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イワキは16年11月期第2四半期累計は減益だが計画超、通期予想にも増額余地
- 2016/7/29 07:46
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
イワキ<8095>(東1)は医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社である。16年11月期第2四半期累計は減益だが、ジェネリック医薬品関連が好調で計画を上回った。通期予想にも増額余地がありそうだ。株価は調整一巡して戻り歩調だろう。指標面の割安感も見直し材料だ。
■医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社
医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社である。グループ内に医薬品製造・販売の岩城製薬、表面処理薬品製造・販売のメルテックスといったメーカー機能も備えている。
16年11月期から事業区分を再構成して、医薬・FC(Fine Chemical)事業(医薬品原料の製造・販売、医薬品の製造・販売、体外診断薬・研究用試薬の卸売および医療機器の販売)、HBC(Health & Beauty Care)事業(化粧品原料・機能性食品原料の販売、一般用医薬品・関連商品の卸売、化粧品通信販売)、化学品事業(表面処理薬品・電子工業薬品・化成品の製造・販売、表面処理設備の製造・販売)、食品事業(食品原料の製造・販売)の4事業とした。
15年11月期売上高構成比(新区分組替後)は、医薬・FC事業35%(原料薬品23%、医薬品9%、その他特約3%)、HBC事業43%(HBC原料20%、ファルマネット19%、オリジナル製品4%)、化学品事業11%(表面処理薬品7%、スペシャリティマテリアル1%、表面処理設備3%)、食品事業7%だった。
■卸売・商社・メーカー機能の連携を強化、天然界面活性剤市場に参入
全国の医薬品卸・医療機関・ドラッグストアなどに医薬品や機能性食品などを供給する卸売機能、国内外のメーカーなどを開拓して輸出入する商社機能、グループ内に岩城製薬とメルテックスのメーカー機能を併せ持つことが強みで、卸売・商社・メーカー機能の連携を強化している。
中期的な事業基盤強化と収益拡大に向けて、医薬品事業での共同開発・受託品の拡大、ドラッグストア向けPB商品など自社企画商品開発強化、医薬品原料事業における市場シェア拡大、インド・グレンマーク社など海外サプライヤーとの連携強化、岩城製薬の生産能力増強と新製品開発、メルテックスの新製品拡販、海外(タイ、韓国、中国)展開強化、日立化成<4217>とのアライアンスによる拡販などを推進している。
7月14日にはシンガポールのAllied Carbon Solutions(ASC社)と業務提携して天然界面活性剤市場に参入すると発表した。同社は非可食天然物「マフア」の種から抽出した油脂を発酵させて天然界面活性剤を製造する高度な技術を有している。同社がインドの子会社で商業生産化する天然界面活性剤「ACS-Sophor」を、医薬品・化粧品・健康食品・食品の事業分野において当社が優先的に販売する権利を得た。
■15年11月期は化学品事業が新製品への切り替えで低調
四半期別の推移を見ると、14年11月期は売上高が第1四半期125億44百万円、第2四半期141億92百万円、第3四半期131億90百万円、第4四半期142億19百万円、営業利益が1億90百万円、4億24百万円、23百万円の赤字、2億99百万円だった。15年11月期は売上高が130億01百万円、145億15百万円、139億58百万円、139億48百万円、営業利益が90百万円、3億08百万円、1億46百万円、15百万円だった。
15年11月期は、ジェネリック医薬品関連やインバウンド需要関連が伸長したが、化成品事業が15年3月の業務提携解消に伴って新規導入製品のプリント配線板用「ルーセントカパー」シリーズへの切り替えを進めているため減収となり、メルテックスの繰延税金資産取崩も影響して最終赤字だった。売上総利益率は19.4%で14年11月期比1.2ポイント低下、販管費比率は18.4%で同0.6ポイント低下した。配当は同1円50銭減配の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)だった。
■16年11月期第2四半期は減益だが計画超
7月14日発表した今期(16年11月期)第2四半期累計(12~5月)連結業績(5月18日に利益を増額修正)は、売上高が前年同期比2.4%減の268億44百万円、営業利益が同16.8%減の3億31百万円、経常利益が同30.7%減の3億38百万円、純利益が同54.8%減の95百万円だった。
インバウンド需要関連が一段落し、化成品事業が新規導入製品への切り替えで低水準のため減収減益だが、高付加価値のジェネリック医薬品関連が伸長し、プリント基板製造プラントを中国で製造販売するTCM上海を連結子会社化したことも寄与(営業利益で約0.5億円)して利益は期初計画を大幅に上回った。
売上総利益は同2.5%減少したが、売上総利益率は20.1%で同0.3横ばいだった。販管費は同1.4%減少したが、販管費比率は18.9%で同0.3ポイント上昇した。営業外収益では有価証券償還益66百万円が一巡した。営業外費用では持分法投資損失が減少(前期11百万円、今期0百万円)したが、為替差損が増加(前期5百万円、今期50百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益25百万円、特別損失では過年度決算訂正関連費用50百万円を計上した。
セグメント別に見ると、医薬・FC事業は売上高が同9.1%増の102億34百万円、営業利益(連結調整前)が同20.4%増の6億13百万円だった。薬価改定の影響は軽微で、後発医薬品使用促進策も追い風となり、医療用医薬品では主力の外皮用剤が伸長し、医療用医薬品原料ではジェネリック医薬品の大型品目への新規納入が寄与した。HBC事業は売上高が同0.5%増の108億70百万円、営業利益が同21.1%減の21百万円だった。機能性食品原料、化粧品原料は堅調だが、インバウンド需要関連が一段落した。
化学品事業は売上高が同37.8%減の26億10百万円、営業利益が3億21百万円の赤字(前年同期は1億32百万円の赤字)だった。新規導入製品のプリント配線板用「ルーセントカパー」シリーズへの切り替えを進めていることに加えて、中国を中心とするスマホ関連需要の減速も影響した。食品事業は売上高が同3.1%減の18億89百万円、営業利益が14百万円の赤字(同7百万円の赤字)だった。受託加工が低調だった。
なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期127億53百万円、第2四半期140億91百万円、営業利益は1億61百万円、1億70百万円だった。
■16年11月期は大幅増益予想で増額余地
今期(16年11月期)通期の連結業績予想(1月14日公表)は、売上高が前期(15年11月期)比1.0%増の560億円、営業利益が同51.9%増の8億50百万円、経常利益が同29.6%増の9億円、純利益が4億50百万円(前期は1億43百万円の赤字)としている。配当予想は前期と同額の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)で予想配当性向は45.0%となる。
医薬・FC事業は後発医薬品の数量ベース普及率を80%以上に引き上げる政府の骨太方針も追い風となってジェネリック医薬品関連が伸長する。化学品事業は新規導入製品「ルーセントカパー」シリーズへの評価が進捗し、今期中の単月黒字化を目標としている。来期(17年11月期)は大幅に増加する見込みだ。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.9%、営業利益が39.0%、経常利益が37.6%、純利益が21.1%である。やや低水準の形だが期初時点で下期偏重の計画である。また猛暑効果に不透明感があり、HBC事業はインバウンド需要関連が弱含みのため通期予想を据え置いたとしているが、化学品事業の収益改善進展も考慮すれば通期も増額余地があるだろう。
■グループ中長期ビジョンおよび新中期経営計画を策定
創業111年を迎える25年11月期に向けて、グループ中長期ビジョン「Vision i-111」および新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)を策定した。
グループ中長期ビジョン「Vision i-111」では、基本戦略を、策揃え企業になる=Intelligent、ナンバーワン製品・事業に注力する=Innovative、海外市場への事業展開を図る=International、資本効率を意識した事業運営を行う=Investmentとして、数値目標には創業111周年25年11月期の連結売上高1000億円、ROIC10.0%以上を掲げた。
新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)では、これまで独立的に運営されていた事業部門をプロダクツごとのバリューチェーンに従って統合・運営するため、組織体系を4事業(医薬・FC事業、HBC事業、化学品事業、食品事業)に再構成し、数値目標には18年11月期売上高600億円、営業利益10億円、ROIC4.0%以上を掲げた。
医薬・FC事業(イワキ、岩城製薬)では、原料の選定から最終製品の提供までを「策揃え」で提供するほか、国内外の医薬関連企業との協業を通して、さらなる市場拡大に努める。
HBC事業(イワキ、アプロス)では、OEMやプライベート・ブランド製品の自社企画・提案を通して、国内の健康食品原料市場における高シェアを維持・拡大する。海外市場の開拓も推進する。化粧品通信販売では「シルキーカバーオイルブロック」の拡販を図る。
化学品事業(メルテックス)では、高い技術力・ブランド力を持つIチップ抵抗向けスズめっき「メルプレートSN」シリーズの世界市場シェアNO.1を確保するとともに、15年から販売開始した大型新製品のプリント配線板向け硫酸銅めっき「ルーセントカパー」シリーズのグローバルシェア拡大を図る。
食品事業(イワキ、持分法適用会社のボーエン化成)では、商品開発効率化、生産コスト低減、ボーエン化成における国産・高付加価値原料の受託加工強化などを推進する。海外展開に関してはハラル対応原料に特化したマーケティングを開始し、マレーシア、インドネシア、中近東諸国の市場開拓に注力する。
■株価は調整一巡して戻り歩調
株価の動きを見ると、地合い悪化が影響した6月の直近安値175円から反発して下値を切り上げている。そして7月28日には195円まで上伸した。
7月28日の終値194円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS13円33銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は3.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS514円23銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約66億円である。
週足チャートで見ると170円台が下値支持線の形となり、26週移動平均線突破の動きを強めている。3%台の予想配当利回りや0.4倍近辺の低PBRと指標面の割安感は強い。調整一巡して戻り歩調だろう。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)