【ドクター箱崎幸也の健康増進実践法】肺炎後の廃用症候群とは

ドクター箱崎幸也 健康増進実践法

■高齢者は肺炎入院で寝たきりなど負のスパイラルリスク、肺炎球菌ワクチンの積極的接種を

 現在私は高齢者の方を中心に診療していますが、今冬から春にかけて多数の肺炎患者さんを診療しました。「肺炎後の廃用症候群」の恐ろしさを、改めて実感しました。高齢者の方は免疫力が低下し肺炎リスクが高く、抗生物質でいったん治癒しても飲み込むことが困難となる嚥下機能の低下、さらに心肺機能や認知機能などの低下が起こります。肺炎による入院では、寝たきりへの負のスパイラルに陥りやすく認知症の発症リスクが約2~3倍となります。これが『肺炎後の廃用症候群』と称される病態です。病気は治ったが要介護状態になり、ご家族が「病院はなんで廃人になるまで手をこまねいていた?」と主治医に不信感を抱くことになります。

 すべての65歳以上の方、特に慢性呼吸器疾患(喘息や慢性閉塞性肺疾患など)や糖尿病、心疾患などの基礎疾患をお持ちの方は健康寿命を延ばすためにも、基礎疾患の治療だけでなく肺炎予防を重視して下さい。1年中、外出から帰宅したら手洗いやうがいはしっかり実践して下さい。今から冬の肺炎流行期に備えて、予防ワクチン接種を考慮して下さい。

 ワクチンが存在する感染症では、基本的にはワクチン接種を積極的に受けるようにして下さい。入院患者の肺炎原因を10年間調査した結果では、肺炎球菌が最も高い頻度で検出されています。肺炎球菌ワクチンですべての肺炎を予防することはできませんが、ワクチン接種によって認知症、重症化や死亡につながる肺炎の最大原因が予防可能です。寝たきりのリスクを軽減できる価値は、非常に大きいと考えます。現在高齢者には2種類の肺炎球菌ワクチンの接種が可能ですので、8月号で最新の投与スケジュールを解説させて頂きます。

 この暑い時期、高齢者の方は口渇を感じる脳内中枢が低下していますので、身体は脱水でも口渇感がない時もあります。簡単に脱水症に陥りますので、こまめな水分摂取に留意なさって下さい。(箱崎幸也=元気会横浜病院々長、元自衛隊中央病院消化器内科部長)

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