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第一実業は指標面の割安感も見直して戻り歩調、17年3月期第1四半期大幅増収増益
- 2016/8/1 07:37
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
第一実業<8059>(東1)は総合機械商社でバイナリー発電関連への展開も強化している。7月29日発表した17年3月期第1四半期連結業績は大幅増収増益だった。通期も増収増益予想である。株価は直近安値圏から切り返している。指標面の割安感も見直して戻り歩調だろう。
■産業機械を主力とする総合機械商社
各種産業機械を主力とする総合機械商社で、海外は米州、中国、東南アジア・インド、欧州など世界18カ国36拠点に展開している。
15年4月連結子会社の第一メカテックのDJTECH事業部門を名古屋電機工業<6797>に譲渡した。DJTECH事業部門は高性能はんだ印刷検査装置の開発・製造・販売を行っており、名古屋電機工業と当該検査装置事業に係る代理店契約を締結し、製販サービスの一貫体制を強化して両社の事業拡大を目指す。
16年3月期のセグメント別売上高構成比はプラント・エネルギー事業23.2%、産業機械事業35.0%、エレクトロニクス事業34.3%、ファーマ事業5.3%、航空事業1.9%、その他0.3%だった。海外売上比率は46.7%だった。
■植物工場やバイナリー発電関連など新規分野への展開も強化
新規分野として、植物工場システムに関するプロジェクトで埼玉県入間市にパイロットプラントを建設した。茨城県笠間市と長野県飯田市ではメガソーラーを運営している。
地熱、温泉熱、焼却廃熱、一般工場廃熱など、未利用熱エネルギーを有効活用して発電するバイナリー発電装置ビジネスに関しては、14年4月米アクセスエナジー社の小型バイナリー発電装置の日本国内での独占的製造権を取得し、14年5月独占販売代理店契約を締結した。さらに16年5月には三菱重工業<7011>グループのターボデン(イタリア)社製バイナリー発電装置の国内販売総代理店契約を締結した。中大型バイナリー発電装置をラインナップに加えて事業拡大を図る。
■四半期収益は設備投資関連の大型案件によって変動
四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は受注高が第1四半期427億64百万円、第2四半期300億50百万円、第3四半期338億04百万円、第4四半期673億87百万円、売上高は320億72百万円、412億59百万円、299億74百万円、400億56百万円、営業利益は44百万円、16億79百万円、4億48百万円、21億70百万円で、16年3月期は受注高が390億71百万円、315億81百万円、384億41百万円、318億08百万円、売上高が296億61百万円、321億30百万円、226億66百万円、397億19百万円、営業利益が5億16百万円、11億98百万円、3億29百万円、18億42百万円だった。16年3月期末受注残高は1100億25百万円だった。
大型案件の受注・完成時期で四半期収益は変動しやすく、設備投資関連のため第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。16年3月期は、アジア地域を中心とした海外向けプラント用設備の大口案件が減少し、自動車関連業界向け自動組立ライン、自動加工機、塗装ロボットなどの大口案件も減少した。利益面では貸倒引当金繰入額が減少したが、排水処理プラント建設において下請け業者の作業品質に起因する工期遅延でコストが増加したことも影響した。
売上総利益は同4.0%減少したが、売上総利益率は14.6%で同1.4ポイント上昇した。販管費は同2.1%減少したが、販管費比率は11.5%で同1.3ポイント上昇した。営業外では為替差損益が改善し、持分法投資利益が増加した。特別損失では事業譲渡損が一巡した。ROEは7.4%で同1.3ポイント低下、自己資本比率は37.9%で同0.4ポイント低下した。配当性向は34.5%だった。
セグメント別の動向を見ると、プラント・エネルギーは受注高が46.0%減の359億95百万円、売上高が15.6%減の287億47百万円、営業利益(連結調整前)が0百万円の赤字(前々期は5億33百万円の黒字)だった。アジア地域中心に海外向けプラント用設備大口案件が減少し、排水処理プラント建設において下請け業者の作業品質に起因する工期遅延でコストが増加したことも影響した。
産業機械は受注高が15.2%減の438億68百万円、売上高が15.3%減の434億88百万円、営業利益が32.2%減の14億05百万円だった。自動車関連業界向け自動組立ライン、自動加工機、塗装ロボットなどの大口案件が減少し、家電・自動車部品製造の射出成形機および周辺機器も減少した。
エレクトロニクスは、受注高が10.8%増の484億36百万円で、売上高が2.1%減の425億92百万円、営業利益が2.3倍の15億11百万円だった。売上面では中国・アジア地域中心にIT・デジタル関連機器製造会社向け電子部品実装機などの大口案件が減少したが、粗利益率が改善した。
ファーマは受注高が13.5%増の81億05百万円、売上高が23.7%減の66億22百万円、営業利益が6.2%増の9億円だった。売上面では錠剤外観検査装置やパッケージング用機器・装置などが減少したが、粗利益率が改善した。
航空は受注高が11.0%減の39億41百万円、売上高が55.5%減の23億95百万円、営業利益が70.8%減の90百万円だった。航空機地上支援機材や空港施設関連機器などの大口案件が減少した。
■17年3月期第1四半期は大幅増収増益
7月29日発表した今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は売上高が前年同期比27.1%増の377億11百万円、営業利益が同91.6%増の9億89百万円、経常利益が同69.4%増の11億22百万円、そして純利益が同63.9%増の7億50百万円だった。プラント・エネルギーの大口案件、エレクトロニクスやファーマの好調などで大幅増収増益だった。なお受注高は同4.2%減の374億36百万円、海外売上比率は53.7%だった。
売上総利益は同9.4%増加したが、売上総利益率は12.2%で同1.9ポイント低下した。販管費は同2.1%減少し、販管費比率は9.5%で同2.9ポイント低下した。営業外では為替差損益が改善(前期は差損12百万円、今期は差益16百万円)した。特別損失では投資有価証券評価損59百万円を計上した。
セグメント別の動向を見ると、プラント・エネルギーは売上高が52.3%増の118億40百万円、営業利益(連結調整前)が28百万円(前年同期は15百万円の赤字)だった。大手エンジニアリング会社経由の海外向け石油プラント・エチレンプラント用設備、化学会社向け樹脂製造プラント用設備など既存受注大口案件を医売上計上した。
産業機械は売上高が7.8%減の88億84百万円、営業利益が57.7%減の1億15百万円だった。自動車関連業界向け自動組立ライン、自動加工機、塗装ライン、家電・自動車部品製造の射出成形機などが減少した。エレクトロニクスは売上高が34.3%増の139億円、営業利益が2.2倍の5億96百万円だった。IT・デジタル関連機器製造会社向け電子部品実装機が好調だった。
ファーマは売上高が67.4%増の24億05百万円、営業利益が2.2倍の1億28百万円だった。錠剤外観検査装置やパッケージング用機器・装置などが好調だった。航空は売上高が2.8倍の6億60百万円、営業利益が36百万円(同48百万円の赤字)だった。航空機地上支援機材や空港施設関連機器などが好調だった。
■17年3月期通期も増収増益予想
今期(17年3月期)通期の連結業績予想は前回予想(5月11日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年3月期)比2.3%増の1270億円、営業利益が同8.1%増の42億円、経常利益が同2.8%増の45億円、純利益が同6.1%増の28億円としている。受注高は同9.1%減の1280億円の計画である。前期発生した一時的コスト増加要因一巡も寄与して増収増益予想である。配当予想は前期と同額の年間17円(第2四半期末9円、期末8円)で予想配当性向は32.6%となる。
セグメント別の計画は、プラント・エネルギーの受注高が325億円、売上高が354億円、産業機械の受注高が325億円、売上高が370億円、エレクトロニクスの受注高が490億円、売上高が430億円、ファーマの受注高が78億円、売上高が80億円、航空の受注高が60億円、売上高が35億円、その他の受注高が2億円、売上高が1億円としている。
なお通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が29.7%、営業利益が23.6%、経常利益が24.9%、純利益が26.8%と順調な水準である。
■新中期経営計画で19年3月期純利益33億円目標
16年5月策定の新中期経営計画「DASH2018」では、基本方針を「グローバルに事業軸体制を進め、一層の業績拡大を実現する」「経営体質の向上を図り、強力なガバナンス体制を構築する」とした。経営目標数値には最終年度19年3月期の売上高1330億円、営業利益50億円、経常利益53億円、純利益33億円を掲げている。
■株価は指標面の割安感も見直して戻り歩調
株価の動きを見ると、直近安値圏420円台から切り返し、7月中旬以降は概ね480円~500円近辺で推移している。
7月29日の終値493円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS52円09銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は3.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS669円51銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約273億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線突破の動きを強めている。指標面の割安感も見直して戻り歩調だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)