ラクーンは下値固め完了して出直り、ストック型収益構造で17年4月期増収増益予想

 ラクーン<3031>(東1)は、BtoB電子商取引スーパーデリバリー運営を主力として、クラウド受発注COREC事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービスPaid事業、売掛債権保証事業など周辺領域への展開を加速している。ストック型収益構造で17年4月期増収増益予想である。株価は切り返しの動きを強めている。下値固めが完了して出直り展開だろう。なお8月26日に第1四半期の業績発表を予定している。

■企業間ECサイト「スーパーデリバリー」運営が主力

 アパレル・雑貨分野企業間(BtoB)電子商取引(EC)スーパーデリバリー運営を主力として、クラウド受発注ツールCOREC(コレック)事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービスPaid(ペイド)事業、売掛債権保証事業など周辺領域へ事業を拡大している。16年6月にはスーパーデリバリーが第1回日本サービス大賞にて「地方創生大臣賞」を受賞した。

 16年4月期セグメント別売上高構成比(連結調整前)は、EC事業(スーパーデリバリーとCOREC)60.8%、Paid事業13.6%、売掛債権保証事業25.6%だった。

■新サービスを積極投入

 15年8月スーパーデリバリーの越境ECサービス(海外販売)を開始した。商品販売するメーカー側の配送業務を簡潔にするためディーエムエス(DMS)の物流代行サービスを利用し、134ヶ国以上の小売店・企業への卸販売が可能となる日本最大級の輸出販売サービス「SD export」である。

 15年11月国内生産インフラサービス「SD factory」を開始した。日本国内のアパレル関連工場やパタンナーと、アパレルメーカーやデザイナーをマッチングするサービスである。また15年12月偕成社、ほるぷ出版がスーパーデリバリーで絵本販売を開始、16年3月徳間書店など新たに8社の出版社が出展、16年4月CCCメディアハウスが出展した。

 16年2月日本未上陸ブランドを含むイタリアのメンズファッションブランドへの共同発注を開始した。スーパーデリバリーの会員小売店向けの新しい販売企画「SD Selection」の第一弾として実施した。

 16年3月、越境ECサービス「SD export」の新たな決済手段としてPayPalが提供する決済サービス「ペイパル」の対応を開始、日本から韓国への海外配送代行サービス「Malltail(モールテール)」を展開するgroowbitsと業務提携した。また「COREC API」を開始した。CORECユーザー各社が導入している販売管理、倉庫管理、会計管理などのシステムに自動でデータを取り込むことが可能になる。

 16年7月にはスーパーデリバリーで小売以外の事業者への販売を開始した。スーパーデリバリーは基本的にファッション・雑貨の物販スペースを持ち、再販売を行う小売店に利用を制限した会員制仕入サイトであり、入会時に厳正な審査を行っているが、スーパーデリバリーで扱う商品数や商品ジャンルの拡大に伴って什器・梱包資材・販促用商品などの商材も多数出品され、それらの商材を求める小売以外の事業者からサービス利用を希望する声が増えてきたため、これまで利用対象外としていた飲食業・理美容業・宿泊業・教育関連など小売以外の事業者にもサービスを拡げることとした。これによって顧客数と流通額の増加が見込まれる。

 8月2日には連結子会社トラスト&グロースが、中小企業を対象とした業界初のネット完結型売掛保証サービス「URIHO(ウリホ)」を開始した。利用料金は月額定額制で、潜在需要の大きい年商5億円以下の中小企業が売掛保証サービスを導入しやすい料金プランとした。

 また8月8日には越境ECサービス「SD export」に老舗地下足袋メーカーの丸五の出展、8月22日にはスーパーデリバリーにフェアトレードカンパニーのフェアトレード専門ブランド「ピープルツリー」の出展、8月23日にはスーパーデリバリーにレッドペッパージャパンの出展を発表した。

■Paid事業はFintech分野にも事業展開

 11年10月開始したBtoB掛売り・請求書決済代行サービスPaid事業はサービス改良によって業種・業態を問わず、あらゆるBtoB向けサービスへの導入を推進している。

 また15年12月一般社団法人Fintech協会に加入、コミュニケーションアプリ「LINE」の公開型アカウント「LINE@」対応開始、16年2月SBIインベストメントのFinTechファンドに1億円出資した。

■M&A・アライアンスも積極活用

 M&Aやアライアンスも積極活用している。14年10月Square社と業務提携してスーパーデリバリーおよびCORECとPOSレジアプリ「Squareレジ」がシステム連携した。

 Paid事業では15年6月ロックオンと業務提携、15年9月フライトホールディングス<3753>グループ会社イーシー・ライダーと業務提携した。売掛債権保証事業では14年11月スタンドファームと業務提携、14年12月トラボックスと業務提携、15年7月信用交換所大阪本社に対して同社会員向け専用売掛保証サービス「シンコー保証」の提供を開始した。16年6月にはスーパーデリバリーが店舗づくりのワンストップサービス「IDEAL(イデアル)」を展開するTRUSTと業務提携した。開業前の小売店の獲得増加に繋げる。

■利用企業数は増加基調

 16年4月期のスーパーデリバリー流通額は15年4月期比0.6%増の95億87百万円で、16年4月期末スーパーデリバリー会員小売店数は15年4月期末比8002店舗増加の5万2372店舗、出展企業数は同73社増加の1138社、商材掲載数は同10万2923点増加の55万9272点となった。有名アパレル関連企業の出展、アライアンス戦略、越境ECサービスのSDexport開始などで利用企業数が増加基調である。

 CORECユーザー数は、15年4月2000社(バイヤー1191社、サプライヤー809社)を突破、15年7月3000社(バイヤー1836社、サプライヤー1164社)を突破、16年2月5000社(バイヤー3094社、サプライヤー1923社)を突破、16年4月期末時点で5903社となった。

 連携サービス増加、受注登録やレポート作成などの機能追加、サプライヤーによるバイヤー誘致増加などの成果でユーザー数が増加基調である。業種別に見ると飲食関連が全体の23%を占めている。農業の6次産業化を進める農家・農園などの生産者と飲食店で受注・発注に利用するケースが増加している。

 Paid加盟企業数は16年4月期末に1700社を超え、16年4月期のグループ内含む取引高は同27.7%増加して134億04百万円となった。売掛債権保証事業の16年4月期末グループ内含む保証残高は同41.0%増加の91億23百万円となった。

■月額課金システム利用料が積み上がるストック型収益構造

 スーパーデリバリー流通に係る売上高に関して、従来は出展企業と会員小売店がスーパーデリバリーを通じて取引した金額を売上高計上(総額表示)し、商品仕入高も売上原価に計上していたが、15年4月期から商品仕入高を売上高と相殺して表示する方法(純額表示)に変更した。この変更によって、スーパーデリバリー流通に係る売上高は出展企業から徴収するシステム利用料売上となっている。従来の総額表示に比べて見掛け上の売上高は減少するが利益に変更はない。

 四半期別推移を見ると、15年4月期は売上高が第1四半期4億90百万円、第2四半期5億06百万円、第3四半期5億22百万円、第4四半期5億38百万円、営業利益は57百万円、93百万円、1億04百万円、82百万円、16年4月期は売上高が5億33百万円、5億44百万円、5億64百万円、5億87百万円、営業利益が87百万円、96百万円、97百万円、1億13百万円だった。出展企業と会員小売店の増加に伴って月額課金システム利用料売上が積み上がるストック型収益構造である。

 16年4月期は15年4月期比8.4%増収、17.1%営業増益、12.2%経常増益、12.2%最終増益だった。Paid事業の黒字化も寄与した。売上総利益は同6.3%%増加したが、売上総利益率は82.7%で同2.0ポイント低下した。販管費は同3.7%増加したが、販管費比率は65.4%で同3.0ポイント低下した。ROEは14.4%で同1.3ポイント上昇し、自己資本比率は35.7%で同0.1ポイント上昇した。

 配当は年間4円50銭(期末一括)だった。15年8月1日付株式3分割を考慮して15年4月期の年間6円80銭(期末一括)を年間2円27銭に換算すると実質的に2円23銭増配で、配当性向は32.5%だった。配当の基本方針は、将来の事業展開と経営体質の強化に備えるための内部留保の充実等を勘案しながら、業績を反映した水準で利益還元を実施するとしている。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、EC事業は売上高が同2.3%増の15億83百万円、営業利益が同4.5%減の2億23百万円だった。国内流通額がやや伸び悩み、15年8月開始した越境ECサービスのSDexport準備費用なども影響して減益だった。流通額は通期0.6%増にとどまったが、国内流通額を四半期別に見ると第1四半期3%減、第2四半期4%減、第3四半期2%減に対して、第4四半期2%増となり復調傾向としている。

 Paid事業は売上高が同30.9%増の3億52百万円、営業利益が20百万円の黒字(前々期は16百万円の赤字)だった。増収効果で営業損益が改善した。売掛債権保証事業は売上高が同17.3%増の6億66百万円、営業利益が同50.7%増の1億11百万円だった。事業用家賃保証サービスや提携案件も寄与して保証残高が順調に増加した。

■17年4月期は先行投資負担だが増収増益予想

 今期(17年4月期)連結業績予想(6月10日公表)は、売上高が前期(16年4月期)比12.1%増の25億円、営業利益が同6.7%増の4億20百万円、経常利益が同14.2%増の4億20百万円、純利益が同4.4%増の2億50百万円としている。配当予想は未定としている。

 成長スピードを加速するための先行投資期間と位置付けて、経営基盤強化に向けた集中投資を計画しているため、人件費、広告宣伝費、開発費などが増加して小幅増益予想としている。ただしスーパーデリバリー国内流通額の復調、越境ECサービスSDexportの規模拡大、COREC、Paid事業、売掛債権保証事業の順調な拡大で2桁増収予想である。収益拡大基調に変化はないだろう。

■株価は下値固め完了して出直り

 株価の動き(16年3月29日付で東証1部に市場変更)を見ると、500円近辺でのモミ合いから水準を切り下げたが、2月の年初来安値393円まで下押すことなく、8月8日の直近安値428円から切り返しの動きを強めている。

 8月23日の終値475円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS14円25銭で算出)は33~34倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS101円17銭で算出)は4.7倍近辺である。時価総額は約87億円である。

 週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んだ水準から切り返しの動きを強めている。下値固めが完了して出直り展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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