マルマエの16年8月期第3四半期累計は2桁営業増益、通期は3回目増額修正の可能性

 マルマエ<6264>(東マ)は半導体・FPD製造装置に使用される真空部品などの精密切削加工事業を展開している。16年8月期第3四半期累計は2桁営業増益だった。受注拡大傾向であり、通期予想は3回目の増額の可能性があるだろう。株価は調整一巡して5月高値を目指す展開だろう。なお流動性向上を目的として立会外分売を予定(7月29日~8月5日)している。

■真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開

 半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開し、新規分野として光学装置・通信関連分野なども強化している。

 15年1月に事業再生計画(11年7月事業再生ADR成立)を終結した。16年10月の最終弁済をもって終了する計画だったが、強固な収益体質の確立と財務体質の改善に目途がついたため前倒しした。債務の株式化を行ったA種優先株式については15年5月に取得(246株、1株につき100万円)して消却した。

■収益改善基調、財務改善も進展して15年8月期に初配当を実施

 15年8月期の四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期3億84百万円、第2四半期6億39百万円、第3四半期5億59百万円、第4四半期5億42百万円、営業利益は41百万円、1億30百万円、1億40百万円、1億39百万円だった。15年8月期は半導体分野およびFPD分野の好調な受注が牽引した。収益改善基調である。

 売上総利益率は30.9%で同2.6ポイント上昇、販管費比率は9.7%で同1.7ポイント低下した。ROEは100.7%で同22.9ポイント低下、自己資本比率は32.7%で同10.3ポイント上昇、BPSは135円80銭で14年8月期の28円68銭から大幅に改善した。また96年マザーズ上場以来初となる年間36円(期末一括)の配当を実施した。配当性向は11.3%だった。

■16年8月期第3四半期累計は2桁営業増益

 7月13日発表した今期(16年8月期)第2四半期累計(15年9月~16年2月)の非連結業績は、売上高が前年同期比3.3%増の16億35百万円、営業利益が同14.9%増の3億57百万円、経常利益が同10.2%増の3億35百万円だった。純利益は税金費用の増加で同11.1%減の2億81百万円だった。受注高は同12.8%減の15億32百万円、受注残高は同0.3%減の3億67百万円だった。

 分野別受注高は、半導体分野が同7.4%減の8億72百万円、FPD分野が同30.6%増の6億47百万円、その他分野が同96.3%減の11百万円、分野別売上高は、半導体分野が同3.2%減の8億50百万円、FPD分野が同97.4%増の7億12百万円、その他分野が同85.3%減の46百万円だった。半導体分野は顧客内シェア拡大と生産体制強化などで堅調に推移した。FPD分野は有機EL関連の新規部品の受注拡大などが寄与した。その他分野は光学関連が一巡した。

 コスト面では労務費、減価償却費、研究開発費などが増加したが、FPD分野増収によるプロダクトミックス改善、生産性向上効果などで2桁営業増益だった。売上総利益は同17.4%増加し、売上総利益率は33.8%で同4.0ポイント上昇した。販管費は同22.2%増加し、販管費比率は11.9%で同1.8ポイント上昇した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期6億19百万円、第2四半期5億32百万円、第3四半期4億84百万円、営業利益は1億55百万円、1億12百万円、90百万円だった。

■16年8月期通期業績予想は3回目増額修正の可能性

 今期(16年8月期)通期の非連結業績予想は前回予想(4月1日に2回目の増額修正)を据え置いて、売上高が前期(15年8月期)比1.2%増の21億50百万円、営業利益が同6.7%減の4億20百万円、経常利益が同10.5%減の3億90百万円、純利益が同42.8%減の3億20百万円としている。

 分野別売上高の計画は、半導体分野が同1.0%増の11億84百万円、FPD分野が同55.0%増の8億91百万円、その他分野が同83.3%減の56百万円としている。FPD分野の受注が好調に推移する。

 配当予想は年間14円(第2四半期末7円、期末7円)としている。15年9月1日付の株式3分割を考慮して、前期の年間36円を株式3分割後に換算すると年間12円となり、今期は実質的に前期比2円増配となる。予想配当性向は23.1%となる。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が76.1%、営業利益が85.0%、経常利益が85.9%、純利益が87.8%と高水準である。通期会社予想は3回目の増額修正の可能性があるだろう。

■月次受注は拡大見通し

 16年6月度の月次受注残高(速報値)は、半導体分野1億67百万円(前月比7.7%減、前年同月比2.6%減)、FPD分野1億40百万円(前月比18.9%減、前年同月比25.2%減)、その他分野8百万円(前月比30.9%減、前年同月比66.5%減)、合計3億16百万円(前月比13.8%減、前年同月比18.0%減)だった。

 半導体分野は売上検収が過去最高水準に回復したため受注残高が減少したが、受注は高水準を維持している。微細化投資や3D NAND投資拡大で今後一段と受注拡大傾向が強まる見通しだ。FPD分野は売上検収が増加したため受注残高が減少だが、有機EL関連の引き合いが活発で、年末にかけて受注が拡大する見通しだ。またテレビ向け第10.5世代大型パネルの設備投資計画も具体化している。

■新中期事業計画でロボット分野への参入も推進

 15年10月に新中期事業計画「Evolution2018」(16年8月期~18年8月期)を策定した。

 半導体分野は微細化投資の本格化に対応して、洗浄分野への参入やエッチング分野の試作強化を推進する。FPD分野は8Kなどで需要拡大が見込まれるため、自社における設備投資ではなく、協力企業の拡大によって需要変動に対応する。その他分野では自動車関連やロボット関連市場に参入し、生産余力の効率的活用と協力企業の拡大を図る。

 半導体分野を成長ドライバーとする既存事業のブラッシュアップに加えて、現業とのシナジー効果や半導体・FPD分野の需要変動に対するリスクヘッジとして、売上高20億円規模までの中小企業を対象としてM&Aも積極活用する方針だ。M&Aは半導体洗浄・樹脂パーツや自動車・ロボット部品などを想定している。

 15年12月には鹿児島大学大学院理工学研究科との共同研究契約を締結した。リハビリ装置の研究開発と作業筋力補助ロボットの研究開発の2件について、早期の実用化を目指して共同研究する。市場ニーズの高さを考慮し、脳卒中の後遺症として腕や足に残る運動麻痺の改善を狙うリハビリ装置の製品化を先行し、腕の麻痺改善装置の開発に着手している。なお今期中に試作機を完成させる予定だったが、モーター等の購入品に長期納品が必要となったため、当初見通しより3ヶ月程度遅れて11月の試作機完成予定となった。

 経営数値目標としては、18年8月期の連結売上高40億円、営業利益10億円(単体ベースで売上高30億円、営業利益7億円、M&Aで売上高10億円、営業利益3億円)を掲げている。株主還元としては配当性向35%以上(順次向上)を目指している。また計画期間中に東証1部への市場変更を目指す方針だ。

■株価は調整一巡して5月高値を目指す

 なお7月21日に流動性向上を目的とする株式の立会外分売を発表した。分売予定株式数は10万株、分売予定期間は16年7月29日~16年8月5日、分売値段は分売実施日の終値もしくは最終気配値を基準として決定する。

 株価の動きを見ると、5月の年初来高値904円から利益確定売りや地合い悪化で反落したが、下値は限定的で調整一巡感を強めている。

 7月25日の終値670円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS60円74銭で算出)は11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間14円で算出)は2.1%近辺、前期実績PBR(前期実績BPS135円80銭で算出)は4.9倍近辺である。時価総額は約37億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形だ。調整一巡して5月高値を目指す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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