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アーバネットコーポレーションは調整一巡して出直り、17年6月期も収益拡大基調期待
- 2016/8/2 07:50
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アーバネットコーポレーション<3242>(JQS)は東京23区中心に投資用・分譲用マンション開発・販売事業を展開し、16年6月期増収増益・増配予想である。需要が高水準で17年6月期も収益拡大基調が期待される。株価は直近安値圏から切り返しの動きを強めている。指標面の割安感が強く、調整一巡して出直り展開だろう。なお8月9日に16年6月期決算発表を予定している。
■東京23区中心に投資用マンション開発・販売
東京23区中心に投資用・分譲用マンション開発・販売事業を展開している。徹底したアウトソーシングで固定費を極小化していることが特徴だ。15年6月期末の役職員数は43名で、15年6月期の販管費比率は7.8%だった。
15年7月連結子会社アーバネットリビングが操業した。当社は投資用ワンルームマンション開発・1棟販売や分譲マンション開発などBtoB卸売、アーバネットリビングは当社開発物件の戸別販売、他社物件の買取再販、マンション管理・賃貸などBtoC小売を基本事業とする。
自社開発物件ブランドは、ワンルームマンションの「アジールコート」、コンパクトマンションの「アジールコフレ」、ファミリーマンションの「グランアジール」、戸建住宅の「アジールヴィラ」である。
■開発物件の分野を拡大
16年3月には、最近の東京23区における事業用地購入の環境、ならびに将来の不動産市場の環境を考慮し、これらへの積極対応として開発物件の分野拡大を発表した。
当社グループが展開している開発地域(東京23区駅10分以内に特化)の事業用地については、都心への人口流入や開発の一極集中による価格上昇もあり、優良事業用地の確保が難しい状況となっている。こうした環境に対応するため、従来は投資用ワンルームマンション用地として取得しなかった狭小用地についても、アパートや戸建住宅として開発する。川崎市や横浜市など人口増加・優良地域への開発エリアの拡大、売上総利益率安定化に向けた分譲物件開発の平準化などの施策に加えて、開発物件分野拡大による業績の向上を目指す方針だ。
■海外投資家への直接販売強化
また投資意欲旺盛な台湾・シンガポール・香港・中国本土の海外投資家への直接販売など販売手法の多様化も推進している。
14年7月売買契約締結した投資用ワンルームマンション「アジールコート銀座イースト」が海外投資家への直接販売第一弾となり、14年11月投資用ワンルームマンション「アジールコート新宿」の売買契約を締結、15年2月投資用ワンルームマンション「AXAS大森西アジールコート」店舗1戸の売買契約を締結した。15年10月には投資用ワンルームマンション「アジールコート麻布十番」(仮称、16年12月末竣工予定、56戸うち店舗1戸)について、東急リバブルソリューションン事業本部の仲介で海外法人との売買契約が成立した。
また15年12月、投資用ワンルームマンション「錦糸町IVPJ」(仮称、16年6月竣工、96戸)について国内法人への1棟販売が確定した。売上計上は17年6月期予定で本物件取引は信託受益権売買としている。16年1月には投資用ワンルームマンション「芝公園PJ」(仮称、16年12月竣工予定、56戸)売却が確定した。国内個人投資家への1棟販売で売上計上は17年6月期予定である。
16年4月には台湾投資家への当社の浸透を図ることを目的として、アンビシャス・コンサルタント・インターナショナル(台湾台北市)が台湾在住の投資家を対象に日本の不動産を紹介する拠点として開設する「M.I.J.サロン」(台北市)に当社常設ブースを設置した。
■物件売上計上で四半期業績が変動する収益構造
15年6月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(非連結)29億47百万円、第2四半期(非連結)18億84百万円、第3四半期(連結)53億91百万円、第4四半期(連結)16億88百万円、営業利益は3億63百万円、1億33百万円、9億51百万円、2億05百万円だった。
物件売上計上で四半期収益は変動しやすい収益構造である。また固定費比率が低いため、利益の出やすい収益構造である。15年6月期の売上総利益率は21.7%で14年6月期(非連結)比2.9ポイント上昇、販管費比率は7.8%で同0.3ポイント上昇した。またROEは21.1%、自己資本比率は32.6%、配当性向は31.3%だった。配当性向についての基本方針は、従来は当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の30%を配当するとしていたが、16年6月期より当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の35%を配当する。
■16年6月期第3四半期累計は一過性要因で減益
今期(16年6月期)第3四半期累計連結業績は、前年同期比8.2%増収、同25.5%営業減益、同32.6%経常減益、同31.1%最終減益だった。自社開発物件の売上計上が減少し、利益率の低い買取再販と用地転売を売上計上したため全体の利益率が低下した。また6月の本社移転による販管費増加も影響した。ただし一過性要因としている。売上総利益は同6.1%減少し、売上総利益率は17.9%で同2.7ポイント低下した。販管費は同36.2%増加し、販管費比率は8.2%で同1.7ポイント上昇した。
自社開発物件は投資用ワンルームマンション10棟の戸別決済ならびに1棟販売で合計412戸を売上計上(前年同期は485戸)した。また他社物件の買取再販物件を1棟販売含めて合計32戸、土地転売を1物件売上計上した。事業別売上高は不動産開発販売が同6.5%減の94億57百万円、不動産仕入販売が15億14百万円(前年同期はなし)、その他が同22.3%減の87百万円だった。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期17億55百万円、第2四半期61億04百万円、第3四半期32億円、営業利益は93百万円、8億21百万円、1億64百万円だった。
■16年6月期通期は増収増益・増配予想、17年6月期も収益拡大基調期待
前期(16年6月期)通期の連結業績予想(3月10日に増額修正)は売上高が前々期(15年6月期)比42.7%増の170億円、営業利益が同16.2%増の19億20百万円、経常利益が同16.1%増の16億20百万円、そして純利益が同16.8%増の10億20百万円としている。配当予想(3月10日に増額修正)は前期比2円の増配年間15円(第2四半期末7円、期末8円)としている。予想配当性向は36.7%となる。
売上計上は投資用ワンルームマンション15棟・657戸および戸建4棟の自社開発物件合計661戸(全戸販売契約済)、買取再販物件1棟(30戸)および戸別販売7戸(販売契約済32戸、販売中3戸)の予定である。売上総利益率は同3.1ポイント低下の18.6%、販管費比率は同0.5ポイント低下の7.3%の想定である。第4四半期に国内外投資家への1棟販売が2物件あるため売上総利益率が良化する見込みだ。
さらに今期(17年6月期)は、投資用ワンルームマンション14棟・650戸(販売契約済598戸、未契約52戸)、ファミリーマンション1棟・49戸+店舗2戸(販売準備中)、アパート1棟・12戸(未契約)、自社開発物件合計713戸(販売契約済598戸、未契約115戸)の売上計上を予定している。買取再販物件は検討中である。低金利継続や相続税対策による不動産投資見直しなどを背景に、海外投資家も加わって投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛である。17年6月期も収益拡大基調が期待される。
■株価は調整一巡して出直り、指標面に割安感
株価の動きを見ると、6月下旬~7月上旬の直近安値圏270円近辺から切り返しの動きを強めている。7月27日には301円まで上伸する場面があった。
8月1日の終値397円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS40円84銭で算出)は9~10倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は3.8%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS203円43銭で算出)は2.0倍近辺である。時価総額は約74億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線突破の動きを強めている。指標面の割安感が強く、調整一巡して出直り展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)