生化学工業は17年3月期第1四半期減益だが中期的に需要拡大期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 生化学工業<4548>(東1)は関節機能改善剤アルツが主力の医薬品メーカーである。17年3月期第1四半期は薬価改定や円高の影響で減益だった。通期も減収減益予想だが、高齢者人口増加を背景として中期的に関節機能改善剤の需要拡大が期待される。株価は6月の直近安値圏から切り返して戻り歩調だ。

■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー

 糖質科学分野が主力の医薬品メーカーで、国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け関節機能改善剤スパルツ、米国向け単回投与関節機能改善剤ジェル・ワン、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。高齢者人口増加を背景に関節機能改善剤の需要拡大が期待される。

 内視鏡用粘膜下注入材ムコアップについては販売提携先を変更し、16年4月からボストン・サイエンティフィック・ジャパンと日本国内における独占販売契約を締結した。

■新薬開発は糖質科学分野に焦点

 09年3月策定の「生化学工業10年ビジョン」に基づいて、研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞り、国際競争力を確立する「グローバル・カテゴリー・ファーマ」としての発展を目指している。開発中の新薬としては腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603(コンドリアーゼ)、変形性膝関節症改善剤SI-613(NSAID結合ヒアルロン酸)、ドライアイ治療剤SI-614(修飾ヒアルロン酸)がある。

 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603は、日本で14年1月に製造販売承認申請して審査継続中である。米国・欧州では15年7月フェーズ3試験の症例登録を完了し、現在は経過観察中である。また16年6月スイスのフェリング社とSI-6603の海外におけるライセンスに関する基本合意書を締結した。正式契約は17年3月期上期中を予定している。日本における独占的販売契約については12年12月に科研製薬<4521>と締結している。

 変形性膝関節症改善剤SI-613は日本で16年1月フェーズ2試験(反復投与)が終了し、現在はデータ解析中である。ドライアイ治療剤SI-614は米国・欧州で15年1月フェーズ2・3試験が終了し、次相試験について検討中である。

 16年2月にはジェネリック医薬品である眼科手術補助剤「シェルガン0.5眼粘弾剤」の製造販売承認を取得した。眼科手術補助剤オペガンと同様に参天製薬<4536>が販売する。

■品揃え充実で重点地域の米国におけるプレゼンスを強化

 変形性膝関節症を適応症とする医療機器「VISCO-3」は、15年12月米国食品医薬局(FDA)の承認を取得した。ヒアルロン酸主成分とする関節機能改善剤で、1治療あたり3回投与の3本キット製品である。

 米国では高齢化に伴って関節機能剤の市場拡大が予想されているため、単回投与製品「Gel-One」、5回投与製品「SUPARTZ FX」(15年10月SUPARTZからブランド名変更)に加えて、3回投与製品「VISCO-3」を新たに市場投入し、重点地域の米国に置いてプレゼンス強化を図っている。

■薬価改定、為替、研究開発費などが影響する収益構造

 収益は販売数量、薬価改定、為替、研究開発費、受取ロイヤリティーなどが影響する。16年3月期はジェル・ワン数量増や円安などで増収だが、研究開発費が想定以上に増加して減益だった。

 売上総利益率は58.4%で15年3月期比0.5ポイント低下、販管費比率は51.5%で同0.7ポイント上昇した。減価償却費は同22.3%増の31億91百万円、研究開発費は同6.2%増の86億49百万円だった。営業外収益では受取ロイヤリティーが増加したが、為替差損益が悪化した。また一過性の税率低減要因(米国子会社有償減資に伴う税率減)が終了して税金費用が増加した。

 ROEは3.7%で同1.7ポイント低下、自己資本比率は87.0%で同横ばいだった。配当は15年3月期と同額の年間26円(第2四半期末13円、期末13円)で配当性向は57.3%だった。株主還元は超長期的な視点に立って安定的かつ継続的な配当を目指し、1株当たり年間26円を継続する方針としている。

 セグメント別売上高は、医薬品事業が同3.5%増の255億18百万円(国内医薬品が同0.2%増の169億28百万円、海外医薬品が同15.1%増の73億円、医薬品原体が同8.4%減の12億89百万円)、LAL事業が同11.7%増の54億44百万円だった。海外売上高は同15.8%増の115億81百万円、海外売上比率は同3.5ポイント上昇の37.4%となった。

 国内は関節機能改善剤アルツが後発品使用促進の影響を受けたが、拡販努力などで微増収だった。海外は米国向け単回投与関節機能改善剤ジェル・ワンが現地販売増加に円安も寄与して増収だった。米国向け関節機能改善剤スパルツFXは3回投与の競合品が伸長する中で、拡販努力によって現地販売が前年同期並みを維持し、円安効果で換算売上が増加した。米国VISCO-3は販売提携先を選定中である。中国向けアルツは政府主導による公定価格制度廃止の影響で現地販売が減少したが、販売提携先が在庫水準を高めたことと円安効果で増収だった。

 16年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期77億62百万円、第2四半期81億92百万円、第3四半期74億83百万円、第4四半期75億25百万円、営業利益は8億83百万円、11億67百万円、6億93百万円、5億99百万円の赤字だった。

■17年3月期第1四半期は増収減益

 7月28日発表した今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)連結業績は、売上高が前年同期比6.6%増の82億75百万円、営業利益が同57.0%減の3億79百万円、経常利益が同70.2%減の4億10百万円、純利益が同72.2%減の2億87百万円だった。海外医薬品の数量増や国内医薬品の前倒し出荷などで増収だが、円高や薬価改定による原価率上昇、米国SI-6603オープン試験進展による研究開発費の増加などで減益だった。為替の円高影響は売上高で3億円のマイナス要因だった。

 売上総利益は同1.9%増加したが、売上総利益率は54.9%で同2.6ポイント低下した。販管費は同16.5%増加し、販管費比率は50.4%で同4.3ポイント上昇した。研究開発費は22億92百万円で同28.9%増加した。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益1億02百万円、今期は差損1億44百万円)し、前期計上の投資有価証券売却益2億72百万円が一巡した。

 セグメント別売上高は、医薬品事業が同7.2%増の67億70百万円(国内医薬品が同6.2%増の46億59百万円、海外医薬品が同14.1%増の18億34百万円、医薬品原体が同14.3%減の2億75百万円)、LAL事業が同4.1%増の15億05百万円だった。海外売上高は同9.2%増の29億89百万円、海外売上比率は36.1%で同0.8ポイント上昇した。

 国内アルツは市場全体が微増(前年同期比1.3%増)で推移する状況だが、新容器投入や販売提携先の拡販努力によって医療機関納入本数が増加(同2.8%増)した。また薬価引き下げの影響を受けたが、前倒し出荷も寄与して増収だった。米国向け単回投与関節機能改善剤ジェル・ワンは営業体制拡充効果などで現地販売が約3割増加した。米国向け関節機能改善剤スパルツFXは競合環境が厳しく現地販売が微減だった。中国向けアルツは政府の価格抑制策の影響で減収だった。

■17年3月期通期は薬価改定などで減収減益予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想は前回予想(5月12日公表)を据え置いて売上高が前期(16年3月期)比4.6%減の295億50百万円、営業利益が同53.4%減の10億円、経常利益が同4.3%減の33億50百万円、純利益が同1.1%減の25億50百万円としている。

 国内薬価改定やドル安・円高の影響で減収減益予想としている。想定為替レートは1米ドル=110円、為替感応度(1米ドル1円変動時の年間影響額)は売上高で約1億円、営業利益で約40百万円である。配当予想は前期と同額の年間26円(第2四半期末13円、期末13円)で予想配当性向は57.9%となる。

 セグメント別売上高の計画は、医薬品事業が同4.8%減の243億円(国内医薬品が同6.1%減の159億円、海外医薬品が同0.7%増の73億50百万円、医薬品原体が同18.5%減の10億50百万円)、LAL事業が同3.6%減の52億50百万円としている。海外売上高は同1.6%減の114億円としている。ドル安・円高の影響額は約10億60百万円を見込んでいる。

 国内医薬品は薬価引き下げの影響で減収見込みだが、関節機能改善剤アルツの新容器(16年4月プラスチックシリンジのルアーフィットタイプ)投入による営業強化、眼科手術補助材の新製品シェルガンの市場投入(16年7月)、ムコアップの販売提携先変更(16年4月)などの効果で数量ベースは微増を見込んでいる。SI-6603の売上は織り込んでいない。海外医薬品は競争激化で米国スパルツFXの現地販売が減少し、ドル安・円高も影響するが、米国ジェル・ワンの数量増効果で前期並みを見込んでいる。

 コスト面では減価償却費や研究開発費が減少するが、薬価改定、ドル安・円高、米国関連費用の増加などで大幅営業減益見込みだ。売上総利益率は同0.4ポイント低下の58.0%、販管費比率は同3.2ポイント上昇の54.7%、減価償却費は同6.0%減の30億円、研究開発費は同2.9%減の84億円の計画である。経常利益と純利益は、営業外で受取ロイヤリティーが大幅に増加するため、ほぼ前期並みの見込みとしている。

 スイスのフェリング社とのSI-6603海外ライセンス基本合意書締結に関しては、正式契約によって契約締結一時金5百万米ドルを受け取り、開発や販売等の進捗に応じて今後も複数年にわたりマイルストーン型ロイヤリティーを受け取る予定だが、本件による17年3月期業績への影響は織り込み済みとしている。

 なお通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が28.0%、営業利益が38.0%、経常利益が12.3%、純利益が11.3%である。経常利益と純利益は低水準の形だが、受取ロイヤリティーが大幅に増加する見込みであることを考慮すればネガティブ要因とはならない。

■新中期経営計画で19年3月期経常利益45億円目標

 16年5月策定の新中期経営計画(17年3月期~19年3月期)では、重点戦略として、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の確実な進展、変形性膝関節症市場におけるリーディングカンパニーとしての進化、開発パイプラインの充実、最適な生産・品質管理体制の追求を掲げている。

 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603については日本での上市と拡販、および潜在市場規模の大きい米国での事業化を目指す。変形性膝関節症市場におけるリーディングカンパニーとしての進化では、成長ドライバーであるジェル・ワンの米国売上拡大と新規市場展開、製品改良による国内アルツの販売数量維持、次世代品となる関節機能改善剤SI-613の開発を推進する。開発パイプラインの充実では、糖質科学分野において他社を凌駕する基盤技術の保持、探査研究の加速、持続的な開発テーマの創製を推進する。最適な生産・品質管理体制の追求では、製品の安定供給、さらなる生産効率化の推進によって原価低減を実現する。

 経営目標値には、19年3月期売上高320億円、営業利益25億円、経常利益45億円を掲げた。想定為替レートは1米ドル=110円で、海外事業の拡大(海外売上高比率45%)によって国内薬価改定による減収をカバーし、研究開発費は高水準(対売上高比率25%~30%)で推移する。また各種受取ロイヤリティーを営業外収益として織り込んでいる。

■自己株式取得は終了

 6月15日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限20万株、取得価額総額の上限4億円、取得期間16年7月1日~16年7月29日)については、7月29日時点で取得株式総数20万株、取得価額総額3億3295万5900円となって終了した。

■株価は戻り歩調

 株価の動きを見ると、6月の直近安値1350円から切り返している。8月2日には1732円まで上伸した。第1四半期の大幅減益に対するネガティブ反応は限定的だった。

 8月3日の終値1574円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS45円00銭で算出)は35倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1229円05銭で算出)は1.3倍近辺である。時価総額は約894億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を突破し、13週移動平均線がサポートラインの形だ。戻り歩調だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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