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翻訳センターは調整一巡して出直り、17年3月期2桁営業増益・3期連続増配予想
- 2016/7/21 07:52
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
翻訳センター<2483>(JQS)は70言語に対応した専門性の高い翻訳サービスを主力として、通訳や国際会議運営なども展開している。需要堅調で17年3月期2桁営業増益・3期連続増配予想である。株価は地合い悪化の影響を受けたが切り返しの動きを強めている。調整一巡して出直り展開だろう。なお8月9日に第1四半期業績発表を予定している。
■企業向け翻訳サービスを主力として通訳や国際会議運営などにも業容拡大
特許・医薬・工業・法務・金融分野などの企業向け翻訳サービスを主力として、派遣、通訳、語学教育、コンベンションなどに業容を拡大している。業容拡大に向けて12年9月通訳・翻訳・国際会議運営のアイ・エス・エス(ISS)を子会社化、13年6月アイタスからIT関連ローカライゼーション/マニュアル翻訳事業の一部を譲り受け、14年10月医薬品承認申請・取得に関するメディカルライティング業務を専門に受託する子会社パナシアを設立した。
グループ再編では15年3月ISSが100%所有する人材紹介事業のISSコンサルティングの全株式を同社代表取締役関口真由美氏に譲渡、15年12月連結子会社の国際事務センターを当社に吸収合併、16年2月連結子会社の中国・北京東櫻花翻訳有限公司を解散すると発表した。
16年3月期の事業別売上構成比は翻訳事業73.2%(特許分野19.6%、医薬分野25.8%、工業・ローカライゼーション分野20.8%、金融・法務分野6.8%)、派遣事業9.5%、通訳事業6.8%、語学教育事業2.3%、コンベンション事業5.9%、その他1.8%だった。
翻訳事業は専門性の高い産業翻訳に特化している。グループ全体で約6300名の登録者を確保し、対応可能言語は約75言語と国内最大規模である。取引社数は約4400社、年間受注件数は約6万4000件に達している。企業のグローバル展開を背景として、翻訳サービスの需要は企業の知的財産権関連、新薬開発関連、新製品開発関連、海外展開関連、IR・ディスクロージャー関連を中心に拡大基調である。
なお15年11月翻訳サービスの国際規格「ISO17100:2015」認証を取得、16年4月情報セキュリティ・マネジメントシステム(ISMS)の国際規格「ISO/IEC27001:2013」認証を取得した。
7月4日には、米国の調査会社Commom Senese Advisory社発表の「世界の語学サービス会社ランキング2016」において、5年連続でアジア1位にランクインしたと発表している。
■総合的言語ソリューションを目指してアライアンスも活用
総合的言語ソリューション提供を目指してアライアンスも活用している。14年8月多言語対応コンタクトセンターサービスのディー・キュービックと、日本国内におけるマルチランゲージ・コンタクトセンターサービス(在日外国人を顧客とする企業や団体を対象とした通訳・翻訳サービス)に関して業務提携、15年4月ディー・キュービックの親会社キューアンドエーと合弁でランゲージワンを設立した。ディー・キュービックの多言語対応コンタクトセンターサービスをランゲージワンに移管し、センター運営およびサービスの強化を図る。
15年10月、自動機械・電子機器の設計・製作事業およびドキュメントサービス事業のユースエンジニアリングと、ドキュメントサービスにおける戦略的パートナーとして業務提携した。
16年6月ランゲージワンが日本ATMと金融市場に向けた多言語対応サービスの提供で業務提携し、ランゲージワンが第三者割当増資で発行する株式を日本ATMが引き受けた。インバウンド需要の高まりに伴って国内における多言語対応サービス・サポートの必要性が増しているため、ATM監視・運用アウトソーシング圧倒的シェアを持つ日本ATMグループと協業して金融機関の外国人対応を支援する。
■下期の構成比が高い収益構造
四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期21億08百万円、第2四半期22億53百万円、第3四半期23億07百万円、第4四半期25億23百万円、営業利益が16百万円、1億38百万円、1億31百万円、2億19百万円、16年3月期は売上高が21億10百万円、21億52百万円、24億61百万円、24億55百万円、営業利益が52百万円、82百万円、2億12百万円、1億88百万円だった。下期の構成比が高くなる傾向が強い収益構造である。
16年3月期は派遣事業の売上減少の影響で全体は15年3月期比微減収だったが、主力の翻訳事業が好調に推移し、販管費抑制も寄与して増益だった。売上総利益は同5.6%減少し、売上総利益率は42.1%で同2.5ポイント低下した。販管費は同7.2%減少し、販管費比率は36.3%で同2.8ポイント低下した。特別利益では投資有価証券売却益を計上した。ROEは14.4%で同4.0ポイント上昇、自己資本比率は67.1%で同4.6ポイント上昇した。配当は2期連続増配で配当性向は20.7%だった。
事業別売上高の動向を見ると、翻訳事業は医薬および金融・法務分野の好調で同3.6%増の67億27百万円、派遣事業は人材紹介事業の子会社を売却した影響で同32.7%減の8億81百万円、通訳事業はIT通信関連企業からの受注減少で同2.1%減の6億62百万円、語学教育事業は受講申込が計画を下回り同0.4%減の2億13百万円、コンベンション事業は「第7回太平洋・島サミット」などの大型案件が寄与して同34.1%増の5億50百万円、その他は外国への特許出願支援サービスが好調で同48.3%増の1億71百万円だった。
なお翻訳事業の分野別売上高は、特許分野が同3.9%増の17億99百万円、医薬分野が同5.3%増の23億76百万円、工業・ローカライゼーション分野が同0.3%増の19億17百万円、金融・法務分野が同6.5%増の6億33百万円だった。
■17年3月期は2桁営業増益・3期連続増配予想
今期(17年3月期)連結業績予想(5月12日公表)については売上高が前期(16年3月期)比4.5%増の96億円、営業利益が同15.9%増の6億20百万円、経常利益が同16.0%増の6億20百万円、純利益が同7.0%減の4億円としている。配当予想は同2円増配の年間55円(期末一括)としている。3期連続増配で予想配当性向は23.1%となる。
純利益は投資有価証券売却益が一巡して減益だが、翻訳事業が伸長し、増収効果や販管費抑制効果で2桁営業増益・経常増益予想である。売上総利益率は同0.1ポイント低下の42.0%、販管費比率は同0.7ポイント低下の35.6%を想定している。
事業別売上高については、翻訳事業が同4.6%増の70億40百万円(特許が同4.5%増の18億80百万円、医薬が同5.2%増の25億円、工業・ローカライゼーションが同4.3%増の20億円、金融・法務が同4.2%増の6億60百万円)で、派遣事業が同2.1%増の9億円、通訳事業が同4.4%増の6億60百万円、語学教育事業が同3.2%増の2億20百万円、コンベンション事業が同9.0%増の6億円、その他が同5.2%増の1億80百万円の計画としている。
■中期経営計画で18年3月期ROE10%以上目標
15年5月策定の第3次中期経営計画では、目標数値として18年3月期売上高110億円、営業利益7億50百万円、純利益4億50百万円、ROE10%以上を掲げている。また営業利益率については中期的に8%を目指すとしている。
重点施策としては、顧客満足度向上のための分野特化戦略のさらなる推進、ビジネスプロセスの最適化による生産性向上、ランゲージサービスにおけるグループシナジーの最大化を推進する。需要は拡大基調であり、中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡して出直り
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響を受けて6月24日に2901円まで調整したが、2月の年初来安値2801円を割り込むことなく切り返しの動きを強めている。
7月20日の終値3125円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS237円45銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間55円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1855円74銭で算出)は1.7倍近辺である。時価総額は約53億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。調整一巡して出直り展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)