ヨシムラ・フード・ホールディングスの吉村元久社長に聞く
- 2016/7/15 11:22
- IRインタビュー
■食品関連中小企業を支援・活性化する独特のビジネスを展開、強い商品をいっそう強化、弱みの資金面等を補充
ヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>(東マ・100株)は今年3月4日に上場した。株価は上場後高値1320円(3月4日)、同安値818円(6月7日)、高値と安値の中間値水準でしばらくモミ合っていたが、好業績を評価して15日には1399円と一気に新高値に躍り出てきた。
同社は特色ある商品を持つが、後継者問題等に悩みを持つ食品関連中小企業を支援・活性化する独特のビジネスを展開する。国内食品産業は事業所数、雇用者数等において最大の産業であるがその大半は中小企業。少子高齢化で市場が縮小傾向にあり、しかも、資金調達力に欠け、経営者の高齢化等から企業存続問題に直面する厳しい経営環境に置かれている。こうした、環境から同社への経営支援要請は増加することが予想され、同社ビジネスは繁忙が予想される。実際、上場後、案件数は3~4倍に増加しているという。創業者である吉村元久社長に事業内容を中心に聞いた。
■グループ企業数着実な増加、17年2月期を上方修正
――御社の事業を拝見しますと、業種では証券コード番号2000番台の食品ポストですが、メーカーや商社の顔、さらに経営コンサルト、ファンドのような顔があるように思われます。上場銘柄では類似会社はないように思われます。事業の特徴をご紹介ください。
【吉村社長】 当社は、食品の製造及び販売を行う全国の中小企業の支援と活性化を行うことが目的です。M&Aで子会社化し、子会社に対しそれぞれ営業、製造、商品開発、品質管理、経営管理など機能ごとに支援と統括を行い、各子会社の『強み』を伸ばし、『弱み』を補います。こうした仕組が当社の最大の特徴である『中小企業支援プラットフォーム』です。質問のファンド的ということはM&Aで子会社化するという点が似ているという指摘だろうと思いますが、しかし、われわれはファンドのように会社を再生したあとに保有株を売却するということはしません。あくまで、グループ化した会社と共に成長するというのが基本的な姿勢です。
――グループ企業数と代表的な子会社を教えてください。
【吉村社長】 連結子会社は製造7社と販売2社の合計8社、非連結子会社が1社です。製造関係では、『楽陽食品』(東京都足立区)が国内5カ所の工場においてチルドシュウマイおよびチルド餃子を製造・販売していますが、チルドシウマイの生産量は年間約2700万パックを誇り国内断トツです。広島産カキを調達する独自ルートを持ち、かきフライを主力商品とする『オーブン』(愛媛県四国中央市)、創業130年の白石温麺を主力商品とする『白石興産』(宮城県白石市)、ロングランセラーのピーナッツバターを主力とする『ダイショウ』(埼玉県比企郡)、日本酒好きの方ならすぐにお分かりいただける『桜顔酒造』(岩手県盛岡市)、捕獲後すぐに船上で瞬間冷凍された冷凍マグロのみを使用したネギトロ、マグロ切り落としを製造・販売する『雄北水産』(神奈川県足柄郡)など製造6社です。販売子会社(2社)は、業務用食材の企画・販売を主とし、自社で物流機能を持たず、外食企業、スーパー惣菜、産業給食、コンビニチエーンストアベンダー、医療福祉関係、学校給食などへ直送するビジネスモデルを構築している『ヨシムラ・フード』(埼玉県越谷市)。このほかに、日本全国の生活協同組合と直接口座を持ち冷凍食品のほかグループ商品の販売も行っている『ジョイ・ダイニング・プロダクツ』(埼玉県越谷市)があります。
――6月後半に2社の子会社化を発表されました。
【吉村社長】 6月27日に『栄川酒造』、6月29日に『純和食品』をそれぞれ子会社化する決議を決定、発表しました。栄川酒造は福島県会津地方を代表する150年の歴史がある老舗酒造会社です。主力金融機関から金融支援を受け、100%減資を行ったあと当社が出資を行い子会社とします。子会社化の後はグループの酒造会社である桜顔酒造と共に両社の販路の共有や当社グループの販路を活用することにより売上の拡大を図ります。一方の純和食品は埼玉県熊谷市に本社を置きゼリー等のデザート類やレトルト食品等の製造・販売を行っています。とくに、埼玉県食品衛生自主管理優良施設確認制度において優良施設に認定された高い品質管理体制に強みを持ちイオングループをはじめ大手スーパー量販店などのOEM生産、外食産業や贈答品市場などにも販路を拡大しています。同社の発行株式を取得し子会社化します。
――お話をうかがっていますと、すでに、子会社化された会社、これから子会社化される会社は地方型の企業ですが、いずれも特徴のある商品を持っているように思われます。なぜ、御社のグループ入りを選択されるのですか。
【吉村社長】 指摘の通り、われわれが子会社化している企業は独特の優れた商品や技術力を持っているところばかりです。日本の食品産業はGDPの面から最大の業種であり日本が誇る基幹産業ですがその企業数の99%は中小企業が担っています。その中小食品企業にとって、少子高齢化で国内の市場規模は縮小傾向にあり、中小食品企業にとっては生き残りが難しい経営県境です。しかも、とくに、中小食品企業においては後継者不足が顕在化しています。そうした企業においては事業継承をあきらめて廃業や事業停止を選択する状況が増えていますが、当社の存在を知って事業継承の受け皿として、当社に直接、あるいは金融機関や会計事務所などを通じての案件が増えています。とくに、今年3月に株式を上場して以降、以前に比べて3~4倍案件数は急増しています。
――冒頭での質問のファンドとは違う点をもう一度、教えてください。
【吉村社長】 話しましたとおり、中小食品企業では事業継承ニーズが高まる一方で受け皿となる会社や組織が少ないのが現状です。この点に注目、つまり、食品の製造・販売を行う中小企業の支援・活性化を目的として当社は2008年に創業しました。大和証券事業法人部時代の経験もあります。投資ファンドは単独での高い成長と数年以内の売却を目的としていることから成熟市場にある中小企業は投資対象になり難いのです。われわれは、投資し子会社化した企業と共に成長する、ある意味、運命共同体的にやっていくというのがファンドと一番の違いです。また、指摘のとおり、子会社化した企業は地方に拠点がありますが、子会社を活性化することは地方の活性化に貢献することにつながると思っています。最近は、海外での日本食が注目されていることから今後は海外での展開にも取り組んでいきます。
――業績見通しについてお願いします。
【吉村社長】 上場直前の2016年2月期は売上が前期比12.8%増の128億3300万円、営業利益48.9%増の3億2800万円、純益99.2%増の4億6100万円、1株利益116.6円でした。2017年2月期は、当初、売上3.2%増の132億5000万円、営業利益13.2%増の3億7100万円、純益は51.8%減の2億2200万円の見通しでしたが、グループ会社が増えたこと、既存取引先の深耕などの効果で上方修正しました。修正後の今2月期は売上149億6300万円(前期比16.5%増)、営業利益4億0500万円(同23.4%増)、1株利益55.2円の見通しです。配当は、M&A案件の増加に伴う資金需要に対応するため無配の予定です。
―ありがとうございました。