【編集長の視点】東京製鐵は高値から急反落、業績再々上方修正に増配が上乗せも材料出尽くし売り

編集長の視点

東京製鐵<5423>(東1)は、62円安の771円で始まり、前日ザラ場につけた昨年来高値864円から急反落している。前日20日大引け後に今3月期第3四半期(3Q)決算の開示とともに3月通期業績の再々上方修正と期末配当の増配を発表、3月通期業績が、市場コンセンサスをクリアしたが、昨年年末以来の株価上昇で織り込み済みとして利益確定売りが先行している。ただ寄り付き安後の下値では、信用売り残・買い残が積み上がって拮抗しており、売り方の買い戻しも交錯しもみ合っている。

■鉄スクラップ価格が低位安定し国内鋼材市況も堅調に推移

3Q業績は、売り上げが前年同期比26.8%増と増収転換し、経常利益が同4.95倍、純利益が同4.05倍純益増益とそれぞれ大幅に伸び、3月通期業績対比の利益進捗率は、経常利益が96%と目安の75%を大きく上回り、純利益が57%に止まった。主原料の鉄スクラップ価格が、期初想定を大幅に下回って推移し、国内製品出荷価格は、国内景気の緩やかな回復のなか円安の影響でわずかな値上がりとなったが、引き続き全社を挙げてコスト低減に取り組んだことなどが寄与した。純利益の利益進捗率が目安を下回ったのは、鋼板類の競争力強化のため熱延コイルの生産を田原工場に推移、岡山工場の生産設備の一部に減損損失49億1000万円を計上したことが要因となった。

3月通期業績は、海外の鋼材市況が引き続き低迷が懸念されるが、国内鋼材市況が、震災復興需要や都市再開発案件、民間設備投資の回復などで堅調に推移、コストダウンに取り組むことなどから、売り上げを昨年10月の再上方修正値より20億円引き上げて1620億円(前期比16.5%増)、経常利益を25億円引き上げて125億円(同3.95倍)とし、純利益を10億円アップさせて100億円(同4.31倍)と見込み、経常利益は、市場コンセンサス平均を上回る。期末配当は、業績に応じて利益配分を決定する基本方針に従って、期初予想の2円を4円に引き上げ年間6円(前期実績2円)と増配幅を拡大させる。

■PER11倍台の割安修正に信用好需給も加わり2011年3月高値目指し再発進も

株価は、昨年7月の今期業績の1回目の上方修正で669円まで買い進まれ、全般相場の波乱展開とともに531円安値まで調整、10月の2回目の上方修正では500円台固めと反応薄で推移したが、昨年12月以来、証券各社の目標株価引き上げが相次いだことから高値追いとなった。PERは11倍台と割安であり、ここでの高値場面で信用売り残と買い残が綱引きして信用倍率1倍ソコソコと拮抗する好需給となっており、目先売り一巡後には2011年3月につけた1008円を目指す上値トライも想定される。(本紙編集長・浅妻昭治)

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