装照明用「ASA COLOR LED」が好調だったが、機能製品であるRFIDタグ用ゴム製品の海外向けが、新タイプへの切り替えに伴う顧客側の在庫調整が長引いたため大幅減少した。なお3月から新タイプの量産がスタートした。
医療・衛生用ゴム事業は、売上高が同3.3%減の11億26百万円、営業利益が同1.3%増の1億28百万円だった。プレフィルドシリンジ用ガスケットが好調だったが、採血用・薬液混注用ゴム栓は新機種への切り替えに伴う受注調整のため減少した。
分野別売上高は、自動車分野が同7.2%増の37億40百万円、医療分野が同2.4%減の10億95百万円、ライフサイエンス分野が同1.6%増の3億95百万円、その他が同29.7%減の7億44百万円で、その他はRFIDタグ用ゴム製品が大幅減少した。主要製品の売上高は自動車内装照明用「ASA COLOR LED」が同8.7%増の23億03百万円、卓球用ラケットカバーが同6.6%減の3億16百万円、ディスポーザブル用ゴム製品が同2.4%減の10億95百万円、RFIDタグ用ゴム製品が同54.4%減の3億04百万円だった。
■17年3月期営業増益予想で収益改善基調期待
今期(17年3月期)連結業績予想(5月12日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比3.7%増の62億円、営業利益が同14.0%増の2億71百万円、経常利益が同2.4%減の2億30百万円、純利益が同17.0%増の1億54百万円としている。配当予想は前期と同額の年間13円(第2四半期末3円、期末10円)で予想配当性向は37.7%となる。
セグメント別売上高の計画は、工業用ゴム事業が同3.7%増の50億32百万円、医療・衛生用ゴム事業が同3.7%増の11億68百万円、分野別売上高の計画は、自動車が同3.0%減の36億28百万円、医療が同3.6%増の11億35百万円、ライフサイエンスが同3.2%増の4億08百万円、その他が同38.1%増の10億28百万円としている。
前期低調だったRFIDタグ用ゴム製品、卓球用ラケットカバー、さらに白色レジスト材などのシリコーン応用製品の受注が増加する見込みである。売上総利益率は同0.5ポイント上昇の24.6%を想定している。収益改善基調だろう。
■中期経営計画を見直し
16年2月に第11次3ヵ年中期経営計画(V-1計画)(14年5月策定、15年3月期~17年3月期)の見直しを発表した。ライフサイエンス分野のマイクロ流体デバイス製品について、最終年度17年3月期売上高目標を12.5億円としていたが、主力案件の受注が計画を大幅に下回る見込みとなったことや、他の開発案件の量産開始も遅れる見込みとなった。
事業環境等も勘案した結果、17年3月期の経営目標数値を、従来の売上高80億円(自動車37億円、医療13億円、ライフサイエンス16億50百万円、その他13億50百万円)で営業利益8億円から、売上高62億円(自動車36億円、医療11億円、ライフサイエンス4億円、その他10億円)で営業利益2億70百万円とした。マイクロ流体デバイスを生産する新工場についても着工・竣工を延期し、16年6月着工予定・17年2月竣工予定とした。
なお20年3月期を見据えた長期ビジョンを「AR-2020VISION」として、前半3ヵ年(15年3月期~17年3月期)を第1ステージ「V-1計画」、後半3ヵ年(18年3月期~20年3月期)を第2ステージ「V-2計画」と位置付けている。中期経営方針については、既存事業の質・量の継続的成長(国内事業は質的成長、海外事業は量的成長)、新市場・新分野への事業展開、20年に向けた事業基盤の強化・整備としている。
■株価は安値圏だが調整一巡して反発期待
株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して6月24日の年初来安値491円まで下押した。その後は500円台前半の水準で推移している。
7月7日の終値531円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS34円44銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS792円79銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約25億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、指標面に割安感もあり、調整一巡して反発が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)