パシフィックネットは調整一巡して出直り、17年5月期は中古モバイル好調で大幅増益予想

 パシフィックネット<3021>(東マ)は中古パソコン・モバイル機器のリユースやデータ消去を展開するセキュリティサービス企業である。16年5月期はパソコン排出台数減少の影響で減益だったが、17年5月期は中古モバイル機器の好調などで大幅増益予想である。株価は調整一巡して出直り展開だろう。

■中古情報機器のリユース・データ消去などを展開

 中古パソコン・モバイル機器のリユースやデータ消去を展開するセキュリティサービス提供企業である。パソコン、タブレット端末、スマホなど中古情報機器の引取回収・販売事業を主力として、事業者向けレンタル事業も展開している。主要仕入先のリース・レンタル会社や一般企業からの引取回収強化、生産性向上、業務プロセス効率化などで収益力を高めている。

 旗艦店「PC-NETアキバ本店」など全国主要都市に10店舗展開し、インバウンド需要対応で15年5月期に7店舗を免税店化した。16年6月には中古モバイル買取・販売専門店としてRmobile(アールモバイル)日本橋店(大阪市)をオープンした。

■データ消去・処分サービスなどセキュリティ体制に強み

 全国主要都市の引取回収拠点や、ISO27001(ISMS)およびプライバシーマークに準拠した情報漏洩防止のセキュリティ体制に強みを持つ。IT機器データ消去・処分サービスではマイナンバー制度のガイドラインに完全対応し、データ消去証明書発行サービスも行っている。企業や官公庁のセキュリティ意識やコンプライアンス意識の向上を背景として中古情報機器の入荷台数が増加し、データ消去サービスなども奏功して顧客カバー率が一段と広がっている。

 15年5月には電子記録メディア破壊機メーカーの日東造機から、オンサイト・オフサイトデータ物理破壊消去サービスの最優秀会社として「Crush Box プラチナサービスリセラー」の第1号に認定された。マイナンバー完全対応データ消去サービスに関しては15年12月LCMサービス業界大手の都築テクノサービスとパートナーシップ締結、16年1月米国方式のハードディスク破壊サービス(NSA/DoD準拠のV字型破壊)を開始した。

■買取・回収サービスを強化

 14年10月日本初のIT機器処分管理Webサービス「P-Bridge」の無償提供を開始、15年10月特許を取得した。ソリューション・プラットフォームと位置付けて、16年1月「P-Bridge」と情報システム部門向けWEBメディア「ジョーシス」を連携して双方の会員アカウントを共通化した。

 15年12月iPhoneおよびiPadの個人向け買取サービスを強化するため、直営店での店頭買取に加えて専用Webページ「R-mobile」を設置して買取受付を開始した。

■リユースの社会的取り組みを強化

 14年11月Windowsクラスルーム協議会の「Windowsクラスルーム包括プログラム」のサービスメニューとして「教育機関のお客様向けECOサービス」を開始した。教育現場におけるICT機器導入時・処分時のコスト削減サービスや、ICT機器処分時の情報漏洩などセキュリティリスクを軽減するサービスを教育機関向けに提供する。

 15年7月特定非営利活動法人.sopa.jpと、子どもの学習支援と企業の使用済みパソコンの最活用を行うCSRプログラム「リユースforキッズ」を開始し、環境省の「平成27年度使用済製品等のリユースに関するモデル事業」として採択された。

■周辺領域への事業展開も推進

 中期成長に向けて新たなレンタル市場・リユース市場・周辺事業への展開も推進している。15年10月光通信<9435>と合弁会社2B(トゥー ビー、当社出資比率は当社51%)を設立してBtoB専門MVNO(仮想移動体通信事業者)事業に進出し、16年1月法人向け総合通信サービス「Bizmo」第2弾として最新モバイル端末の商品ラインナップを拡充、16年6月サービス内容拡充と専用サイト全面リニューアルを実施した。

 15年11月ドローン(無人航空機)の法人向けレンタルを開始、企業のマイナンバー対策をサポートする「マイナンバー安心パック」を開始、16年3月thisisと協業してレンタルアート(法人向けにインテリアとして展示する絵画をレンタルするサービス)を開始した。

 また7月12日にはAED(自動体外式除細動器)のレンタル・販売を8月1日から開始すると発表した。AEDレンタル・販売、設置、付随する講習・サポート、撤去・処分までワンストップサービスで提供する。

■中古情報機器の流通量の影響を受けやすい収益構造

 15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期11億50百万円、第2四半期10億86百万円、第3四半期10億52百万円、第4四半期12億03百万円、営業利益は1億19百万円、32百万円、36百万円、40百万円だった。

 中古情報機器の流通量の影響を受けやすい収益構造だ。15年5月期の売上総利益率は46.7%で14年5月期比4.6ポイント低下、販管費比率は41.7%で同2.6ポイント低下、ROEは9.7%で同0.8ポイント低下、自己資本比率は62.8%で同6.1ポイント低下した。配当性向は45.4%だった。配当については継続的な利益還元を基本としたうえで、業績連動型の配当方式を採用し、当期純利益の30%以上を配当性向の目安として決定することを基本方針としている。

■16年5月期はパソコン排出台数減少で大幅減益

 7月15日発表した前期(16年5月期)の連結業績(7月13日に減額修正)は、売上高が前々期(15年5月期)比1.6%増の45億63百万円、営業利益が同47.9%減の1億18百万円、経常利益が同44.2%減の1億36百万円、純利益が同50.2%減の90百万円だった。

 中古スマートフォン・タブレット等の中古モバイル機器の市場は拡大基調だが、14年4月「WindowsXP」サポート終了に伴う入れ替え需要の反動減、新品パソコン価格の高止まり、さらに「Windows10」切り替えに対する慎重姿勢などで、15年度の国内ビジネス向け新品パソコン出荷台数が23.8%と2年連続で大幅減少し、企業等からの使用済み情報機器の排出台数も大幅減少した。このため売上高が計画を下回り、価格競争による売上総利益率の低下などで大幅減益だった。

 売上総利益は同5.8%減少し、売上総利益率は43.3%で同3.4ポイント低下した。販管費は同0.7%減少し、販管費比率は40.7%で同1.0ポイント低下した。特別利益では投資有価証券売却益19百万円が一巡したが、保険解約返戻金14百万円を計上した。ROEは4.7%で同5.0ポイント低下、自己資本比率は63.4%で同0.6ポイント上昇した。配当は同3円増配の年間19円(期末一括)で配当性向は108.2%だった。

 セグメント別動向を見ると、引取回収・販売事業は売上高が同1.5%減の38億26百万円、営業利益が同83.1%減の33百万円だった。中古モバイル機器は好調だったが、ビジネス系使用済みパソコンの入荷台数が減少した。レンタル事業は売上高が同21.6%増の7億36百万円、営業利益が同2.9倍の84百万円だった。営業強化などの施策で顧客数が拡大した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期10億70百万円、第2四半期10億90百万円、第3四半期10億72百万円、第4四半期13億31百万円、営業利益は5百万円、25百万円、33百万円、55百万円だった。

■17年5月期は大幅増益予想で収益改善期待

 今期(17年5月期)連結業績予想(7月15日公表)は売上高が前期(16年5月期)比10.7%増の50億50百万円、営業利益が同2.6倍の3億12百万円、経常利益が同2.3倍の3億20百万円、純利益が同2.4倍の2億14百万円としている。配当予想は前期と同額の年間19円(期末一括)としている。予想配当性向は45.9%となる。

 ビジネス系パソコン出荷台数は前年並みを想定し、ビジネス系タブレット等中古モバイル市場の拡大、新たなIT機器(VR・AR=仮想現実・拡張現実関連機器、IoT、ドローン等)の市場拡大、引取回収・販売事業におけるシェア拡大・収益性向上などで大幅増益予想である。

■中期経営計画の目標値見直し

 7月15日に、15年7月策定の中期経営計画「VISION2018」の目標値見直しを発表した。引取回収・販売事業の事業環境悪化に対応し、修正後の目標値は18年5月期売上高60億円、営業利益4億50百万円、営業利益率7.5%、ROE10.0%以上とした。

 成長に向けた基本戦略に変化はなく、競争優位確立と営業マーケティング強化による顧客拡大、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応したレンタル市場・リユース市場・周辺事業の創出と展開、レンタル事業拡大とリユース事業との相乗効果の発揮、戦略実行力の強化と自律型組織・人財への変革としている。

 また事業モデルとサービス分野を追加した。機器の導入・運用から使用済み機器の処分・再利用までをトータルにカバーするLCM(ライフサイクルマネジメント)を事業ドメインに設定し、LCMを高い相乗効果のある5つの事業・サービス分野に分け、新たな成長モデルを構築する。

 5つの事業・サービス分野は、ITファイナンス(最新のIT機器導入と運用を中長期レンタル・付帯サービスで支援)、ITセキュリティ(使用済み機器のデータ消去等で情報漏えいを防止)、ITエコロジー(リユースで資源再利用を促進)、IT通信(モバイル化やIoTを通信等で支援)、ITメディア(ITに携わる方々に活きた情報と交流の場を提供)とした。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で6月24日に年初来安値443円まで下押したが、その後は500円近辺推移して調整一巡感を強めている。また16年5月期大幅減益、17年5月期大幅増益予想、いずれに対しても反応は限定的だった。

 7月21日の終値511円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円35銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間19円で算出)は3.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS373円61銭で算出)は1.4倍近辺である。時価総額は約26億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。教育IT関連やサイバーセキュリティ関連のテーマ性もあり、調整一巡して出直り展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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