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ピックルスコーポレーションは目先的な過熱感解消して上値試す、17年2月期通期は増額の可能性
- 2016/7/21 07:44
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ピックルスコーポレーション<2925>(JQS)は漬物・キムチ製品の最大手である。主力の「ご飯がススム キムチ」のブランド力が向上し、惣菜分野への事業展開も加速している。17年2月期第1四半期は大幅増益だった。通期会社予想は増額の可能性が高いだろう。株価は第1四半期の大幅増益を好感して上場来高値を更新した。その後は利益確定売りが優勢になったが、目先的な過熱感が解消して上値を試す展開だろう。
■漬物製品の最大手、主力の「ご飯がススム キムチ」のブランド力向上
漬物・浅漬・キムチなど漬物製品の最大手メーカーで、ブランド力の向上、新製品の積極投入、成長市場である惣菜製品の強化などを推進し、主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのブランド力向上とともに収益力が大幅に向上している。
M&Aも活用して業容を拡大している。14年8月尾花沢食品を設立して漬物製造の尾花沢食品から事業を承継した。15年6月青果市場運営の県西中央青果(茨城県古河市)を子会社化(15年9月から連結)した。16年3月フードレーベルホールディングス(FLH)を子会社化(17年2月期から連結)した。
16年2月期の販路別売上高構成比は量販店・問屋等が73.2%、コンビニが14.5%、外食・その他が12.2%だった。セブン&アイ・ホールディングス<3382>など大手量販店・コンビニが主要取引先である。また品目別売上高構成比は自社製品が66.9%(浅漬・キムチが46.4%、惣菜が18.4%、ふる漬が2.1%)、商品(漬物・青果物)が33.2%だった。
■利益は原料野菜価格が影響しやすい収益構造
四半期別推移を見ると、15年2月期は売上高が第1四半期68億18百万円、第2四半期73億04百万円、第3四半期63億18百万円、第4四半期63億65百万円、営業利益は3億83百万円、2億94百万円、2億13百万円、1億66百万円、16年2月期は売上高が76億83百万円、80億53百万円、73億70百万円、70億46百万円、営業利益が2億69百万円、3億64百万円、1億14百万円、1億84百万円だった。
利益は原料野菜価格が影響しやすい収益構造である。16年2月期は既存取引先への拡販、新規取引先の開拓、新商品の投入などの効果で15年2月期比2桁増収だったが、春や秋の天候不順の影響で主要原料野菜の白菜や胡瓜の価格が高騰したため営業減益、経常減益だった。純利益は県西中央青果ののれん発生益計上や15年2月期計上の減損損失が一巡して大幅増益だった。
売上総利益は同7.1%増加したが、売上総利益率は22.5%で同1.2ポイント低下した。天候不順で主要原料野菜の白菜や胡瓜の価格が高騰した。販管費は同10.9%増加したが、販管費比率は19.4%で同0.3ポイント低下した。ROEは9.8%で同2.5ポイント上昇、自己資本比率は45.1%で同3.6ポイント上昇した。配当は同2円増配の年間17円(期末一括)で配当性向は12.2%だった。利益配分については将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続的に実施していくことを基本方針としている。
■17年2月期第1四半期は大幅増収増益
今期(17年2月期)第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比21.4%増の93億30百万円、営業利益が同78.8%増の4億81百万円、経常利益が同85.1%増の5億03百万円、純利益が同2.2倍の3億44百万円だった。キムチ製品が好調に推移し、FLHの新規連結、原料野菜価格の安定推移などで大幅増収増益だった。
売上総利益は同27.9%増加し、売上総利益率は23.2%で同1.1ポイント上昇した。販管費は同18.3%増加したが、販管費比率は18.1%で同0.5ポイント低下した。営業外では持分法投資損益が改善(前期は損失8百万円、今期は利益4百万円)し、特別利益では補助金収入が増加(前期は25百万円、今期は50百万円)した。
■17年2月期は野菜価格安定やM&A効果などで大幅増収増益予想
今期(17年2月期)通期の連結業績予想は前回予想(4月14日公表)を据え置き、売上高が前期(16年2月期)比22.1%増の368億17百万円、営業利益が同50.6%増の14億02百万円、経常利益が同48.2%増の14億45百万円、純利益が同29.7%増の8億97百万円としている。配当予想は前期と同額の年間17円(期末一括)で予想配当性向は9.5%となる。
キムチ製品や惣菜製品のブランド力向上、全国の製造・販売拠点を活用した営業活動、積極的な広告宣伝・販売促進活動、新製品開発・投入や他の食品メーカーとのコラボレーションなどの効果で、既存取引先への拡販や新規取引先の開拓が一段と進展する。増収効果に加えて、原料野菜価格の安定による原価率改善、県西中央青果の通期連結(前期は下期から連結)、FLHの新規連結、ピックルスコーポレーション札幌およびピックルスコーポレーション関西の収益改善なども寄与して大幅増収増益予想である。
品目別の売上高は、自社製品が同11.0%増の223億63百万円(浅漬・キムチが同12.8%増の157億82百万円、惣菜が同8.1%増の59億86百万円、ふる漬が同4.7%減の5億94百万円)、商品(漬物・青果物)が同44.6%増の144億54百万円の計画としている。販路別の売上高は、量販店・問屋等が同27.0%%増の280億48百万円、コンビニが同5.0%増の46億円、外食が同13.1%増の41億68百万円の計画としている。
原料野菜価格は平年並みを想定し、売上総利益率は23.2%で同0.7ポイント上昇の計画としている。販管費はFLHの新規連結などで増加するが、販管費比率は19.4%で同横ばいの計画としている。設備投資はピックルスコーポレーション関西の生産能力増強のための工場増築、九州の新工場建設のための土地取得など合計14億61百万円の計画で、前期実績の2億56百万円から大幅に増加する。
なお通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が25.4%、営業利益が34.3%、経常利益が34.8%、純利益が38.4%と高水準である。ブランド力向上、M&A効果、さらに原料野菜価格の落ち着きも寄与して通期会社予想は増額の可能性が高いだろう。
■漬物業界は大手による寡占化が進展、収益拡大基調
漬物業界はコメの消費減少、食の多様化、少子高齢化などで市場縮小が続いている。また家族経営など中小・零細企業も多いため、大手による寡占化が一段と進展すると予想される。
こうした事業環境も背景として、主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのリニューアルや積極的な新製品開発・投入、既存取引先への拡販や新規取引先の開拓、事業エリア拡大、ピックルスコーポレーション関西の生産能力増強、契約栽培拡大や県西中央青果の子会社化などによる原料野菜の安定調達、原材料購買方法の見直し、市場の規模が大きい惣菜分野への事業展開を加速している。またFLHにおける低採算取引の縮小や新ブランド立ち上げも推進する方針だ。
中期経営目標には19年2月期売上高404億05百万円、営業利益14億52百万円を掲げている。売上高の品目別内訳は自社製品245億89百万円(浅漬・キムチ173億50百万円、惣菜66億23百万円、ふる漬6億15百万円)、商品(漬物・青果物)158億16百万円である。利益面ではピックルスコーポレーション関西の新工場立ち上げ負担などを考慮しているが、積極的な事業展開とブランド力向上効果で中期的に収益拡大基調だろう。
■安定株主作り進展
14年11月実施のTOBによる自己株式取得によって、第1位株主の東海漬物の保有割合が27.20%に低下して親会社に該当しないこととなった。そして15年5月には第三者割当による自己株式処分を実施した。割当先は武蔵野銀行<8336>、三菱商事フードテック、味の素<2802>、高速<7504>など8社で、いずれも長期保有の方針としている。
また安定株主作りの一環としてピックルスコーポレーション取引先持株会を設立して運営開始した。
■株価は目先的な過熱感が解消して上値試す
株価の動きを見ると、第1四半期の大幅増益を好感して急伸し、上場来高値を更新して7月7日の1629円まで急伸した。その後は目先的な過熱感を強めて利益確定売りが優勢になったが、自律調整の範囲だろう。
7月20日の終値1465円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS178円28銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1508円72銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約94億円である。
急伸して過熱感を強めたが、週足チャートで見ると13週移動平均線が接近してサポートラインとなりそうだ。依然として指標面の割安感が強く、目先的な過熱感が解消して上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)