久世は下値切り上げて強基調に転換の可能性、17年3月期営業増益予想

 久世<2708>(JQ)は外食・中食産業向け業務用食材卸売事業を首都圏中心に展開している。17年3月期第1四半期は黒字化し、通期も売上総利益率上昇や物流改善効果などで営業増益予想である。収益改善基調だ。なお9月13日~14日に飲食店向け業務用食材展示会「フードサービスソリューション2016~Autumn&Winter~」を開催する。株価は6月の直近安値から下値を切り上げている。強基調に転換した可能性がありそうだ。指標面の割安感も見直し材料だろう。

■業務用食材卸売事業を首都圏中心に展開

 首都圏中心に外食・中食産業向け業務用食材の卸売事業を展開し、子会社キスコフーズは国内とニュージーランドで業務用高級ソース・高級スープの製造、久世フレッシュ・ワンは東京都内を中心に生鮮野菜など農産品の卸売を展開している。

 16年3月期のセグメント別売上高構成比は食材卸売事業93%、食材製造事業7%、不動産賃貸事業0%だった。販売チャネル別売上高構成比(単体ベース)はファーストフード・ファミリーレストラン・カフェ36%、居酒屋・パブ27%、ディナーレストラン・ホテル・専門店23%、デリカ・惣菜・ケータリング・娯楽施設・その他15%だった。

■販路拡大戦略を推進

 中期成長に向けた重点戦略として、首都圏・関西圏・中部圏での販路拡大、全国物流ネットワークの強化、中食市場や高齢者施設給食市場の開拓強化、PB商品の拡販や製造利益の拡大、海外事業の基盤確立などを推進している。

 販路拡大に向けたM&A・アライアンス戦略では、12年6月中部圏で酒類販売大手サカツコーポレーションと業務提携、14年4月高級飲食店向けに強みを持つ水産物中卸会社の旭水産を子会社化した。なお15年3月海外子会社の久世(香港)が所有する中国・上海峰二食品有限公司の株式を国分に譲渡した。中国事業は久華世(成都)商貿有限公司を軸に継続する。

 子会社の久世フレッシュ・ワンは15年9月横浜中央市場の青果仲卸会社である丸ユ商店と業務提携した。また横浜事業所の開設、大田市場と横浜市場での買参権取得など、営業エリア拡大戦略を推進している。

■売上総利益率上昇や物流改善効果で営業損益改善基調

 四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期163億73百万円、第2四半期172億19百万円、第3四半期183億76百万円、第4四半期160億76百万円、営業利益が1億79百万円の赤字、44百万円の赤字、23百万円の黒字、88百万円の赤字だった。16年3月期は売上高が165億02百万円、172億73百万円、183億48百万円、150億70百万円、営業利益が1億30百万円の赤字、99百万円の黒字、2億86百万円の黒字、1億84百万円の黒字だった。物流コスト上昇などで営業損益が悪化していたが、16年3月期第2四半期以降は営業損益改善傾向を強めている。

 16年3月期は、大口取引先モンテローザとの取引(15年3月期売上高約97億円、16年3月期売上高約80億円)を16年1月末に終了したため減収だが、売上高・利益とも計画超となって営業黒字化した。新規取引先開拓(売上高36億円・2600店舗増加)、既存顧客との取引深耕、売上総利益率改善、物流改善などが寄与した。売上総利益は15年3月期比3.7%増加し、売上総利益率は17.6%で同0.9ポイント上昇した。販管費は同2.6%減少し、販管費比率は16.9%で同0.2ポイント低下した。運賃が同2億14百万円(3.6%)減少した。

 特別損失ではのれん償却額1億84百万円が一巡した。ROEは10.2%で同19.0ポイント上昇、自己資本比率は26.0%で同2.5ポイント上昇した。配当は15年3月期と同額の年間12円(期末一括)で配当性向は9.6%だった。利益配分については、中長期視点で健全な株主資本を構成していくことと、業績動向および財務体質の強化を考慮しつつ、安定配当の維持を基本におきながら、弾力的に株主還元を図っていくことの二点を最重点に利益配分の提案を行っていくとしている。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、食材卸売事業は売上高が同1.0%減の627億16百万円で営業利益が同6.0倍の7億40百万円だった。モンテローザとの取引解消で減収だが、新規得意先開拓、既存得意先との取引深耕、効率性を意識した営業推進、品質面や価格面で競争力のある商品提案、物流業務効率化などで営業損益が改善した。食材製造事業は売上高が同8.0%減の44億86百万円で営業利益が同12.1%増の4億45百万円だった。原材料費上昇に対して生産性向上に取り組み、収益性の低い一部PB商品の減少も寄与した。不動産賃貸事業は売上高が同0.2%減の1億45百万円で営業利益が同3.8%増の1億11百万円だった。

■17年3月期第1四半期は各利益とも黒字化

 今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は売上高が前年同期比10.3%減の148億09百万円、営業利益が72百万円の黒字(前年同期は1億30百万円の赤字)、経常利益が1億15百万円の黒字(同90百万円の赤字)、純利益が89百万円の黒字(同63百万円の赤字)だった。

 モンテローザとの取引解消で減収だが、売上総利益率改善や物流業務効率化などで営業損益が改善した。食材製造事業の好調も寄与した。売上総利益は同1.9%増加し、売上総利益率は19.0%で同2.3ポイント上昇した。販管費は同5.3%減少したが、販管費比率は18.5%で同1.0ポイント上昇した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、食材卸売事業は売上高が同11.2%減の137億44百万円で営業利益が1億90百万円の黒字(同7百万円の赤字)だった。モンテローザとの取引解消で減収だが、新規得意先開拓、既存得意先との取引深耕、効率性を意識した営業推進、競争力のある商品提案、物流業務効率化などで営業損益が改善した。食材製造事業は売上高が同3.3%増の10億68百万円で営業利益が同57.8%増の1億12百万円だった。自社ブランド商品の販売強化や生産性の向上を推進した。不動産賃貸事業は売上高が同横ばいの36百万円で営業利益が同1.5%増の28百万円だった。

■17年3月期通期も営業増益予想で収益改善基調

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月10日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比6.2%減の630億円、営業利益が同10.4%増の4億85百万円、経常利益が同10.7%減の5億30百万円、そして純利益が同21.8%減の3億80百万円としている。配当予想は前期と同額の年間12円(期末一括)で予想配当性向は12.2%となる。

 モンテローザとの取引解消が通期ベースで影響して減収だが、同社向け店舗配送・商品保管・庫内作業等の物流業務は全て外部委託しており、これらの諸経費も取引終了に伴ってなくなる。そして新規取引先の開拓、既存取引先のインストアシェアアップ、高付加価値商品拡販などによる売上総利益率改善、一段の物流業務効率化による物流費削減などで2桁営業増益予想としている。経常利益と純利益については、前期計上した営業外収益での保険解約益60百万円、特別利益での投資有価証券売却益85百万円が一巡して減益予想としている。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が23.5%、営業利益が14.9%、経常利益が21.7%、純利益が23.4%と低水準の形だが、下期偏重の計画であり、第2四半期累計予想に対する進捗率は売上高が48.1%、営業利益が72.0%、経常利益が95.8%、純利益が109.9%と高水準である。通期も収益改善基調が期待される。

■中期経営計画でチェーン戦略強化

 第3次C&G中期経営計画では、経営目標数値に18年3月期の売上高670億円、営業利益6億70百万円、営業利益率1.0%、自己資本比率28.7%、ROE10.4%を掲げている。

 グループ事業の基本戦略(5つの柱)として、チェーン戦略(KZN=久世全国ネットワーク)=効率的な全国物流ネットワークの構築と機能の強化、エリア戦略=3大都市圏のエリア特性にあった戦略、フルライン戦略=ワンストップショッピングを可能とするフルライン機能の強化、商品開発・加工・製造戦略=マーチャンダイズ機能の強化、海外事業戦略=新しいマーケットの開拓を推進する。

■株主優待制度は毎年3月末に実施

 株主優待制度は毎年3月31日現在1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株数に応じて当社ブランド特選無洗米(山形県天童産はえぬき・新米)を贈呈する。100株以上~1000株未満保有株主には2.5kg、1000株以上~3000株未満保有株主には5kg、そして3000株以上保有株主には10kg贈呈する。

■株価は下値切り上げて強基調に転換の可能性

 株価の動きを見ると、6月の直近安値671円から下値を切り上げている。また8月31日は762円まで上伸し、8月10日、12日、30日の直近高値751円を上抜いた。

 8月31日の終値757円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS98円14銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.6%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1290円81銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約29億円である。

 日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から切り返して26週移動平均線を突破した。強基調に転換した可能性がありそうだ。指標面の割安感も見直し材料だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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