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建設技術研究所の16年12月期第2四半期累計は減益だが景気対策関連で注目
- 2016/8/2 07:41
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタントの大手である。7月28日発表した16年12月期第2四半期累計の連結業績は減益だったが、景気対策関連や国土強靭化関連が注目テーマとなる。株価は6月の年初来安値圏から切り返している。指標面の割安感も見直して戻り歩調だろう。
■総合建設コンサルタントの大手
総合建設コンサルタントの大手で、河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。
13年9月農業・農村関連ビジネスへの参入を視野に入れて子会社CTIフロンティアを立ち上げ、14年4月太陽光発電事業に着手、15年6月環境総合リサーチ(旧ユニチカ環境技術センター)を完全子会社化(非連結子会社)した。15年11月には組織建築設計事務所の日総建をグループ企業(連結子会社)に迎えた。
なお7月25日、特定非営利活動法人ファーザーリング・ジャパンが14年12月設立した「イクボス企業同盟」に加盟したと発表している。今回の加盟を契機として、イクボス自らとイクホスの周囲の社員のワーク・ライフ・バランスが実現するよう、トップダウンで取り組みを進めるとしている。
■15年12月期は売上総利益率上昇
15年12月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期78億09百万円、第2四半期137億37百万円、第3四半期91億59百万円、第4四半期95億15百万円、営業利益は同様に1億92百万円、15億05百万円、4億84百万円、4億17百万円だった。案件ごとの採算性や売上計上時期によって四半期収益は変動しやすい。
15年12月期の売上総利益率は27.0%で14年12月期0.7ポイント上昇、販管費比率は20.5%で同0.3ポイント上昇、ROEは7.2%で同0.3ポイント上昇、自己資本比率は53.9%で同0.8ポイント上昇した。配当性向は17.3%だった。
■16年12月期第2四半期累計は減益
7月28日発表した今期(16年12月期)第2四半期累計(1~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.8%増の221億51百万円となり、営業利益が同17.3%減の14億04百万円、経常利益が同21.5%減の13億77百万円、純利益が同16.6%減の8億98百万円だった。前年同期との比較で減益だが、概ね計画水準のようだ。受注高は同2.2%減の222億53百万円だった。
売上総利益は同1.8%減少し、売上総利益率は25.3%で同1.2ポイント低下した。販管費は同4.7%増加し、販管費比率は19.0%で同0.3ポイント上昇した。営業外では為替差損が増加(前期6百万円、今期89百万円)した。
■16年12月期通期は増収減益予想
今期(16年12月期)通期の連結業績予想は前回予想(2月15日公表)を据え置いて、売上高が前期(15年12月期)比5.7%増の425億円、営業利益が同7.6%減の24億円、経常利益が同8.6%減の25億円、純利益が同2.0%減の16億円としている。受注高は同4.1%増の420億円の計画としている。配当予想は前期と同額の年間20円(期末一括)で予想配当性向は17.7%となる。
東日本大震災の復興関連業務の重点が設計段階から施工段階に移行し、財政再建のための公共工事発注減少も予想されるとして、やや慎重な見通しだ。通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高52.1%、営業利益58.5%、経常利益55.1%、純利益56.2%と順調な水準である。景気対策の公共投資前倒しや災害復旧・復興関連の補正予算を追い風として上振れの可能性もあるだろう。
■中期経営計画で18年連結受注高470億円目指す
15年5月にグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」を策定し、15年11月には中期経営計画2018を発表した。中期経営計画2018では、中長期ビジョン「CLAVIS2025」の最初の3年間の計画として、企業体力を強化するとともに事業ドメインの拡大を図り、マルチインフラ&グローバル企業へ向けての基盤を築くことを基本的な考え方とした。
そして中長期ビジョン「CLAVIS2025」目標(25年単体受注高400億円、連結受注高600億円)達成に向けて、中期経営計画2018では目標値として18年単体受注高350億円、連結受注高470億円、単体営業利益率7.0%(営業利益24億円)、連結営業利益率6.5%(営業利益30億円)を掲げている。株主還元については安定配当を維持する方針だ。
また16年6月にはマルチインフラ&グローバル展開を担う3つの主要グループ会社の中長期ビジョンを策定したと発表している。
建設技研インターナショナルは、アジアを中心とした拠点整備や都市インフラ部門の基幹分野の育成を進め、100億円の事業規模を目指す。福岡都市技術は、区画整理事業をコアとして周辺事業へ展開し、日総建および本体とあわせ、CTI都市・建築グループとして都市プロジェクト事業計画から設計・監理・運営までワンストップで担うことを目指す。また地圏総合コンサルタントは、土壌・地盤・地質分野の新規顧客開拓、新事業開拓へと大きく舵を切り、これらの分野の事業規模を30億円まで拡大させることを目指す。
■中期的に事業環境は良好
中期的に事業環境は良好である。20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設ビッグプロジェクトが目白押しであり、国土強靭化基本計画に沿って社会資本整備に対する計画的な投資が実行される。
防災・減災関連、老朽化インフラ補修・更新関連、都市再開発関連、アベノミクス重点戦略「地方創生」関連の案件が増加し、土木コンサルタント業務の積算に用いられる技術者単価や一般管理費の比率が上昇して採算改善も期待される。そして、技術力によって契約企業を選定するプロポーザル方式において優位性を発揮している。
中期的に良好な事業環境も背景に、CTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」で掲げた新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等への事業領域拡大戦略も奏功して収益拡大が期待される。
■株価は指標面の割安感も見直して戻り歩調
株価の動きを見ると、6月の年初来安値753円から切り返しの動きを強めている。7月28日には950円まで急伸する場面があり、その後も900円台で推移している。
8月1日の終値921円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS113円15銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.2%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1675円40銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約130億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を一気に突破した。調整一巡して強基調に転換する形だ。指標面の割安感も見直して戻り歩調だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)