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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】きちりは長野県と健康長寿発信に関する戦略的連携協定を締結、株価は調整一巡して切り返し
- 2015/1/22 06:56
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
飲食店チェーン事業と飲食店運営プラットフォーム事業のきちり<3082>(東1)は1月21日、長野県との健康長寿発信に関する戦略的連携協定締結を発表した。株価は直近安値670円から切り返して調整一巡感を強めている。中期成長力を評価して14年11月の戻り高値815円を目指す展開だろう。自己株式取得も支援材料だ。なお2月6日に第2四半期累計(7月~12月)の業績発表を予定している。
カジュアルダイニング「KICHIRI」や「いしがまやハンバーグ」を主力業態とする直営店の自社ブランド展開事業、および飲食店運営のプラットフォーム提供や他業種企業のブランド・コンテンツ活用のプラットフォームシェアリング事業を展開している。
前期(14年6月期)末時点の店舗数は70店舗(関西エリア42店舗、関東エリア28店舗)で、新業態開発にも取り組みながら出店余地の大きい首都圏への新規出店戦略を強化している。14年3月には新業態「igu&peace」を出店した。
プラットフォームシェアリング事業は、当社がITやクラウドを駆使して構築した外食特化型インフラ(購買・物流などのバックヤード機能、会計・労務管理・教育・デザインなどのバックオフィス機能、取引先紹介などのバックアップ機能といった本部機能)を活用する事業だ。大別するとブランド・コンテンツ活用型(優れたブランド・コンテンツを持つ企業と業務提携し、当社のプラットフォームを活用して新しいレストランビジネスを創造する)、およびクラウドサービス展開型(当社が構築した外食特化型インフラを他の飲食店チェーンなどに提供してアウトソーシング受託する)を展開している。
ブランド・コンテンツ活用型では独自性ある新業態が開発でき、クラウドサービス展開型では参画企業・店舗数の増加に伴ってスケールメリットが得られる。ブランド・コンテンツ活用型では13年2月精米機トップメーカーで「ギャバライス」ブランドのサタケ、13年4月イタリアのバッグブランド「オロビアンコ」、13年5月福岡県「はかた地どり」生産者の農業組合法人福栄組合と業務提携した。
1月21日にはプラットフォームシェアリング事業の一環として、健康長寿県として注目されている長野県との間で、食を通じた健康長寿発信の推進に関して戦略的連携協定を締結すると発表した。長野県の食材の魅力と健康長寿のライフスタイルと食文化を広く発信することを目的に、協業の第一弾としてJR長野駅に直結した駅ビル「MIDORI長野」内に「長野県長寿食堂」をオープン(15年3月)する。
今期(15年6月期)の業績(非連結)見通し(8月8日公表)は売上高が前期比8.5%増の75億円、営業利益が同45.7%増の7億円、経常利益が同35.8%増の7億円、純利益が同41.9%増の4億20百万円、配当予想は前期から記念配当2円50銭を落として年間7円50銭(期末一括)としている。
既存店売上高は98.5%、新規出店は10店舗の計画だ。出店戦略において優先的に出店したい立地の物件が確保できる状況のため、前期の新規出店4店舗に比べて大量出店となる。またクラウドサービス展開型の提供店舗数は、自社ブランド店舗を含めて前期末の約200店舗から今期末には約300店舗に増加する見込みとしている。
第1四半期(7月~9月)は既存店が好調に推移して前年同期比3.4%増収、21.3%営業増益、17.8%経常増益、25.4%最終増益だった。通期見通しに対する進捗率は売上高22.7%、営業利益14.9%、経常利益15.7%、純利益16.2%と低水準だが、既存店売上高が計画を上回るペースで推移し、第2四半期(10月~12月)に新規出店が加速していることを考慮すれば、特にネガティブ要因とはならない。クラウドサービス展開型の拡大も寄与して通期業績見通しに増額余地があるだろう。
月次レポート(前年同月比、速報値)を見ると、14年12月の売上高は既存店(対象66店舗)が100.0%、全店(対象71店舗)が104.0%だった。既存店の客数は5ヶ月連続の前年比プラスとなった。ブランド認知度向上効果などで第2四半期も好調に推移したようだ。
中長期ビジョンでは、自社ブランド展開事業およびプラットフォームシェアリング事業を2本柱として展開し、目標値として18年6月期売上高100億円、営業利益15億円、経常利益16億円、純利益10億円、配当性向30%(当面は20%)を掲げている。事業別には自社ブランド展開事業が100店舗で売上高94億円、プラットフォームシェアリング事業が契約店舗数500店舗(契約売上規模300億円)で営業利益6億円を目標としている。
自社ブランド展開事業の新規出店加速に加えて、15年は長野県との戦略的連携協定を皮切りに、プラットフォームシェアリング事業における連携も加速するようだ。中期的に収益拡大基調だろう。
なお14年9月に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限15万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間14年9月8日~15年3月31日)については、12月31日時点の累計で取得株式総数7万2600株、取得価額総額4831万9700円となっている。
株主優待制度については毎年12月31日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。優待内容は14年12月31日現在の対象株主から「当社運営店舗で利用できる優待券3000円分、または近隣に店舗がない等の理由で優待券を利用しない方は当社事業における関連商品を選択できる」とした。
株価の動きを見ると、14年11月の戻り高値815円から反落して調整局面だったが、1月14日と19日の直近安値670円から切り返しの動きを強めている。調整が一巡したようだ。
1月21日の終値692円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS41円35銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間7円50銭で算出)は1.1%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS157円27銭で算出)は4.4倍近辺である。
週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から反発の動きを強めている。サポートラインを確認した形であり、中期成長力を評価して14年11月の戻り高値815円を目指す展開だろう。自己株式取得も支援材料だ。