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カナモトは16年10月期減益予想だが景気対策関連として注目
- 2016/7/13 07:24
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
カナモト<9678>(東1)は建設機械レンタルの大手である。長期ビジョンで成長エンジンと位置付ける海外展開も強化している。16年10月期は減価償却費増加などで減益予想だが、景気対策関連として注目される。株価は年初来安値圏から切り返す動きだ。出直り展開だろう。
■建設機械レンタルの大手
建設機械レンタルを主力として、海外向け中古建設機械販売、土木・建築工事用鉄鋼製品販売、IT機器・イベント関連レンタルなども展開している。理工系研究開発要員派遣のカナモトエンジニアリングは15年8月に全株式を技術者派遣会社のトラスト・テック<2154>に譲渡した。
北海道を地盤として東北、関東、中部、近畿、九州にも営業拠点網を拡充して全国展開と業容拡大を加速している。16年6月には山形エリア6店舗目となる新庄営業所(山形県新庄市)と、関東エリア33店舗目で山梨県初拠点となる山梨南営業所(山梨県巨摩郡)を開設し、当社の全国営業拠点数は182拠点、グループ合計では449拠点となった。
■M&Aも活用して業容拡大
M&Aも活用して業容を拡大している。12年6月道路建機レンタルと道路工事施工のユナイトを子会社化、15年7月大手ゼネコン向け汎用小型建設機械レンタルの有限会社ヱーワ商会(埼玉県)の全株式を取得(非連結子会社)した。
15年11月名岐エンジニアリング(岐阜県)および東友エンジニアリング(東京都)で構成されるグループと、一部株式取得を含めて建設機械レンタル事業に関して業務提携した。トンネル工事向け有力プラントメーカーの名岐エンジニアリング、トンネル工事向けレンタルに強みを持つ東友エンジニアリングとの連携により、トンネル工事への対応力を高める。
16年3月ニシケン(福岡県)を子会社化(出資比率76.62%)した。同社は建設機械レンタル事業ならびに福祉介護用品レンタル事業を福岡県中心に九州各県や中国・近畿地方に展開している。16年5月サッポロドラッグストアー<2786>と共同で、建設現場事務所で使用される日用品セットを販売すると発表した。北海道内でのサービスとしてスタートするが、将来的には全国規模でのサービス拡充を計画している。
■17年10月期ROE10%以上目標、成長エンジンとして海外展開強化
14年9月策定の新長期ビジョンおよび中期経営計画では、55期の19年を見据えたグループの目指す姿を新長期ビジョン「BULL55」として示し、実行計画である3ヵ年中期経営計画「BULL53」では目標数値として17年10月期売上高1500億円、営業利益190億円、ROA5.0%以上、ROE10%以上などを掲げた。
新長期ビジョン「BULL55」では海外展開強化を今後の成長エンジンと位置付けている。そして15年1月インドネシア現地法人が営業開始、15年6月ベトナム現地パートナー企業との合弁会社が営業開始、15年7月タイ現地パートナー企業との合弁会社が営業開始、16年3月フィリピン現地パートナー企業との合弁会社が営業開始した。
■公共工事が増加する第1四半期の構成比が高い収益構造
四半期別業績推移を見ると、14年10月期は売上高が第1四半期331億48百万円、第2四半期310億64百万円、第3四半期284億45百万円、第4四半期328億98百万円で、営業利益が56億51百万円、44億21百万円、27億41百万円、36億41百万円だった。15年10月期は売上高が363億27百万円、319億80百万円、306億49百万円、343億36百万円で、営業利益が63億06百万円、43億46百万円、18億46百万円、37億72百万円だった。
公共工事が増加する第1四半期の構成比が高い収益構造である。なお15年10月期の売上総利益率は31.1%で14年6月期比0.9ポイント低下、販管費比率は18.9%で同横ばい、ROEは14.4%で同1.4ポイント低下、自己資本比率は34.3%で同0.7ポイント上昇した。配当性向は13.1%だった。配当政策については事業環境に関わらず一定の配当を安定して行い、業績に応じて利益還元を加えていきたいとしている。そのうえで、財務体質の強化と将来の積極的事業展開に必要な内部留保の充実を図ることを基本方針としている。
15年10月期のセグメント別業績は、建設関連事業の売上高が同6.0%増の1235億72百万円、営業利益(連結調整前)が同2.0%減の155億92百万円だった。地域別には北海道地区が9.5%減収、東北地区が19.7%増収、関東信越地区が4.8%増収、関西中部地区が2.0%増収、九州沖縄地区が1.5%減収で、東北地区と関東信越地区が好調だった。中古建機販売は一定期間を経年した機械の計画的売却を進めて同26.6%増収だった。その他事業は売上高が同8.2%増の97億19百万円、営業利益が同39.4%増の3億01百万円だった。
■16年10月期第2四半期累計は減益
今期(16年10月期)第2四半期累計(11~4月)連結業績は、前年同期比0.5%増収、同19.2%営業減益、同22.6%経常減益、同23.9%最終減益だった。
民間建設投資は堅調だが、地方におけるインフラ整備は総体的に先送り傾向が強く、全体として売上高は横ばいにとどまった。利益面ではレンタル用資産への継続的投資に伴う減価償却費の増加も影響した。売上総利益は同5.8%減少し、売上総利益率は31.0%で同2.0ポイント低下した。販管費は同6.2%増加し、販管費比率は18.4%で同1.0ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益1億43百万円、今期は差損1億98百万円)した。
セグメント別動向を見ると、建設関連は売上高が同0.5%増の643億11百万円、営業利益(連結調整前)が同20.3%減の82億49百万円だった。東北や首都圏は堅調だったが、その他の地域は公共工事先送りでレンタル需要が想定以上に減少した。中古建機販売は計画どおりの売却にとどめて同3.1%減少した。その他は売上高が同0.8%増の43億30百万円、営業利益が同28.7%増の1億53百万円だった。
四半期別に見ると、売上高は第1四半期350億79百万円、第2四半期333億83百万円、営業利益は第1四半期40億69百万円、第2四半期45億36百万円だった。なお第2四半期からニシケンを新規連結した。
■16年10月期通期の利益予想を減額修正
今期(16年10月期)通期の連結業績予想(6月10日に売上高を増額、利益を減額修正)は、売上高が前期(15年10月期)比7.4%増の1432億円、営業利益が同10.1%減の146億30百万円、経常利益が同12.8%減の141億円、純利益が同10.5%減の85億50百万円としている。配当予想(12月9日公表)は同10円増配の年間45円(第2四半期末15円、期末30円)で予想配当性向は18.6%となる。
東北や首都圏での建設需要は堅調だが、その他地域では公共工事着工遅延で建設機械レンタル需要が停滞する見込みだ。また関東・関西の都市圏や未出店エリアへの出店を加速させて強固な営業基盤を構築するため減価償却費が増加する。なお通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高47.8%、営業利益58.8%、経常利益58.5%、純利益58.1%である。第1四半期の構成比が高い収益構造を考慮しても順調な水準だろう。
■中期的には事業環境良好で収益拡大基調
国内では震災復興関連工事、激甚災害現場復旧工事、防災・減災・耐震化関連工事、老朽化インフラ補修・更新関連工事、都市再開発関連工事などが活発であり、リニア新幹線関連工事や20年東京夏季五輪関連工事も本格化する。来期(17年10月期)は景気対策の効果も期待される。中期的に良好な事業環境に変化はなく、建機レンタル需要は高水準で推移することが予想される。
■株価は景気対策期待で急反発
株価の動きを見ると、16年10月期利益予想減額を嫌気し、地合い悪化も影響して7月8日の年初来安値1841円まで調整した。ただし景気対策への期待感を強めて急反発している。7月12日は2161円まで上伸する場面があった。
7月12日の終値2106円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS241円94銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間45円で算出)は2.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1969円16銭で算出)は1.1倍近辺である。なお時価総額は約760億円である。
日足チャートで見ると戻りを押さえていた25日移動平均線突破の動きを強めている。調整一巡して強基調に転換する形だ。景気対策関連として注目され、出直り展開だろう。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)