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山下医科器械は下値固め完了して出直り、17年5月期営業減益予想だが上振れ余地
- 2016/7/27 08:20
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
山下医科器械<3022>(東1)は九州を地盤とする医療機器専門商社で、福岡県での市場シェア拡大を重点戦略としている。16年5月期は営業微減益予想から一転して営業増益での着地となった。17年5月期は長崎TMSセンター稼働に伴う先行費用などで営業減益予想だが、期初時点では保守的な計画を打ち出す傾向が強く上振れ余地があるだろう。株価は下値固め完了して出直り展開だろう。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
九州を地盤とする医療機器専門商社である。医療機器の販売・メンテナンスおよび医療材料・消耗品などの販売を主力として、子会社イーピーメディックは整形インプラントを製造販売している。
中期成長に向けて、九州最大の需要地である福岡県での市場シェア拡大を最重点戦略としている。医療機関向けSPD(病院医療材料管理業務)の契約施設数増加に対応するため、13年7月に福岡SPDセンター(福岡県福岡市)を新設し、鳥栖SPDセンター(佐賀県鳥栖市)との2拠点体制とした。
そして16年9月には長崎TMSセンター(長崎県諫早市)の稼働を予定している。稼働後は物流センター2拠点、SPDセンター3拠点体制となり、物流の効率化と迅速化により信頼性とサービス向上を図る。
また15年10月には、パナソニックヘルスケアとの合弁会社パナソニックメディコム九州(出資比率パナソニックヘルスケア51%、当社49%)が営業開始している。電子カルテやレセコンなどのメディコム製品および関連機器の販売・サービスを展開する。
■指名停止と一般競争参加資格降格の期間満了
13年12月に判明した従業員による不正行為に関して、14年2月28日に独立行政法人国立病院機構から指名停止(14年2月28日~14年11月27日)と一般競争参加資格降格(14年11月28日~15年8月27日)の処分を受けた。
不正行為の再発防止策に関して4月17日再発防止策実施状況その1、5月16日再発防止策実施状況その2、6月13日再発防止策実施状況その3、8月18日再発防止策実施状況その4を発表している。15年8月には第67回定時株主総会の承認に基づいて監査等委員会設置会社に移行した。そして14年11月27日を以って指名停止期間が満了となり、15年8月27日を以って一般競争参加資格の降格措置期間も満了となった。
■第2四半期と第4四半期の構成比が高い収益構造
15年5月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期105億82百万円、第2四半期126億55百万円、第3四半期118億52百万円、第4四半期152億21百万円、営業利益は第1四半期45百万円の赤字、第2四半期2億21百万円、第3四半期50百万円、第4四半期3億12百万円だった。
15年5月期は指名停止が影響したが、医療機関の設備投資関連で第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。なお15年5月期の売上総利益率は11.6%で14年5月期比0.6ポイント低下、販管費比率は10.5%で同横ばいだった。ROEは6.3%で14年5月期比3.9ポイント低下、自己資本比率は32.0%で同1.9ポイント上昇した。配当性向は30.6%だった。利益還元については安定的な配当の継続を基本方針とし、配当水準として連結配当性向30%を基準としている。
■16年5月期は営業減益予想から一転して営業増益で着地、配当増額
7月11日発表した前期(16年5月期)連結業績は、売上高が前々期(15年5月期)比2.6%増の516億15百万円、営業利益が同8.6%増の5億84百万円、経常利益が同3.1%増の6億35百万円、純利益が同7.5%減の3億32百万円だった。営業減益予想から一転して営業増益での着地となった。
売上総利益は同1.4%増加したが、売上総利益率は11.5%で同0.1ポイント低下した。販管費は0.7%増加したが、販管費比率は10.3%で同0.2ポイント低下した。営業外費用での持分法投資損失28百万円計上、特別利益での収用補償金15百万円一巡、法人税等増加などで純利益は減益だった。ROEは5.6%で同0.7ポイント低下、自己資本比率は32.0%で同横ばいだった。
配当は前回予想(15年7月8日公表)に対して6円増額し、前々期比7円増配の年間50円(期末一括、普通配当40円+創業90周年記念配当10円)とした。配当性向は38.0%だった。利益配分については安定かつ継続的な配当を基本方針として、配当水準としては基本的に連結配当性向30%を基準としている。
セグメント別(連結調整前)に見ると、医療機器販売事業は売上高が同2.5%増の512億64百万円、営業利益が同8.9%増の12億21百万円だった。医療モール事業(主として賃料収入)は売上高が同7.7%増の74百万円、営業利益が同3.9倍の10百万円、その他(自社グループ開発製品の整形外科用インプラント製造販売)は売上高が同11.0%減の4億76百万円、営業利益が6百万円の赤字(前々期は4百万円の赤字)だった。
医療機器販売業の売上高の内訳は、一般機器分野が同1.8%増の102億01百万円、一般消耗品分野が同2.9%増の192億66百万円、低侵襲治療分野が同3.4%増の134億13百万円、専門分野が同2.3%増の65億90百万円、情報・サービス分野が同3.7%減の17億93百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期114億70百万円、第2四半期130億53百万円、第3四半期122億63百万円、第4四半期148億29百万円、営業利益は4百万円の赤字、1億97百万円、64百万円、3億27百万円だった。
■17年5月期営業減益予想だが上振れ余地
今期(17年5月期)の連結業績予想(7月11日公表)については、売上高が前期(16年5月期)比6.0%増の546億95百万円、営業利益が同28.5%減の4億18百万円、経常利益が同23.1%減の4億88百万円、そして純利益が同14.1%減の2億85百万円としている。配当予想は同15円減配の年間35円(期末一括)としている。予想配当性向は30.7%となる。
診療報酬改定による汎用医療材料の価格低下や病床再編に伴う市場成長の減速など事業環境が厳しい中で、基盤事業であるSPD事業の拡大を図るが、長崎TMSセンター稼働に伴う先行費用(人件費、リース料、減価償却費)の発生、営業人員増加による人件費の増加などで減益予想としている。
なお病床機能の分化・連携や在宅医療・在宅介護の推進によって需要増加が見込まれる介護分野の事業展開を図るため、ヘルスケア事業推進部を新設する。同部署では今後、当社グループが出資している国内の新興企業が開発する介護関連製品の取り扱いを予定している。また電子カルテ等の普及拡大が見込まれるため、MIT推進部を強化してシェア拡大を図る。さらに整形分野における子会社事業の強化、循環器事業の拡大、医療モール事業の収益向上に取り組む。
期初時点では保守的な計画を打ち出す傾向が強く、指名停止および一般競争参加資格の降格措置の影響一巡も寄与して、会社予想には上振れ余地があるだろう。
■中期経営計画で18年5月期売上高580億円目標
15年7月策定の新中期経営計画では基本戦略として、さらなる基盤事業の強化と推進体制の構築、地域医療構想に即した新規事業の創出、グループ統制とガバナンス強化に即した経営体制の刷新、積極的な人材確保と教育、コンプライアンス・内部統制の徹底と経営理念経営を推進する。
経営目標数値には、18年5月期の売上高580億円、経常利益8億50百万円を掲げている。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度は11月末と5月末の年2回実施
株主優待制度は毎年11月30日および5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。優待内容は100株~999株保有株主に対して500円相当のクオカード、1000株~1999株保有株主に対して1000円相当のクオカード、2000株以上保有株主に対して1500円相当のクオカードを贈呈する。
■株価は下値固め完了して出直り
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で6月24日に1580円まで調整したが、2月の年初来安値1481円まで下押すことなく、その後は1600円台で推移している。17年5月期減益予想に対するネガティブ反応も限定的で、下値固め完了感を強めている。
7月26日の終値1633円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS113円90銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間35円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2391円34銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約42億円である。
週足チャートで見ると一気に26週移動平均線を割り込んだが、1600円近辺で下げ渋る動きだ。下値固め完了して出直り展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)