【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォコムは水準切り上げて強基調に転換、14年7月高値目指す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ITソリューションや電子書籍配信サービスなどを展開するインフォコム<4348>(JQS)の株価は、1月9日に戻り高値となる975円まで上伸する場面があった。その後も900円近辺で堅調に推移している。水準を切り上げて強基調に転換した形であり、14年7月高値1092円を目指す展開だろう。なお1月29日に第3四半期累計(4月~10月)の業績発表を予定している。

 企業向けにITソリューションを提供するITサービス(ヘルスケア、エンタープライズ、サービスビジネス)事業、一般消費者向けに各種デジタルコンテンツを提供するネットビジネス事業(子会社アムタス)を展開している。

 業容拡大に向けて戦略的M&A・アライアンスを積極活用し、13年9月に医薬品業界のCRM事業強化に向けてミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立、BCP(事業継続計画)分野のビジネス拡大に向けて危機管理関連ソリューションを手掛ける江守商事<9963>と協業した。

 グループ会社の統合・再編も進めている。14年3月にEC事業の運営効率化に向けてアムタスグループ内で食品EC事業を展開する持分法適用関連会社のドゥマンを連結子会社化し、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンに統合した。14年7月には連結子会社である米国SYSCOMの株式譲渡(15年2月予定)を発表した。

 中期経営計画では、目標数値として17年3月期売上高550億円、営業利益50億円を掲げている。医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」事業、ネットビジネス事業(電子書籍配信サービスやソーシャルゲーム)を重点3事業として、クラウドサービス関連、ソーシャルメディア関連、ビッグデータ領域のデータサイエンス関連、農業IT化関連、海外展開なども強化する方針だ。

 14年9月には米国シリコンバレーに連結子会社としてコーポレートファンド(20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立した。ヘルスケア関連やネットビジネス関連を中心に、成長が期待される新技術や有力ベンチャーなど投資先候補探索・発掘を推進する。

 06年開始のスマートフォン・フィーチャーフォン向け電子コミック配信サービス「めちゃコミック」は13年8月から各携帯キャリア公式サービス1位を独占し、月間サイト来訪ユニークユーザー数は14年7月に500万人を超えた。

 13年11月にはマルチデバイス対応の電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も開始し、アムタスの電子書籍配信サービスは前期(14年3月期)売上高が100億円超に成長している。また14年10月にはアムタスがシフトワン(東京都千代田区)と共同で次世代電子コミック「モーションコミック」の提供を開始した。

 なお1月13日には、2月5日~6日開催の「WebRTC Conference Japan」にプラチナスポンサーとして参加すると発表した。WebRTCは、Web上でリアルタイムにコミュニケーションを実現するための標準的な技術仕様の一つで、効率的に音声・映像を伝えるだけでなく、さまざまなデータ通信にも利用できるためIoT(Internet of Things)分野での活用にも期待が集まっている。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(4月24日公表)は売上高が前期比9.9%増の430億円、営業利益が同8.8%増の40億円、経常利益が同8.5%増の40億円、純利益が同12.6%増の23億円、配当予想が同1円増配の年間18円50銭(期末一括)としている。

 第2四半期累計(4月~9月)は、ヘルスケア事業における消費増税後の反動減、前期の事業譲受効果の一巡、プロダクトミックスの悪化、ゲームなど新規事業の収益化遅れなどが影響して大幅減益だった。通期見通しに対する進捗率も低水準だった。

 ただし、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」が好調であり、ITサービス事業も順調に推移して、第2四半期(7月~9月)は四半期ベースで過去最高の売上高を達成している。営業損益も第1四半期(4月~6月)の2億26百万円の赤字に対して、第2四半期は8億16百万円の黒字と改善基調である。

 通期ベースでは、GRANDIT事業や電子書籍配信サービスなど重点分野の一段の業容拡大が牽引する。ヘルスケア事業の売上挽回やゲーム事業の見直しによるコスト圧縮も寄与して好業績が期待される。

 株主優待制度については7月に導入を発表した。毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を、保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。

 株価の動きを見ると、10月~11月の安値圏800円近辺で下値固めが完了し、水準切り上げの展開となった。さらに年初に動意付いて、1月9日には戻り高値となる975円まで上伸する場面があった。その後も900円近辺で堅調に推移している。

 1月20日の終値925円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS84円13銭で算出)は11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円50銭で算出)は2.0%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS698円41銭で算出)は1.3倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインとなった。また週足チャートで見ると26週移動平均線を突破して上伸している。強基調への転換を確認した形であり、14年7月高値1092円を目指す展開だろう。

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