「ミクス」3連弾を追って8月相場で6月急落株の「リターン・リバーサル」第2弾発進の先取りも一考余地=浅妻昭治
- 2016/7/25 10:56
- 編集長の視点
<マーケットセンサー>
「サマーラリー」か「夏枯れ相場」かどちらに振れるか注目の8月相場が目前となってきた。ヒストリカル的な経験則では、8月相場は、夏枯れ相場の確率が高い。昨年8月も、中国の人民元切り下げで世界的な株価暴落に見舞われたことは記憶に新しい。そこまでショック安とはならないとしても、例年、8月は、外国人投資家が、長期バカンス入りとなり、国内投資家も、高校野球の甲子園大会が始まり盆休みを迎えるなど買い手不在で売り買いとも細り、閑散相場が長引くケースが多かった。
ただ、今年の8月相場は、例年とは真逆の「サマーラリー」を期待しても許されるかもしれない。スマホゲーム「ポケモンGO」の日本配信が始まった「ポケモノミクス」に、経済対策の事業規模が20兆円に膨れ上がると観測報道された「アベノミクス」が上乗せとなって、強力なフォロー期待が高まるのが第一である。さらに7月末から本格化する3月期決算会社の第1四半期(4~6月期、1Q)業績の発表も、大幅減益銘柄のオンパレードや業績の下方修正銘柄が続出したとしても、ファーストリテイリング<9983>(東1)のストップ高や安川電機<6506>(東1)の株価急伸などを経験済みで、とくに怖くはない。フアーストリテイリングは今8月期業績の3回目の下方修正を発表し、安川電機の今期1Q業績が、前年同期比40%超の大幅減益となったのに、この要因である円高の悪影響は織り込み済みと逆に買い評価された結果だからだ。
仮に7月28日~29日に開催される日銀の金融決定会合で追加緩和策が見送られ、7月31日に投開票の東京都知事選挙で与党候補が落選したとしても、内閣改造や経済対策策定の政治イベントを歓迎する大ハシャギのなか、一過性の材料としてスルーされる可能性さえある。それに「サマーラリー」がたけなわともなれば、外国人投資家も、乗り遅れてはならじバカンス先から急遽、取って返して参戦してくることだって考えられる。「全員リスクオン」の強気相場が発進する展開は、想定範囲内となる。
とすれば問題は、マーケットのどこから攻めればより好パフォーマンスが期待できるかということになる。先行するのは、「ポケモノミクス」関連株と「アベノミクス」関連株、仮に金融政策決定会合で追加緩和策が決定された場合は、「クロダノミクス」関連株などであることは間違いなさそうだ。この「ミクス」関連株の3連弾に続く銘柄として注目したいのが、6月急落株である。6月相場は、6月24日の英国の国民投票で「欧州連合(EU)離脱」が決定し、世界的なショック安となり、東京市場でも、日経平均株価が、1286円安と約16年2カ月ぶりの急落幅となり、個別銘柄でもトヨタ自動車<7203>(東1)が、年初来安値に突っ込み、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>(東1)が、年初来安値目前まで売られる急落となった。
ただこの急落からの立ち直りは世界的に早く、東京市場も、7月相場では参議院選挙での与党大勝、「ポケモノミクス」関連株フィーバーのサポートを受けて、日経平均株価は、急落前の水準を奪回し前月5月末高値にあと約300円と迫った。個別銘柄でも、下げた株ほどよく戻るとする投資手法の「リターン・リバーサル」買いで主力株を中心に急落前の株価水準を奪回、トヨタや三菱UFJFGは、この余勢を駆って5月末水準もほぼ回復している。
6月相場で、月間値下がり率ランキングのワースト上位にランクされた銘柄も、急落前の水準を奪回する「リターン・リバーサル」展開はしているが、5月末水準はなお未達で日経平均株価やトヨタ、三菱UFJFGに比べてリバウンド幅が限定的な銘柄も多いのである。この出遅れている6月急落株にもう一段の「リターン・リバーサル」を先取りしたいということである。例えば前記のファーストリテイリングも安川電機も、急落前の株価水準までリバウンドしたところに決算発表があって、5月末水準を上抜ける急騰を演じており、こうした展開の再現を期待したい。
もちろん、急落幅の急落には注意すべき留意点がある。例えば、ネクシィーズグループ<4346>(東1)は、6月の東証1部値下がり率ランキングのワーストワンとなったが、これは、5月相場で、子会社のブランジスタ<6176>(東マ)の3Dクレーンゲーム「神の手」人気による急騰にツレ高し、この反動での6月の急落という個別事情が働いた。この個別材料からはリバウンドも一筋縄ではいかないことも懸念されるのである。このほかランク銘柄には、個別材料として業績下方修正なだが追い討ちとなって戻りが鈍い銘柄も少なくない。そこで、6月急落株から、値下がり率ランキング順にPER・PBR、配当利回りなどを基準になおリバウンド余地のある銘柄を精査してみると、次の15銘柄が「リターン・リバーサル」第2弾株の候補株として浮上する。
【低PER・PBR・高配当利回りの15銘柄は5月末高値奪回へなお値幅効果】
15銘柄をコード番号順に上げると、ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス<3657>(東1)、クミアイ化学工業<4996>(東1)、イソライト工業<5358>(東1)、明電舎<6508>(東1)、牧野フライス製作所<6135>(東1)、DMG森精機<6141>(東1)、竹内製作所<6432>(東1)、サンデンホールディングス<6444>(東1)、TRP<6463>(東1)、NTN<6472>(東1)、マツダ<7261>(東1)、ミツバ<7280>(東1)、セイコーホールディングス<8050>(東1)、サックスバー ホールディングス<9990>(東1)となり、一目、EU関連株のウエートが高い。
6月月間の下落率は、ミツバの37%安から明電舎の26%安までバラツキがあるが、日経平均の急落率を上回っており、7月のリバウンド幅も、英国の国民投票前の水準は回復したものの、5月末水準までなお未達となっているのが共通している。PER評価ではイソライトが5倍台と最割安で、15番目のクミアイ化学が13倍台と市場平均を下回り、11銘柄がPBR1倍台を下回っており、配当利回りは、サンデンHDが5.4%でトップでセイコーHD、NTNが4%以上に回り、市場平均を大きくオーバーしている。
竹内製は、今年7月11日に今2月期第1四半期(3~5月期、1Q)決算を発表してリバウンドに拍車を掛け、マツダは前週末23日付けの日本経済新聞で、今3月期1Q営業利益が小幅減益転換するものの市場コンセンサスを上回ったと観測報道されており、決算発表にも注目が集まる。決算期は、竹内製やクミアイ化学、ポールトゥウィンHDを除いて3月期決算となっており、1Q決算発表が「リターン・リバーサル」第2弾発進のシグナルとなる可能性も注目される。(本紙編集長・浅妻昭治)