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ティー・ワイ・オーは強基調に転換して続伸、AOI.Proと17年1月経営統合で基本合意
- 2016/7/27 08:01
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ティー・ワイ・オー<4358>(東1)はTV-CM制作の大手である。16年7月期は低利益案件などで減益予想だが受注は拡大基調である。また7月11日にAOI.Pro<9607>との経営統合(共同持株会社設立)に関する基本合意書締結を発表した。株価は強基調に転換して続伸展開だろう。なお株式移転比率は7月29日予定の統合契約書締結までに決定し、17年1月4日に共同持株会社株式が上場予定としている。
■TV-CM制作の大手
TV-CM制作の大手である。広告事業(広告代理店向けTV-CM企画・制作およびポスト・プロダクション業務、広告主向けWEB広告およびプロモーションメディア広告の企画・制作、クロスメディア広告業務)を主力として、映像関連事業(アニメーションおよびミュージックビデオなどの企画・制作)も展開している。
6月10日には新規事業としてPR事業を開始(16年10月予定)すると発表した。広報コンサルティング関連業務、メディアリレーションズ関連業務、危機管理広報関連業務、ステークホルダー向け業務などのPR業務を事業化し、広告・広報全般のコミュニケーション領域をワンストップで包括提供する。中期的に売上高30億円、営業利益3億円程度(営業利益率10%)を目指す。
■戦略的M&Aを積極推進
中期成長戦略として、ブランディングやセールスプロモーションなどの分野を中心に、一定規模以上の企業を対象として戦略的M&Aを積極推進する方針を打ち出している。民事再生中のスカイマークに対しては、投融資は行わないが、ブランド再生に関する業務支援を行う。
15年3月海外事業統括管理会社としてシンガポールにTYO-ASIA設立、15年7月インドネシアの広告会社The First Editionの代表Uli氏と合弁会社TYO FIRST EDITION(TYO-FE)設立、15年8月ケー・アンド・エル(K&L社)の第三者割当増資を引き受けて連結子会社化、15年9月三浦武彦氏を代表とする100%子会社ミウラ・アンド・カンパニーを設立、15年11月サニーサイドアップのスピンオフベンチャー企業ENGAWA社(えんがわ社)の第三者割当増資を引き受け、15年12月K&L社がシンガポールに子会社K&L CREATIVE ASIAを設立した。
また6月29日にはTYO-ASIAを通じてタイの有力デジタル・クリエイティブ・エージェンシーであるラビッツ・テール社の増資引き受け(払込日7月29日予定)を発表した。
■AOI.Proと経営統合で基本合意、共同持株会社17年1月上場予定
7月11日にAOI.Pro<9607>との経営統合(株式移転による共同持株会社設立)に関する基本合意書締結を発表した。本経営統合により、業界をリードする新たなグループ企業として、先進的なビジネスモデルを構築するとともに、アジアNO.1の映像を主とする広告関連サービス企業を目指す。
なお経営統合に向けた主なスケジュール(予定)は、16年7月29日統合契約書および株式移転計画承認取締役会、16年9月27日株式移転計画承認臨時株主総会、16年12月28日東京証券取引所上場廃止、17年1月4日統合(共同持株会社設立登記)および共同持株会社株式上場としている。なお株式移転比率は統合契約書締結までに決定する。
■案件ごとの採算性が影響、受注は拡大基調で規模も拡大
15年7月期の四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期52億99百万円、第2四半期72億97百万円、第3四半期69億11百万円、第4四半期88億86百万円、営業利益は3億38百万円、3億83百万円、6億65百万円、4億98百万円だった。
案件ごとの採算性が影響する収益構造である。受注は電気・情報通信、自動車、飲料、衣料などの分野を中心として拡大基調である。また広告主直接取引の受注が大幅増加して、案件規模も拡大しているようだ。
15年7月期の売上総利益率は17.5%で14年7月期比0.2ポイント低下した。販管費比率は10.9%で同0.3ポイント低下した。ROEは21.6%で同8.3ポイント上昇、自己資本比率は38.2%で同0.8ポイント上昇した。配当性向は27.8%だった。
■16年7月期第3四半期累計は増収減益
今期(16年7月期)第3四半期累計(8~4月)の連結業績は、売上高が前年同期比9.9%増の214億44百万円、営業利益が同24.4%減の10億48百万円、経常利益が同29.8%減の9億54百万円、純利益が同42.3%減の4億98百万円だった。受注が好調(同1.7%増の224億18百万円)で増収だが、第1四半期に発生した低利益案件の影響、M&A関連費用、新規連結子会社費用、連結子会社の業績不振などで減益だった。
売上総利益は同2.9%増加したが、売上総利益率は17.2%で同1.2ポイント低下した。販管費は同20.2%増加し、販管費比率は12.3%で同1.0ポイント上昇した。販管費にはM&Aによるのれん償却額61百万円が含まれている。第3四半期末の人員は同135人増加の895人となった。広告主直接取引部門の人員増強や新規連結などで大幅に増加した。なお四半期別の売上総利益率は第1四半期14.1%、第2四半期15.7%、第3四半期17.2%と改善傾向である。
セグメント別に見ると、広告事業は売上高が同11.8%増の205億85百万円、営業利益(連結調整前)が同5.8%減の24億26百万円だった。広告代理店経由取引の受注は電気・情報通信、自動車、飲料、衣料を中心に好調だった。広告主直接取引は、案件の検収時期が第4四半期に集中する傾向があるが、新規連結子会社も寄与して増収だった。利益面では第1四半期の低利益案件が影響したが、第2四半期以降の売上総利益率は改善傾向である。
なお取引形態別に見ると、広告代理店取引は売上高が同5.5%増の151億38百万円で営業利益が同2.1%減の25億32百万円、広告主直接取引は売上高が同33.9%増の54億46百万円で営業利益が同6.7%減の1億30百万円だった。利益面では、広告代理店取引は第1四半期の低利益案件の発生、広告主直接取引はインドネシアにおける新会社の不振が影響した。主要顧客別売上高は電通向けが同21.1%増の66億03百万円、博報堂向けが同13.0%増の43億25百万円だった。
映像関連事業は、売上高が同21.1%減の8億59百万円となり、営業利益が同85.4%減の15百万円だった。アニメーション制作における案件規模縮小、前期の大型ライブ映像案件の一巡などで減収減益だった。なおアニメーション制作の低利益案件の作業終了で利益改善傾向としている。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期54億54百万円、第2四半期83億37百万円、第3四半期76億53百万円で、営業利益は92百万円の赤字、5億円、6億40百万円だった。営業損益は低利益案件の発生が影響した第1四半期をボトムとして改善基調である。
■16年7月期通期は増収減益予想
今期(16年7月期)通期の連結業績予想(2月26日に減額修正)は、売上高が前期(15年7月期)比5.7%増の300億円で、営業利益が同20.4%減の15億円、経常利益が同25.3%減の13億50百万円、純利益が同35.7%減の7億20百万円としている。配当予想(9月11日公表)は前期と同額の年間5円(期末一括)で予想配当性向は43.3%となる。
低利益案件の影響、人員増加による人件費の増加、M&A関連費用や新規連結子会社の不振などで減益予想である。通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高71.5%、営業利益69.9%、経常利益70.7%、純利益69.2%である。やや低水準の形だが売上総利益率が改善傾向であり、広告主直接取引案件の検収時期が第4四半期に集中する傾向があることも考慮すれば通期会社予想の達成は可能だろう。
広告市場は拡大基調であり、国内TV-CM制作業界では当社を含む大手制作3社による寡占化傾向を強めている。国内景気回復や20年東京夏季五輪開催も追い風となるため、事業環境は中期的に良好だろう。AOI.Proとの経営統合も寄与して収益拡大が期待される。
■株主優待制度は毎年1月末に実施(経営統合で変更の可能性あり)
株主優待制度は毎年1月31日現在の10単元(1000株)以上保有株主を対象として、クオカード(1000株以上保有株主に対して1000円相当、3000株以上保有株主に対して5000円相当、5000株以上保有株主に対して1万円相当)を贈呈している。
■株価は強基調に転換して続伸
株価の動きを見ると、AOI.Proとの経営統合報道を材料視して7月11日に198円まで急伸した。その後は一旦急反落したが、自律調整が一巡して水準を切り上げている。
7月26日の終値176円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS11円54銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は2.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS89円31銭で算出)は2.0倍近辺である。時価総額は約110億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を突破し、13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いた。強基調に転換して続伸展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)